人間模様を多彩な切り口で表現するMOSHIMO。メジャー1stアルバム『化かし愛』について4人が語る

人間模様を多彩な切り口で表現するMOSHIMO。メジャー1stアルバム『化かし愛』について4人が語る - Photo by かわどうPhoto by かわどう

それぞれの活動歴の中で身に付けてきた要素を出しつつ、「MOSHIMOってこうだよね?」っていうのを磨きたかった(一瀬)

――どのようなアルバムにしたいと思っていました?

一瀬 今、コロナの影響もあって、なかなか季節を感じづらいと思うんです。だから夏っぽい曲をたくさん入れて、季節を感じてもらえたらいいなあっていうのがまずありました。あと、メンバーが新しくなりましたから、それぞれの活動歴の中で身に付けてきた要素を出しつつ、「MOSHIMOってこうだよね?」っていうのをさらに磨きたいとも思っていましたね。

――岩淵さんはいかがでした?

岩淵 コロナでいろんなことがあって、自分の人間関係が変わったりとかもあったんです。いろんなことを感じたタイミングだったので、「自分らしさってなんだろう?」っていうのをもっと突き詰めたくて作ったアルバムですね。

一瀬 たとえば「愛」っていうテーマを突き詰めたりして、歌詞もこだわっていたよね?

岩淵 うん。私、わりと「愛してる」とかよりも、「大好き!」、「好きーっ!」とか恋のことを描くほうが合うタイプだったんです。でも、今回はもっと人との関わり合い方とか――よかれと思ってしたことが相手を傷つけて、それで気持ちが離れてしまったり、「なんで上手くいかないんだろう?」と思うことがあった時に、「人の関係って、深い『愛情』みたいなところで繋がってないと簡単に切れちゃうんだな」っていうのを感じて。そういうタイミングで自分たちが「いいなあ」って思える人たちとの確かな絆……それが愛なのかはわからないけど、そういうものをお互いに確かめ合いながら作れたのがこのアルバムです。

汐碇 僕は「今、自分にできることをベストな形で残す」っていう作品にしたいと思っていました。地元が同じで昔から知っている間柄なので、「まさかメンバーになるとは」という不思議な感覚もあるんですけど。

岩淵 だよね?

汐碇 10代の頃からお互いに知ってますから。

高島 僕もポチ(岩淵)と一瀬は高校の頃から知ってるんです。前身のバンドも、変化していくMOSHIMOもずっと見てきたので、こうして一緒に作品を作るというのは、過去のすべてに1本の軸を通すようなことなのかなと思ってました。

――長年の付き合いの中で信頼関係を築いてきた4人ですから、新体制ではあるものの、自然に各々のカラーを出し合えた感じもあるんじゃないですか?

一瀬 そうですね。たとえば真也さんがモチーフを作ってくれた“飛んで火に入る夏の虫”は、彼が今までやってきたバンドのテイストが入っていたりするんです。

汐碇 今までのMOSHIMOとは違う部分を曲によっては出せたらいいなと思っていたんです。こういうのは次にも繋がることなのかなと思います。

一瀬 真也さんはいろんなジャンルができるし、一航もドラムの表現の引き出しがどんどん増えているので、そういう点でもバンドとしてパワーアップしていますね。

根がポジティブな人間がやっているバンドなので、こういう感じになっているんでしょうね(高島)

――MOSHIMOはストレートに踊れるサウンドのようでいながらも、なかなか変わった要素を忍び込ませたりしますよね?

一瀬 はい。ロックバンドのダンスミュージックみたいなものってわりと多いですけど、そういうフィールド以外のところでも楽しんでもらいたいんです。歌詞もストレートなようでいて、結構、韻を踏んでたりもしますし。

――“以心伝心ディストーション”は、アグレッシブなサウンドと歌詞のギャップがすごいですね。「彼氏の浮気を目撃」という衝撃的な非常事態について歌っているのを聴きながら開放的に踊れてしまうという、不思議な体験ができる曲ですから。

岩淵 こういうのは状況的にはかなりヤバいので、ポップに言わないと(笑)。

――「ヤバい状況をポップに描く」というのはMOSHIMOの音楽の醍醐味のひとつでは?

岩淵 それは全曲に通ずるテーマというか。だって悲しいじゃないですか?“以心伝心ディストーション”も「浮気現場に直面するってどういうこと!?」っていうことですから。でも、「ドロドロです!」と言っても前に進めないですし、ライブに来たら単純に楽しいほうがいいじゃないですか? 私は笑顔で前に進みたいタイプなので、後ろ向きなこともなるべく前向きにしたくて、そういう歌詞を書くようにしています。

――楽しく聴けるから、ともすると忘れがちなんですけど、MOSHIMOの音楽は切実な想いがものすごく込められているんですよね。

汐碇 たしかに(笑)。

高島 根がポジティブな人間がやっているバンドなので、こういう感じになっているんでしょうね。

――キャッチーの極みのような“化かし愛のうた”だって、なかなか上手くいかない人間関係のもどかしさをじっくり描いていますし。

岩淵 そうなんですよね。片想いの歌なんですけど。恋人にはなれないってわかっている人をモデルにして作った曲だったので(笑)。タクシーの中でじゃんけん、本当にしたんですよ。3回あいこになって、「これ以上やって、どっちかが勝つの怖いな」って思ったことがあって。

一瀬 「関係性のあいこ」っていうことでしょ?「このままにしておいたほうがいい」みたいな?

岩淵 そうなの! つらいの、あれ!

汐碇 リアルだね(笑)。

岩淵 人って、言えない恋をしていると気持ちがマイナスな方向に行くじゃないですか? でも、「人を好きになる」っていうのは、何ひとつ悪いことじゃないと思うんです。「好意」って悪いことじゃないのに、なぜ隠さなきゃいけないのか? 後ろめたい気持ちになる意味が全くわからなくて。音楽は人の感情のマイナスな部分もプラスな部分も共感し合えるものだから、「これくらい楽しくいたいよね?」っていう意味も込めて作ってます。

次のページきれいにまとまってるんですけど、きれいごとじゃない曲がたくさん入れられました(岩淵)
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