──歌詞の具体的な部分だと、今回《あたし》と《あなた》がメインになりつつ、《僕ら》っていう一人称も出てきますが、これは意図したものですか?自分が脳内で考えていること、世界観、音楽、創造作品──クリエイティブに繋がることすべてを《惑星》と比喩して、タイトルにしました
はい。私と真純、そして世の中のチャレンジしてる人たちを総称して《僕ら》と言ってます。で、《惑星》が何を指しているかというと、人の脳細胞と宇宙の構造が似てると聞いて。自分が脳内で考えていること、世界観、音楽、創造作品──クリエイティブに繋がることすべてを《惑星》と比喩して、タイトルにしました。MVもその比喩とリンクさせて作って。
──ああ、今回のMVではどんな表現をされるのか気になってました。
惑星というものを、「プライベートのa子」と「アーティストとしてのa子」と「これから新しく変わっていくa子」に分けて。a子の中にある創造の根源を赤い惑星で喩えています。
──なるほど。惑星って、太陽というか恒星の周りを回るものだと思うんですけど、a子さんにとって太陽にあたるものって何になると思いますか?
たぶん目標というか夢みたいなものが太陽で。自分はその周りを回ってる星の1個だと考えています。なぜ脳内と宇宙を結びつけたかというと、そういう人たちがたくさんいると思って。ほかの星、みんなの脳内の中も惑星で喩えるという。
──たとえば、a子さんにとってはa子さん自身が夢という太陽に対する惑星だけど、この曲を聴いた人からしたら、a子さんが太陽で、ファンの数だけ惑星があるなと思うとすごく素敵なタイトルだと思いました。
ああ、素晴らしいです。それは全然考えていなかったですけど、すごくいいですね。人を星に喩えて作ってみた曲なので。
──a子さんのライブに来ているファン方を見ていると、音楽はもちろん、a子さんの人としての佇まいや曲のメッセージに共感してここにいるんだろうなと感じる人がたくさんいて。その皆さんの前で直接歌ってみて、どう感じました?
ライブはまだまだ苦手なんですよね。この曲をちゃんと間違えずに表現せねば、というのに精いっぱいで、お客さんとコミュニケーションを取るとか目を見るとか、自分もライブを楽しむことが全然できてなくて。アーティストという職業を選んでるくせにライブが苦手ってちょっとまずいかなと思ってたんですけど、エリック・クラプトンも苦手っていうのをインタビューで読んで(笑)。あ、そういうアーティストもいるのかと思って。アーティストによってステージングもお客さんとのコミュニケーションの仕方も違うから、自分にはどれが正解なのかを探しつつ、今年はライブに出させていただくことが多くなりそうなので、まずはライブを楽しむことから始めたいですね。
──ライブでのお客さんとのコミュニケーションはまだ手探りだと思うんですけど、SNSを通してのコミュニケーションで、気づきがあったりはしますか?
たとえば、“あたしの全部を愛せない”が思ったよりキャッチーじゃないんだなと気づきましたね。「暗い曲」って書いてる方が結構いらっしゃって、「あれ? a子の中では結構明るい曲だったんだけど、やっぱ暗いんだ?」って(笑)。そういう気づきはありがたいです。“racy”には、思ってた通りのコメントを書いてくださる方がいて。「90年代のセル画の〜」みたいな、『AKIRA』『(新世紀)エヴァンゲリオン』『(serial)experiments lain』って書いてらっしゃる方とか、「もう正解!」って(笑)。
──皆さんちゃんと言い当ててるんですね(笑)。
「サビが聴きやすくなった」って書いてくださってる人もいて、「あ、よかった」って思いつつ。いい意味で「暗い」って書いてくださってる人もいて、「やっぱそうだよね、聴きにくいよね」とか。コメントはすごく気づきが多いですね。売れていらっしゃるアーティストさんの話を耳にすると、いろんな人に聴いていただくと、そのぶんいいコメントも悪いコメントもたくさん来て、その悪いコメントに思ったよりも食らうらしくて。怖すぎて次の曲を出すタイミングが遅れちゃうっていう人もいたし、考えすぎてわけがわからなくなっちゃうっていう人もいて。私はまだ多くの人に聴いてもらうことをまだ達成してないんですけど、次の一手をちゃんと考えておかないと、怖くて踏み出せなくなっちゃうんだろうなと思いました。たくさんの人に聴かれているアーティストさんも、いろんな意見が来たら混乱すると思うんですけど、みんなちゃんと音楽やってて強いなあと思って。自分も頑張ろうと思っています。
──a子さんの中で「ポップであろう」という意志が強いと思うんですけど、「自分の理想のポップを作りたい」のか、それとも「聴き手、大衆が求めるポップに近づきたい」のか、どちらの気持ちが強いですか?a子で「こんな音楽初めて聴いた」って思ってもらえるようになりたくて。それをインディーでマイナーな音楽でやるんじゃなくて、ポップスとして昇華できている音楽でやりたい
最終的には前者なんですけど、今は後者ですかね。最終的には「聴いたことのないジャンルを作る」っていう大きな目標があって。長い音楽の歴史の中で、ジャンルって出尽くしてると思うんですけど、何かのジャンルと何かのジャンルを組み合わせたら、すごく新しく聴こえたりすると思うんです。プラスそこに世界観があれば、さらに見たことがないアーティストになれるんじゃないかと思っていて。ビリー・アイリッシュがほんとに衝撃だったんですよ。あのローの出し方とウィスパーボイスと上もののトラックの少なさが、洗練された組み合わせ方で、プラスあのファッションと世界観。2020年代になってもこれだけ新しく聴こえる音楽ってあるんだと思って。自分もそういうジャンルに挑戦したい。a子で「こんな音楽初めて聴いた」って思ってもらえるようになりたいです。それをインディーでマイナーな音楽でやるんじゃなくて、ポップスとして昇華できている音楽でやりたいと思ってて。“肺”は「聴いたことない音楽だよ」って言われるんですけど、ちょっとインディーな感じでやっちゃってるなあと思うので、もっとポップに、いろんな人が聴きやすいジャンルでできるようになりたいです。
──初夏には1stフルアルバムのリリースが発表されていて。それこそアルバムだと、ちょっとインディーっぽい曲にもチャレンジできると思うんですけど、どんなアルバムになりそうですか?
実はもうほぼ全部できていて、1曲だけ遊びましたね。ほんとは2曲遊ぼうと思っていたんですけど、それを2曲にするか1曲にするか、まだ悩んでいて。絶対入れる1曲は、自分が好きなNujabesやMasegoのようなオリエンタルな感じで。ギターの白川詢くんは、「チルだね」って。……たぶん適当に言ってると思うんですけど(笑)。
──ははは。
それ以外はなんだかんだ、サビから作った曲が多いですね。いろんな人に聴いてもらいたいなあという意志がフルマックス状態の時にバーッて作って。今までは自費で全部やってたから自分たちの責任だったけど、レーベルと一緒にやるってことは、a子だけのものじゃないなっていうことをすごく意識した時期があって。その時に中村さんと、「あ、ヤバいヤバいヤバい」ってなりました。「アルバムにこれだけ費用がかかるってことは……ヤバい、ポップな曲作ろう!」って(笑)。
──そこはビジネスとしての意識が強いんですね(笑)。予算があって、予算を達成するためにこういう曲を作らないと、という。
そうですね。「この一音が何円で……」って(笑)。この曲にはこれだけの人たちが関わってるから好き勝手できない、っていうモードの時に作れた曲が7曲くらいアルバムに入ってます。
──おお! a子さんの名刺代わりのようなアルバムになりそうですね。
でも、「a子ってこういう曲だよね」「こんなの聴いたことない」みたいなのはまだ全然達成できていなくて……。でも、「これからチャレンジしますよ」みたいなアルバムにはなりましたね。コメントの話とも繋がるんですけど、「a子の曲を聴いていると懐かしい気持ちになる」と書いていらっしゃる方がいて、そこで自分の曲ってノスタルジックなんだって思ったのがヒントにもなったんですけど、通して聴くとノスタルジーなアルバムになったと感じました。ジャケットやアートワークも頑張ったので、楽しみにしてほしいです。
スタイリング=Yuki Yoshida
ヘア&メイク= NATSUKO(UpperCrust)