【インタビュー】Mega Shinnosukeが問いかける、今の時代にアーティストをやる意義。衝動まみれの新作『ロックはか゛わ゛い゛い゛』完成

【インタビュー】Mega Shinnosukeが問いかける、今の時代にアーティストをやる意義。衝動まみれの新作『ロックはか゛わ゛い゛い゛』完成

カルチャーというのは、全員を巻き込むというより、わかってる人が巻き込まれることによって作られていくものだと思う

――今作には、初期の曲である“桃源郷とタクシー”も収録されています。そもそもなぜ今作に入れようと思ったのか。そして今日話してくれたマインドは当時から持っていたものなのか、それとも変化してきたものなのかを聞きたいです。

「“桃源郷とタクシー”は、クソ最高なので入れたって感じです。でもちょっと音圧が気に入ってなくて、最近、最高なエンジニアに会ったので、その人に音圧を上げてもらって入れました。別に気にしなくても生きていけることはたくさんあって、それをちゃんと自分で『クソどうでもいい認定』することによって、クソ最高なことをしっかりやれるようになったのかもしれないです。で、“桃源郷とタクシー”って曲はクソ最高だと思ったので入れました。あと、“10000回のL.O.V.E.<3”もかなり出来がいいので入れました」


――やっぱりそこもシンプルな理由なんですね。

「特に明確な理由とかないんですよ。いや、明確な理由しかない。クソ最高という明確な理由。変化でいうと――飲み会とかに行くとミュージシャンの友達が増えるじゃないですか。俺は17歳のときから音楽で食えてるけど、売れてるイメージの人もバイトしていたりとか、普通にあって。ちょっとダサい話だけど、それに影響受けちゃって『ちゃんと音楽で生活していくんだ』みたいな気持ちはあったかもしれないですね。でも今はクソどうでもよくて。音楽で食っていくということは、顔が見えない人とかライブに来てくれない人にも、クリックしてもらう必要があるじゃないですか。そういうことをちゃんと狙って頑張ってる人がいっぱいいる中で、『そういうことに努力する俺の人生の時間って、クソ無駄じゃね?』って。カルチャーというのは、全員を巻き込むというより、わかってる人が巻き込まれることによって作られていくものだと思うから。その場にいる、いい意味でキモいやつらが『おまえは同志だな』みたいなことが起きるのが『カルチャーができる』ということだと、コロナ禍が明けてからのライブハウスとかクラブで強く気づきました」

――5月に出した“一生このまま”はロックモードで、DTMをいじるよりとにかく爆音を鳴らしたいという話をしてくれたと思うんですけど、そのあと8月にヒップホップビートを主軸にした“TOKYO VIDEO”にいったのは、どういう想いからでしたか。

「打ち込みもずっと好きだし、“一生このまま”がロックサウンドだったのでその流れにしたんですけど、結論から言うと“TOKYO VIDEO”をシングルで切ったのはちょっとミスったなと思って。『やり』ほどじゃないんですけど、『Mega Shinnosukeすぎるな』っていう。曲自体は気に入っているんですけど、『これ最高だから出せ! ピョン!』みたいな感じの曲でもよかったのかな……いやまあ、本人はそう思ってるけど、別にリスナーのみんなは気にしなくていいからな、って書いといてください」


――アルバムの中で“TOKYO VIDEO”“lofi beach with ü”の流れはめちゃいい感じですけどね。

「そう、いい感じなんですよ。アルバムにワンテンポ違う曲としてバラードを入れるとかあるじゃないですか。でもバラードを作る気になれなくて。だから遅い曲の方向性として僕のルーツであるLoFiを入れようと思ったというのはあるかもしれないです」

“酒を飲んでも神には成れない”がいちばんいい曲だと思う。間違ったことを言ってないと思うんですよ

――“酒を飲んでも神には成れない”“aishiteru_no_mention”“迷子なblue”あたりが特に最近のモードで書いた曲ですか? 衝動のまま曲にした、みたいな。

「あ、そうですね。“酒を飲んでも神には成れない”がいちばんいい曲だと思う。クラシックじゃんって思ってるんですけど。俺的にはすごくいい曲なんですよね。間違ったことを言ってないと思うんですよ。ツイートみたいな曲で、作為的なものが一切ないですからね。暇だし曲でも作ろうかなと思って、Eコードから始めて、ちょっとグランジっぽく作ろうと思って。《叫びたくても住宅街だし》って言ったときに、『あ、これは来た。もう、すごくいい。ここがもう神』と思って」

――1枚の中にロックもシティポップもLoFiもヒップホップも初音ミクも共存しているのも、このアルバムやMega Shinnosukeの面白いところで。なぜ今回初音ミクを使おうと思ったのかを訊いてもいいですか。

「ちゃんミクを起用した理由は、僕が好きな海外のラッパーとか、ハイパーポップの流れの人が、日本のカルチャーをサンプリングして、アニメの声を使ったりファッションに『クレヨンしんちゃん』を使ったりしていて。俺がニューヨークへ行ったときにできた友達もそうだったんですけど、日本のカルチャーが好きなアメリカ人が多いんですよ。前までだったら『アニメのTシャツを着てる人はオタク』みたいな感じだったと思うんですけど、今は本当の意味でストリートカルチャーになっていて、好きなアニメを自分のファッションにかっこよく落とし込むことが流行ってきているというか。それを逆輸入みたいな感じで、日本人がアニメやネットカルチャーをヒップホップとかエレクトロに落とし込むと面白くなるんじゃないかなと思って、ちゃんミクとコラボしました」


――初音ミクの歌がある中にMegaさんのラップが入ってくることも大事なポイントですよね。

「わざとラッパーっぽい言い回しとかを入れているんですよ。最初の『OK』とか『eyday』とか。それによってラップカルチャーへの関心と、ラップカルチャーがあるからアニメ/ネットカルチャーが立っている現象を、僕の解釈で表しているっていう。……ちゃんと喋りすぎましたね。『最高だけが理由だ』みたいな感じだったのに、これを読んだ読者は『意外と考えてるやん』ってツッコミたくなってると思うんですけど、これも『最高なので考えて選択してます』ということですね(笑)」

――今日話してくれたマインドが研ぎ澄まされている中で、ライブの表現はどういうふうに変わってきていると自覚していますか。

「最近あんまり歌ってなくて。サビとかあんまり歌わないようにしてます。俺も聴いてるし踊ってるって感じ。僕のライブに歌を聴きにきている人っているのかな……まあ人それぞれだからいるか」

――歌も聴きたいだろうけど、それだけじゃなくて、それこそその場の衝動とかパッションを体感したい人たちが集まってきている感覚があるということですよね。

「そうそう、そうなんですよ。だから好き放題やってる感じですね。あ、ライブについて言いたいことありました。僕、Twitter(現X)で、『今年は予算とか状況が合えばほぼ全てのライブオファーを受けます』って言ったんですよ。イベントって集客のために、みんなが『誰々と誰々が出るから行こう』ってなるような、『なんとか系』とかに寄せた組み合わせを作るじゃないですか。俺は独特すぎて、いつまで経ってもどこにもハマらないんですよ。かぶるアーティストがいないというか、かぶりかけても永久に俺がピョンって飛び出しちゃう。だから全然イベントに呼ばれないんです。ナンプラーみたいな感じ」

――クセが強い(笑)。

「でも俺のライブは最高だと思っているんですよ。どこに出ても刺さる人はいる。100%いけるんですよ。だから全部受けるというスタンスになりました。これはちょっと書いておいてほしいですね。イベントを本当に盛り上げたい気持ちがあったら、俺を出せっていうことなんです。それでお願いします」

――わかりました(笑)。Megaさんはアーティストにとって大事なこととか音楽の根本をストレートに語ってくれるからインタビューしていても面白いし、貴重な存在だなと思います。

「これがアーティストをやる意義ですから。それを忘れちゃって『音楽を仕事にするってこういうことだからさ』みたいなミュージシャンが多いんですよ。いやいや、みたいな。俺はそういう感じはちょっと無理なので。音楽で飯を食えることだけが正義じゃないから、仕事しながら音楽やったっていいし。生きづらいっちゃ生きづらいですけど、自分がいい作品を作れている自覚があることによってすべてOKになるというか。むしろそれを失ったら生きている意味あんのかな、って感じですね」

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