宇宙まお@TSUTAYA O-Crest

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3月にリリースされたファースト・フル・アルバム『ロックンロール・ファンタジー』を携えての、待望のワンマン。宇宙まおは、2012年11月、『ワンダーポップ』のリリース・タイミングに初めてのワンマン公演を行っているのだが、そちらは応募当選者を招待する無料ライヴであった。自身のブログや公の場で、意気込みを伝えまくっていた今回の公演は、見事ソールド・アウト。オープニングSEが鳴り響き、サポートを務めるバンド・メンバーが先に姿を見せたステージに、いつもどおり元気よく袖から飛び出してくるのかと思いきや、なんとフロア後方から周囲をどよめかせつつ登場(のちに彼女は「プロレス入場」だと語っていた)する宇宙まおである。オーディエンスと笑顔でハイ・タッチを交わし、ステージに到達するといよいよパフォーマンスの幕が開ける。
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髭白健(Dr./バンマス)、三澤平和(G.)、二家本亮介(Ba.)、桑原康輔(Key.)という顔ぶれの、宇宙まお自身を含めて「平均年齢26.5〜27ぐらい?」と語られていたバンドは、初っ端から鮮烈にしてエネルギーを全解放するサウンドを叩き出し、そこにエレクトリック・ギターを携えた宇宙まおの、“つま先”のクリスピーで中毒性の高いヴォーカル・ラインが転げてゆくというオープニングだ。以前の、名うてのベテラン・ミュージシャン揃いだったバンドも凄かったけれど、若い視界を共有し、メンバーが一丸となって勢いに乗ってゆく、そんな5人のバンド感が熱を孕む。続いて、三澤のギター・フレーズが離陸する飛行機のように上昇線を描き出すと、オーディエンスの自然発生的なクラップを巻いて“ロックの神様”へ。創造のインスピレーションをポップに綴ったナンバーだが、同世代バンドという「武器」を獲得し、鬼に金棒といったふうに活き活きと歌い上げてゆく宇宙まおの姿には、自信が漲っている。二家本×髭白のリズム隊による、フィルを交えた遊び心たっぷりのアレンジも最高だ。
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愛くるしいビート・ポップ・チューン“1234”を届けると、「記念すべきワンマン・ライヴに来てくれて、どうもありがとう!」と、はち切れんばかりの笑顔で挨拶する宇宙まお。そして桑原の鍵盤ハーモニカから、次々にパートが加わって披露されるのは“みじめちゃん”である。うら若き閉塞感を胸に抱えながらも歩を進める、軽快なカントリー風のナンバー。爆発力だけじゃない、柔らかく温かみのあるサウンドの表現も見事だ。一貫して飾り気は無いが情感豊かな歌声で披露される“自転車”では、髭白がチリンチリン、と鳴らす自転車のベルを合図に、宇宙・三澤・二家本が縦に並んで交互に顔を覗かせるようなフリで賑々しくフィニッシュしてみせる。スポークンワードのフレーズが深い余韻を残す“逢瀬”や、ハンド・マイクで真剣なまなざしを投げ掛けながら歌われる“声”は、まさに若い世代の、戸惑いながらも確かに息づく、そんな魂の存在感を伝える一幕であった。

「大きいステージでは、花道とかあって、サブステージに移動して歌う人がいるじゃないですか。それを真似してみました(笑)」と、フロアから向かって右手に即席で設けられたサブステージでソロ弾き語りに臨む。「いろんなミュージシャンの方に支えてもらって、ここまで来れました。みんな真剣で、負けちゃいそうっていうかパワーを貰っていて。それぞれの技術や力量があって、そしてバンド・マジックが起こる。私は、一人でそれを超えなきゃと思って」「曲と私だけで、どれだけ勝負できるか。それが面白いと思って、ソロの道を選んでいます」。そんなふうに語ると、自身が「相棒」と呼んだ“満月の夜”を、そして『ロックンロール・ファンタジー』の冒頭に配置されていた“ドアー”を、プレイしてゆく。宇宙まおが生み出す楽曲群の、その強烈な記名性の源泉に触れるような一幕であった。なぜ、数限りなく存在する音楽の中で、ヒット・チャートを賑わすポップ・ミュージックの大半は歌モノなのか。それは、「歌」が、誰でも胸にしまい込んで持ち運び、いつでも、一人きりでも、演奏することの出来る音楽だからだ。彼女はそれを、毎日の食事のように摂取し、大切な人に注ぐ愛情のように歌いたい、と伝えるのである。
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さて、あらためて「みんな戻って来てー!」とバンドを呼び込むと、メンバー紹介に合わせて音が重なってゆく。そして桑原によるドリーミーなキーボード・フレーズにも彩られたカラフル・ポップ“シネマヒーロー”から、街のネオンの煌めきの中を雨に濡れて駆け抜ける、そんな情景がサウンド面でも描き出された“ブルーナ”と、パフォーマンスが続く。ソロ・デビューから2周年を迎えたこと、そして5月8日には25歳の誕生日を迎えることを語りながら、「25っていう数字にこだわりを持っていて、以前は、25歳までに売れなかったらやめてやる、って思ってたんですけど、『ロックンロール・ファンタジー』を出して思ったことは、簡単にはやめられない、ということでした。どんなことがあっても、音楽を続けて行きます。ここに来てくれたというだけで、充分過ぎるほど、音楽を続ける理由になります」と、ひたむきで率直な思いを言葉に変えてゆく。彼女が大切に育て上げてきた一曲“哀しみの帆”は、もちろん序盤から名曲の手応えがビシビシ伝わるのだが、そのポップでドラマティックな情景を伝える歌詞終盤の展開が凄い。

本編クライマックスは、「みなさん! ここに来たからには、歌わないと帰れません!」と、オーディエンスとキャッチボールをするようにフレーズを投げ合う“あの子がすき”で飛び跳ねながら「みんなサイコー!」と歓喜の声を上げ、そして確信の完全燃焼ロックンロール“わたしが死んでも”へ。アンコールの催促に『ロックンロール・ファンタジー』のロゴ入りTシャツ姿で応えると、バンド・メンバー一人一人にもコメントを求めつつ、「もっといい歌うたいになって、もっといい曲をたくさん作りたいと思います!」と意気込みを告げ、さらに未知の世界へと手を伸ばしてゆく宇宙まおであった。
宇宙まお@TSUTAYA O-Crest
ダブルアンコールは、再び彼女の独壇場。自身の呼吸でじっくりと思いを染み渡らせるような“夜よ”を届ける。全17曲、若い才能と心意気をすべて音楽に詰め込む、素晴らしいワンマンであった。なお、“自転車”は、5/17から6/2にかけて開催されるフード・フェス『まんパク』(東京都立川市・国営昭和記念公園)のオフィシャル・テーマ・ソングにも決定しているが、その期間中に、会場では宇宙まおのミニ・ライヴも開催される。来場の際は、ぜひ宇宙まおの才能を、味わって頂きたい。(小池宏和)

セットリスト

01 つま先
02 ロックの神様
03 1234
04 みじめちゃん
05 自転車
06 逢瀬
07 声
08 満月の夜
09 ドアー
10 シネマヒーロー
11 ブルーナ
12 哀しみの帆
13 あの子がすき
14 わたしが死んでも

encore-1
01 かわいい人
02 誰も知らない国へ

encore-2
01 夜よ
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