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メジャーデビュー曲“惑星”、ドラマ『初恋、ざらり』OPテーマ“あたしの全部を愛せない”などを含む、a子の現時点におけるアーティスト性を見渡すことができる1stアルバム。そこから浮かび上がってきたのは「ノスタルジー」「サイバーパンク」「アンニュイ」という3つのワードだ。新曲“miss u”は90〜2000年代のポップ~ロックバンドを彷彿とさせるし、全体を通して、いかに懐かしくて新しいポップスを生み出すかという実験をアレンジャーの中村エイジと行っているように見える。a子のルーツには『攻殻機動隊』『AKIRA』などがあり、これまでの映像にも日本のサイバーパンク的表現が見られたが、たとえば新曲“ベージュと桃色”を聴いた瞬間、サウンドからそのような世界観が目の前に広がっていく。アンニュイな佇まいはジャケットに表れているが、気だるさや儚さ、諦観は歌唱の細かい部分などにも滲み出ていて、それでいて希望と情熱を捨て切らない感じが、今の世の中の一種のムードとぴったり合っているのだと思う。(矢島由佳子)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年9月号より抜粋)
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