──そして“Kick it”。これめちゃくちゃ個人的に好きだな。“Kick it”は自分がいちばん青かった時の影響が残っているものを詰め込んで、これからの子たちを鼓舞してる感覚かもしれない
ありがとうございます。これは浮遊感もあって、バンドサウンドがドシッとしてる。最初つくってる時は、もうちょっとハーコーっぽい分厚い曲になる予定だったんですけど。僕が歌って歌詞をつけると、こんなにポップな感じになるんだなっていう。
──今の04 Limited Sazabysの年齢感も自然に出てる曲だよね。
うん、かもしれないです。歌詞の書き方とかは、10年前みたいに語呂とかノリで書いてるけど今しか言えないような人生観も入ってて。当時、たぶんここまで歌えないだろうなっていう気がします。今、歌詞を見てても大人になったなと思います。自分たちがどう未来に影響を与えられるかみたいなところは『Harvest』の時から歌ってはいるんですけど、より周りが見えてる感じがします。
──包容力を持つ大人になった先で、より背中を見せながら前に進む感じになってる気がしますよね。『Harvest』ってまさに収穫のアルバムだったと思うんだけど、今回の『MOON』には始まりを感じる。“Kick it”は大人な曲なんだけど、大きな始まりを感じるところが好きかな。
でも歌詞に関してはほんとに自然に書けましたね。《life goes on》とか言ってるけど、これはDragon Ashを意識してます。
──あ、そうなんだ。
《kick it!》も、僕が好きだったア・トライブ・コールド・クエストの“Can I Kick It?”を使いたいっていう。最初、樹木希林って言ってたんですけど(笑)。樹木希林をおしゃれに言おうってことでこれになって。
──樹木希林もリスペクト?
樹木希林は僕の中のロックスターなので。
──(笑)リスペクトが詰まってる。
はい。この《ひたむき注ぎ根伸ばす》とか《(涙で)また花咲かすよう》とか、これもめちゃくちゃDragon Ashっぽい感じで言ってるんです。あと《金輪際漂流ばっか ええて》とか、これもホルモンの“上原~FUTOSHI~”って曲で《チョッパーばっか もうええてー!!》みたいなフレーズがあって、そこを意識してたりとか(笑)。そういう僕の中での10代の頃のアイドルたちは、今やもう隣にいる、一緒に遊んでるお兄さんたちなんで。だから全然使っていいかなみたいな。
──先人たちへのリスペクトを結集しつつ、それが下の世代への包容力のあるメッセージになってる感じがします。
そうかもしれないですね。自分たちが中間なので、自分がいちばん青かった時の影響っていうか残っているものを詰め込んで、これからの子たちを『大丈夫だ』って鼓舞してる感覚かもしれないです。
──だからフォーリミのストレートな魅力も、音楽的な充実もシーンにおける役割も新曲だけで詰まってて、これでもう十分じゃんってなりそうなところだけど、そこでなぜ“mottö”のカバーが必要だったのか。“mottö”のカバーは自分がこれを書けないんでYUKIちゃんの言葉を借りて歌わせてもらった感じ
いやらしい言い方すると、まず話題性ですね。俺がジュディマリを歌うって言ったらみんな聴きたいでしょうっていう。あとカバーは、トリビュートへの参加という形でいろいろやってきたんだけど、自分らのリリースとしてカバーってかたちのものを出したい気持ちもあって。
──自分たちで主体的に責任を持つカバーということですね。
うん。その中でジュディマリをやりたいというのがあって。僕、この“mottö”という曲がすごい好きだし、この曲を2ビートにしたいってずっと思ってたので。
──この時期のジュディマリのカバーっていう発想も珍しい感じがする。
僕としてはすごい直撃で聴いてた頃なので。しかもバンドが終わりに向かっていってたので、この頃は。
──そうなんだよね。
そこの儚さも、小学生ぐらいの時に感じてた記憶があります。なのにこんだけ勢いがあるんだっていう。逆にこれだけ前向きでお転婆なこと言ってても、すごく悲しげにも聴こえますし。
──“mottö”を聴くとジュディマリは濃密になりながら終わったんだなっていうのがわかりますよね。
はい。歌詞もすごい好きで。
──歌詞、いいよね。
自分がこれを書けないんで。YUKIちゃんの言葉を借りて歌わせてもらったって感じですね。僕もこうでありたいというか。この女の子の、ギャルのバイブスみたいなのって、自分の中にも飼いたい人格なんですよね。さっきゲームみたいに俯瞰して自分をプレーしている感覚があるって言ったんですけど、こういうマインドはやっぱり欲しいなといつも思ってます。
──このバイブスはわりと自分に召喚できるんじゃない? 歌うスタイルとしても精神性としても。
はい、できます。僕は、ステージ上ではこういう感じです。しかもジュディマリをカバーしてる人って誰かいたっけなみたいな感じがして。僕らとしては洋楽のすごい有名な曲をカバーとかするより面白いんじゃないかなっていう。存在感として僕らも、ポップだけどこうやってエッジがきいてる人でいたいなっていうのはあります。
──バンドアレンジとしてもやってて面白かった?
はい。これ、もともとのTAKUYAさんのギターが結構わけわからないフレーズを弾きまくってるので、そこをどうするっていうのはありましたね。HIROKAZ(G)もいろいろやってくれて、いいなってとこはあったんですけど、ここはもっとシンプルにしたいってことになって。ライブハウスで一発で鳴らすドーンのかっこ良さみたいな方向に持っていきました。メロディも白玉ですし。ジュディマリだともっとグチャグチャしてるかなっていうところを、どストレートにやってみました。海外の人とかに普通にパンクの曲としてめっちゃ聴いてほしいですね。バンドサウンドでいうと、僕、この曲がいちばんうまく行った気がする。ドドダダ、ドドダダってドラムキックがあって、そこから2ビートに行く歯切れの良さと。なんかイージーコアみたいなことやってるというか。音づくりは全然違うけど。キックがビタビタいってる感じが気持ちいいです。このEP全体に、やっぱりバンド活動してく中でのバンドサウンドの気持ち良さみたいのがより明確になった感じがして。さっきも言ったんですけど、出したい音がすごく自分たちの中でもくっきりしてるので、それが遠回りせずにできたなって感じです。
──なんか今日、話を聞いてて改めてパンクバンドなんだなということも思ったな。すごい普遍的なメロディやサウンドをまっすぐできるし、結束バンドの曲も提供できるし、戦略的にジュディマリもカバーできる、そこをパンクバンドの表現としてできちゃうところがすごいし、やっぱりずるいなっていう感じがしますね。
ずるいですよね。でも、そのパンクバンドと思われたいっていうのは、大前提としてあるかもしれないですね。そこに身を置きたいっていう。
──型にとらわれずパンクをやる才能があるんだと思いますね。2025年の04 Limited Sazabysはどうなっていく予定なの?
2024年は自分たちの冠のツアーとかもやってなかったですし、自分たち主導のイベントとかツアーとかは、2025年はしっかりやってこうかなと思います。あと『YON EXPO』もやろうと思ってるし。『YON EXPO』もやるんだったら、それのお土産的になるような曲つくったほうがいいかなとも思ってるし。前に『MYSTERY TOUR』をやって、みんなにすごい楽しんでもらえたんで、そういうみんながワクワクするような動き、独特なことはしたいなって思ってますね。
ヘア&メイク=藏本優花
04 Limited Sazabysは1月30日発売『ROCKIN'ON JAPAN』3月号にも登場!
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