──“サミダレ”を聴いていて感じたのは、些細な日常のようなすごく小さな世界にフォーカスを当てていたかと思ったら、急に引きのアングルになって大きな概念を歌う、一気に視点が変わる歌だなということ。日々の生活と、いつ死んでしまうかわからないという切迫感が、隣り合わせなんですよね。ライブハウスシーンだけにとどまっていたら、ブルーハーツに出会えた中学生の頃の僕には届かない。
そういう意味でもちゃんと大衆に打って出たい
永遠に続いていくんじゃないかって思うような日常が、ある日急に変わるんだよっていうことを表現したかったんです。《直に雨が日々が止むよ》のところを1回落としたのは、その差を明確につけたいという意図もあります。
──小柴くんには、生活の時間と音楽の時間に境界線がありますか?
Cloudyを組んでからはずーっとバンドのことを考えてるので、ないですね。でも、この職業のありがたいところは、嬉しいことも悲しいことも、心が動く経験すべてが曲を作るうえでは意味があるじゃないですか。日常の中でも感動できるタチなので、作詞作曲は向いてるなと思いますね。だから、曲が日常とすごくリンクしてます。まあ、いつか非日常的なものも作ったら面白いかもなとは思っているんですけど、作り方がわからない。ファンタジーやフィクションで自分を納得させるのが難しい。
──ファンタジーを書くことにチャレンジしたことはあるんですか?
ちょっとはあります。完全非日常なことを物語チックに書こうと思って。でも自分の人生もある意味、物語じゃないですか。絶対ストーリーがある。それには敵わないですね。映画とかもそうですけど、結局リアルがいちばん面白いと思ってしまう。人間の生々しさをファンタジーが超えたことはまだないですね。それもまた自分の捻くれた部分につながっていて、ただのハッピーエンドじゃ納得できない節がある。フィクションはすっきり解決して、きれいに終わってくれるじゃないですか。でも現実はどこかしこりが残ったりして、それが面白いと思っちゃうんです。それを超えるファンタジー的な曲がいつか作れたらいいなと思います。
──音楽活動の中で、小柴くんは何をしている時がいちばん楽しいですか?
うーん、ライブもめっちゃ楽しいんですけど、作曲かもしれないですね。いいデモ音源が作れた時に、それを聴きながら散歩してる時間が、今の僕の人生でいちばん幸せかもしれないです。自分の納得できる曲が作れて、それを聴きながら歩いてる時に、『こんな素晴らしい曲を俺は作れるのか!』っていう気持ちにもなるし、普通にいちリスナーとして楽しんでる自分もいる。作曲は難しいですけど、いい曲ができたらいちばん楽しいです。
──メンバーにもまだ聴かせていない、純粋に自分の中でいいものを作れたと思う瞬間が楽しいということですよね。
もちろん一緒にバンドをやってるんで、いいって言ってくれたら嬉しいですけど。別に自分がいいと思ってたら、周りがイマイチって思っていても、それすら関係ないくらいの自信を持てますね。誰がなんと言おうとこれは絶対いい曲だ、という思いは自己完結してるかもしれないです。
──周りの意見に左右されず、自分でいいと思えるものを確信できるのは、作り手として最強の武器を持ってますね。
こういう気持ちをなくしたら、曲に限らずものづくりは苦しくなっちゃう気がしますね。自分がいちばんのCloudyのファンなので。常に自分は作り手とリスナーを同時にやっているというか。ファン第1号のそいつがいいって言うなら、『だったらいいでしょ』って思えますね。
──「作る自分」と「聴く自分」が常に共存しているのは面白いですね。
なかなかOK出してくれない時間があります。もう許してくれよって思うんですけど(笑)。特に歌詞に重きを置いているので。
──具体的にはどういう部分で悩むことが多いんですか?
なんだろう? 言語化するのが難しいんですけど、『これかっこいい』『いや、それはダサい』っていうのが、自分の中には明確にあって。理屈では説明できないんですけど、いい歌詞ができた時は『絶対にいい』って確信して迷うことがない。リリースしている曲は頭から最後までその審査を通った歌詞たちなんです。だから僕は、Cloudyの歌詞にものすごく自信を持ってます。
──Cloudyはライブでも存在感を発揮しているバンドですが、渋谷WWWでのワンマンも素晴らしい熱演でしたね!
すごく楽しかったです。(メンバーの体調不良により)日程を振り替えたので不安もあったんですけど、ありがたいことにソールドアウトして。改めてワンマンはいいなと思いました。ワンマンのキャパをどんどんデカくするのが僕の野望なので。何千、何万人っていうキャパのステージに立てるようになっても、ちゃんと全員の表情が見えるように、今のうちにこの光景を自分に刻み込んでおこうと思いましたね。
──今回は2回目のワンマンでしたが、初ワンマンとの違いはありましたか?
そもそもバンドを好きになったのがパンクからなので、小手先の考えとか技術じゃなくて、コードを鳴らして叫べばいいんだ、みたいな感覚が前まではあったんです。でも、最近はいい音楽、ライブを作るためにちゃんと考えるようになって、それを少しは体現できたので、手応えがありました。
──考えられるようになったきっかけが何かあったんですか?
歳を重ねるにつれていろんなジャンルの音楽を聴くようになって、それぞれに良さがあると思ったんです。根っこにはパンク好きという部分があるので、ひとつのことに固執する美学もわかるんですけど、音楽を生業にするからには、いろんないいものを取り入れたいと思うようになりました。いろんな方のライブも観させていただけるようになったので、いいところは吸収していきたいです。
──昨年出演したCDJでも、大きなステージに気負うことなく、Cloudyのロックを堂々と鳴らしていましたね。
フェスだと、そんなに興味ないけどちょっと観とこうか、くらいの人も多いじゃないですか。そういう人にも届けようとするライブは初めてに近い体験で勉強になりました。いいライブでしたけど、まだデカいステージに慣れてないと感じたので、場数を踏んで、いちばん大きいステージに立てるバンドになりたいと改めて思いました。
──これから2026年が始まっていくわけですが、今はワクワクのほうが大きいのか、プレッシャーを感じているのか、どういう心境ですか?
バンド始めてからずっとワクワクしてますね。もちろん不安はあるけど、自分のいちばん好きなことを職業にしようなんていうのは大それたことで、リスクがあって当然だし。11月22日には憧れの場所である渋谷 CLUB QUATTROでワンマンをやるんですけど、それが決まっているのはすごくモチベーションになってます。あとは、これから3ヶ月連続リリースする3曲にものすごく自信を持ってます。プレッシャーがないって言ったら嘘になりますけど、でも、それを圧倒的に凌駕するくらいCloudyに期待してるし、その期待に応える自信があります。絶対これはかっこいいっていうのをわからせてやりたい。大衆を振り向かせたいです。
──今の時代、ロックにしか、そしてCloudyにしか言えないことが間違いなくある。そう確信しています。
反発的な態勢でありつつ、ちゃんとど真ん中に行きたいっていう意志はあって。ある音楽シーンではカリスマだったね、みたいなところでは終わりたくないっていう思いが結成当時からずっとあります。田舎町の中学生の僕がブルーハーツに出会えたのは、彼らがちゃんと大衆に行ってくれたからだと思っていて。ライブハウスシーンだけにとどまっていては、ここから何十年か先にCloudyと出会う、中学生の僕のような人には届かないと思う。そういう意味でもちゃんと大衆に打って出たいですね。まずはこの1年で、ものすごく飛躍したいと思ってます。
このインタビューは、発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』3月号にも掲載!