2016年10月11日、初の日本武道館ワンマンをもって活動を終了したGalileo Galilei。2008年に10代限定ロックフェス「閃光ライオット」で初代グランプリを獲得、ティーンズロックの象徴的存在として脚光を浴びつつも、そこから驚くほどの速度で音楽的進化と革新を続け、あまりにも潔くその活動の幕を閉じていった。そして、昨年――尾崎雄貴のソロプロジェクト=warbearのステージで、Galileo Galileiの再始動が発表されたのは、活動終了からちょうど6年後、2022年10月11日のことだった。
5月末からの全国Zeppツアー「Galileo Galilei "Bee and The Whales" Tour 2023」での本格始動を目前に控え、バンドから新たに届いたのは、新曲“4匹のくじら”を含むメンバー選曲の企画盤、ライブ映像やミュージックビデオを収めたBlu-ray、インディー時代3作品の復刻盤をコンパイルした、計5枚組のボックスセット『Tsunagari Daisuki Box』。活動再開に至った背景、BBHF/warbearといった他プロジェクトとの位置関係、ファンとの独特の関係性……それらすべてをバンドの「これから」への指針として掲げていくような、Galileo Galileiのマジカルな「今」が、今作には凝縮されている。尾崎雄貴に話を聞いた。
インタビュー=高橋智樹
「封印する」とかではなくて、Galileo Galileiを聴き直したり意識したりすることが、自然とまったくなかったんです
――僕は2019年頃からBBHFでインタビューさせていただいていて、その中で尾崎さんは「Galileo Galileiの楽曲と自分との位相がずれていた」という表現で、後期Galileo Galileiで覚えた違和感を語っていました。基本的に過去形で振り返りつつも、warbear〜BBHFに至る連続性の中でGalileo Galileiを語っていたし、「ずれた」位相はまた重なることはあるのかも、と個人的には思っていたんですが――正直に言うと、それはもう少し先のことなのかな、とも思っていました。「はい」
――その位相が、尾崎さんの中でもう一度重なった、きっかけが何かあったんでしょうか?
「僕自身、Galileo Galileiを終了させた時点でも、自分の中で『封印する』とかいう想いはなくて。ここじゃないからまた別のところに行って、でも音楽はやりたいので、続けようっていう、本当にシンプルな気持ちだったので。『どこかにGalileo Galileiを置いてきた』という感じでもなかったなっていうところなんですけど……僕はそのあと、warbearとしてソロでやって、Bird Bear Hare and Fishを始めて、それがBBHFっていう名前になって、っていう流れの中で、Galileo Galileiの曲を聴き直したりとか、Galileo Galileiのことを意識したりっていうことが――単純に、自然な形でまったくなくて。だから、BBHFの曲を書く時にも『この感じ、Galileo Galileiでもやったしなあ』とかいうこともなくて。封印したわけでもないんですけど、結果的に『無きもの』だったんです」
――尾崎さんの意識に浮かんでくること自体がなかったわけですね。
「そうですね、不思議と。だからこそ、始動するよっていうタイミングで、たくさんの人たちが反応してくれた、っていうのは……メンバー的には相当驚きだったし。正直、もっとひっそりと始まるかなと思っちゃってたんで。でも、自分の中で『やりたい』っていう想いが、あるタイミングでふっと湧いてきて。さっき『もう少し先だと思ってた』っていうお話がありましたけど、むしろ『これまでまったく思わなくて、今やってみたいなって思ったのに、ここでやらなかったらもう、今後はないかも』って思って。だから、自分でそのタイミングをキャッチしないと、と思って」
――なるほどね。
「それは僕の中だけで起こったことなんですけど、そこで岩井くん(岩井郁人/G)だったり、和樹(尾崎和樹/Dr)とかに話して。岡崎くん(岡崎真輝/B)も、僕がずっと一緒に音楽をやっていきたいと思える数少ない人なんで、『岡崎くんもガリレオやんない?』みたいな感じで言ったら、目が点になってました(笑)。『たぶん、嫌な話ではないと思うんだけど、Galileo Galileiをやるかもしれないんだけど、ベースをやってくれないかな?』って話をしたら、『マジっすか? やります!』って即答して、『……でも、やりますって言っといてなんなんですけど、一旦考えさせてください』って(笑)」
自分の中のいろんな自分を、BBHFやwarbearできれいに分けられたからこそ、「Galileo Galileiをもう一度やりたい」って思えたのかもしれない
――やりたい気持ちはあるけど一応、現実と擦り合わせる時間が必要だったんですね。「そうですね。でも、僕以外みんな驚いてました。やっぱり同じように、『もし仮にやるとしても、先だと思ってた』って。そこのギャップはあったんですよね。僕はGalileo Galileiっていうものを、長きにわたって封印しようと思ったわけでもないし、メンバーの仲違いで終わったわけでもないから、『解散』っていう言葉を使わなかったし。ただ単に、Galileo Galileiっていうバンドのひとつのタームが終了したんだ、っていうことで一回終わらせたので。だから、いつ再開してもおかしくなかったんじゃないかな、って今は思うんですけど。やっぱり、僕の中に湧かないと始められないので。それが湧いた、っていうタイミングだったんですよね」
――知らない人から見たら、BBHF、warbear、さらにGalileo Galilei、ってアウトプットのチャンネルが増えることで複雑になっていく印象があるかもしれないけども――。
「BBHFとかwarbearとの違いがわからない、って言う人がいたんですけど……僕の中ではすごく自然に分かれてるので。みんな、自分っていうひとりの人間の中に、いろんな自分があるじゃないですか。僕はそれが特に多いなと思っていて。人格的にも、感情の起伏もそうだし。それをもともと、Galileo Galileiっていうひとつのバンドの中で昇華しようとしてたから。大人になるにつれて複雑化していく感情を、Galileo Galileiっていうバンドとチームでは処理しきれなかった……っていうのが、たぶん『位相のずれ』につながったんじゃないかな、と思っていて。今は、それがきれいに分かれたからこそ、Galileo Galileiで自分が語りたかったことを表現して、Galileo Galileiっていうバンドはお客さんとどういうふうにつながりたかったのか、っていうことがクリアに見えて、『もう一度やりたい』って思えたのかもしれないです」
――逆に尾崎さんにとっては、BBHFもwarbearもある中にGalileo Galileiがあることによって、Galileo Galileiでやるべきことがシンプルになっていくわけですね。
「そうですね。やっぱり、Galileo Galileiをやるって決めてから、BBHFも思いっきり変わったし。ライブでもお客さんがめちゃめちゃ楽しんでくれてて、でも絶対にGalileo Galileiでは生まれない空気感だったんで。自分の中で、自分の多様性をきっちり分けてアウトプットするのが、結構よかったなって。たぶん、より強力で、それぞれ特化したものになるんじゃないかなって」