【インタビュー】人気アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の結束バンドの楽曲“光の中へ”をセルフカバーしたSAKANAMON・藤森元生。後藤ひとりへの強い共鳴と初めての体験について語る

【インタビュー】人気アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の結束バンドの楽曲“光の中へ”をセルフカバーしたSAKANAMON・藤森元生。後藤ひとりへの強い共鳴と初めての体験について語る - photo by 酒井ダイスケphoto by 酒井ダイスケ

ポジティブな気持ちを表現したかったんですけど、明るすぎると後藤ひとりの歌詞じゃないんですよ

――歌い出しでバンドならではの計算式が綴られる歌詞が面白かったんですが、これはどういう発想だったんでしょう?

「結束バンドは高校生なので、何か学生が書いているものだって思えるヒントがほしかったんですよね。あと、あまり直接的な歌詞を書かないバンドだってこともわかっていたので数式にしてみました。それこそ考察できそうな抽象性があるというか、人によっていろいろな捉え方ができそうな歌詞にしたかったっていう気持ちもありました。あと、サビの歌詞は特に考えましたね。サビ頭の、彼女たちが実際にライブをやったときに生まれる感情を書いてる歌詞に、リアルタイムでライブを観ているお客さんも感情移入できるような楽曲にしたかったんです。あくまでポジティブな気持ちを表現したかったんですけど、後藤ひとりが素直に自分の気持ちを歌詞にすら表現できない人なので、明るすぎると後藤ひとりの歌詞じゃないんですよね。アニメの制作サイドの方たちにもそこをご指摘いただいて、何回か書き直しました。『後藤ひとりはまだここまで言えないですね』とか『こういうことは考えないんじゃないかな』とか『こういう言葉遣いはしないんじゃないかな』とか、実際にそこにいない子のことを思いながらみんなで詰めていって。それで《好きな音》っていう言葉を1回だけ使うのは大丈夫だろうと思って入れてみたんですけど」

――SAKANAMONの楽曲とは大きく違う制作環境ですよね。

「そうですね。そういう作業は初めてでしたね。いかに自分を後藤ひとりという人間になりきらせるかを意識して書いていきました。アニメを何回も観直しながら、『このぐらい言えるようになってよ』『言葉にできないから歌詞にするのに、歌詞にすらできないのか』と思ったりして(笑)」

――(笑)確かに、ミュージシャンは言葉にできないから歌詞にするようなところがありますもんね。

「はい。まあでも気持ちはわかりますよね。僕も小難しいことばっかり書いて、『気持ちをストレートに乗せた歌詞も聴いてみたい』って昔よく言われてましたから(笑)」

――そうですよね。去年リリースされた『HAKKOH』はストレートなメッセージが詰まったアルバムでしたが、そこに至るまでには15年間かかっているわけですから。

「そうですね。だから結束バンドも15年ぐらい経ったらストレートになるのかもしれないですよね(笑)」

結束バンドが女子高生ならこっちは35歳のおっさんのギターロックをちゃんと見せつけないといけないなと思いました(笑)

――セルフカバーにはマカロニえんぴつの田辺由明さんがギタリストとして参加していますが、これは結束バンドと同様、2本ギターがあったほうがいいという発想だったんでしょうか?

「SAKANAMONにもうひとり誰か参加してもらう形で『PLUS ONE』っていうテーマで三部作を作ろうと思っていて、その1作目が“光の中へ”のセルフカバーなんです。よっちゃん(田辺)は昔からSAKANAMONを好きでいてくれて、ライブもよく観に来てくれるんです。飲みに行くと、『いつかSAKANAMONで(ギターを)弾きたいです』って酔っぱらいながらよく言ってくれて、『じゃあいつか一緒にやろうね』っていうふうに伝えていたので、今回参加してもらったらいいんじゃないかと思って、『いけますか?』って声をかけました。だから念願叶ってのよっちゃんです」

――じゃあ田辺さんとしてもすごく嬉しかったでしょうね。

「そうですね。喜んでくれたんですけど、めちゃくちゃ緊張してました。アメリカのマンガに出てくるキャラクターみたいに顔が青かったです(笑)。僕が送ったデモのギターが普段弾いてるギターのアプローチと全然違ったんでしょうね。僕としてはデモをベースに自由に遊んでもらったつもりなんですけど、ずっと汗かきながらうめいてて、泣きそうな顔で弾いてました。他のアーティストのレコーディングに参加するのも初めてだったらしいのと、しかもそれが好きな先輩のバンドだったっていうこともあって。『全然緊張しなくていいよ』っていうことを何回も伝えながらレコーディングしたんですが、最終的にはすごくいいギャンギャンのギターを弾いてもらったんでよかったなって思います。結束バンドが女子高生ならこっちは35歳のおっさんのギターロックをちゃんと見せつけないといけないなと思いました(笑)。だから、結構荒々しさを大事にして録りました。原作ファンの方々にも、『こっちもいいよね』っていう温かい耳で聴いてもらえたらいいなって思います」

――9月からは結成15周年を締め括るSAKANAMONのツアーが始まりますが、どんなツアーになりそうですか?

「集大成みたいなライブにしましょうってことしか決まってないんですけど、楽しみですね。ここ1年ぐらいずっと言ってる気がするんですけど、SAKANAMON、調子いいんですよ。だからこのままの調子で行けばいいツアーになると思います。メンバーと『またいいライブしちゃうね』ってよく話してるんですけど(笑)、なんか自信がついてきたんですよね」


7月28日発売の『ROCKIN'ON JAPAN』9月号にもSAKANAMON・藤森のインタビューを掲載!

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