阿部真央×Aimer@Zepp Tokyo

阿部真央×Aimer@Zepp Tokyo
今年1月、デビューから5周年を迎えた阿部真央の、『5th Anniversary 阿部真央らいぶ “お力添え、願います。”ツアー2014』。今後、5/13に名古屋(w/ Heavenstamp)、5/14大阪(w/ 高橋優)、5/16福岡(w/ ウラニーノ)、そして5/30に札幌(w/ Rake)というスケジュールで各地のZeppを巡り、あべま自身は弾き語りスタイルで臨むという対バン形式のツアーである。その初日となるZepp Tokyo公演の模様をレポートしたい。なにしろ初日ということで、セットリストの記載は控えるけれども、以下本文は少々の曲名表記などネタバレになり得る記述を含むので、今後の公演を楽しみにしている方は閲覧にご注意を。
阿部真央×Aimer@Zepp Tokyo

さてこの日、詰めかけたオーディエンスによるハングリーなまでの待望感を受け止めて先に登場したのは、女性シンガーのAimer(エメ)だ。白を基調としたワンピース姿でステージ中央の椅子に腰掛け、サポート奏者のピアノ伴奏と共に切り出されるのはAimerの2011年メジャー・デビュー・シングルにも収録された“TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR”である。ハスキーな美声にたっぷりと情感を乗せて放たれる、馴染み深いメロディ。後に阿部真央は「いきなり、引き込まれてたね。みんな、ハッてなってたの知ってるんだよ」と語っていたが、その言葉どおり、この歌い出しで会場の空気が一変するさまは凄かった。そこからギター、ベース、ドラムスを含むバンド・セットで、アルバム『Sleepless Nights』に収録された楽曲を中心にステージが進められる。

Aimerの美しくも物悲しい、寂しげな歌声。そして彼女がaimerrhythm名義で手掛ける歌詞には星や夜といったイメージが至る所に散りばめられ、持ち時間の限られたステージ上にも関わらず、その孤独な夜から広がり行くかのようなAimer独自の表現世界に、会場内はどっぷりと満たされていった。あべまのデビュー5周年を祝う言葉を挟み込みつつ、この5/21にリリースされるニューEPの表題曲“StarRingChild”(『機動戦士ガンダムUC』主題歌)も披露される。エッジの鋭いギター・サウンドがフィーチャーされた、Aimer自身が語るところの「力強い曲」であった。6/1には、その『機動戦士ガンダムUC』の関連イヴェントとして、今回と同じくZepp Tokyoで『StarRingChild EP』購入者限定のスペシャル・ライヴも行われるそうだ。最後には、阿部真央との交流のきっかけとなったというメジャー・デビュー曲“六等星の夜”を届け、オーディエンスが一曲ごとにふと我に返っては大喝采を巻き起こす、そんなステージは幕を閉じた。

そして後攻はあべまである。オープニングSEもなしにダッシュでステージ中央へと飛び出し、「いやあ、素晴らしかったですねえ! 打って変わってという感じで、わたしですけれども!」とさっそく陽気なトーンで語り始める。彼女が言うには、4か月ぶりのライヴで緊張しているのと、アニヴァーサリーの感謝の言葉を伝えたいということで、今回はこんなふうに挨拶からスタートすることにしたのだそうだ。黒を基調としつつもキュートな衣装はAimerとは対照的で、これは話し合いの後にAimerが白い衣装を選んでくれたからだという。
阿部真央×Aimer@Zepp Tokyo
それにしても今回の彼女は饒舌だった。「ゴールデンウィーク中、お金も使ったでしょう。動かないで溜まっていた仕事もあるでしょう。そんな中、来てくれてありがとうっ!」と高ぶる思いを伝え、バイトが17連勤だったとか、内定が決まったとか、そんなオーディエンスの声にも応じる。「あたし決めたんだ。え? なんですか(笑) 2014年はもう、隠さない! いや、隠してないけど」といったふうに、とにかくオープンマインドでファンと接しようとする姿勢が伺える。ただ、そんな言葉の交流によってライヴの空気がダレるのかというと、決してそうではないのだ。赤いボディのアコギがミュート・カッティングでリズムを取り、楽曲が歌い出されるまでの数秒間に、一気に緊張感が立ち籠めてゆく。弾き語りライヴだというのに、この大きな抑揚はまるでジェットコースターに乗っているような体験だ。

一発一発の迷いのないストローク、勢い良く跳ね上がるカッティング、そしてエモーションを純度100パーセントのまま伝えてしまう圧倒的な歌声。そのダイナミズムと説得力は決してバンド編成ライヴに見劣りするものではなく、だから僕は彼女の弾き語りライヴが大好きなのだが、笑い混じりの饒舌MCによって、むしろ楽曲と歌声の芯の強さが一層露になっていった。凛々しい佇まいとパフォーマンスの切れ味は、まるで赤いアコギを振るう女流剣士のようだ。“貴方の恋人になりたいのです”で始まったステージは、新旧の楽曲を自由に行き来して進められる。思えば、緊迫感の塊のような楽曲群に対し最初のコード一発で歓声を上げ、ビシッとフィニッシュが決まれば冷やかすような声を飛ばしたり、すぐさま笑い混じりのMCに食らいついてゆくファンの姿勢も素晴らしいものだった。阿部真央も「みんながすごく良く曲を聴いてくれてる」と舌を巻いていた。会場の雰囲気から、楽曲群へと寄せられる信頼感がひしひしと伝わるライヴなのだ。

偶然にもAimerの新作EPと同日にリリース予定の新曲“Believe in yourself”も、ライヴ初披露された。こちらもアニメ『ベイビーステップ』の主題歌に起用されているナンバーだが、ここで演奏前に『ベイビーステップ』を絶賛しまくるあべま。「ちょうど書きたいテーマがあって、そこにタイアップの話が来て、うっひゃっひゃって作った」と語り、そしてデビュー5年のキャリアが宿されたかのような、触れる者の背中を押すメッセージ・ソングが届けられる。場内の体感温度がぐっと上昇するような一幕だ。また、この後には映画『小野寺の弟・小野寺の姉』の主題歌を担当することも告知された(詳しくはこちらのニュース記事参照→http://ro69.jp/news/detail/101603)。
阿部真央×Aimer@Zepp Tokyo
本編中に「デビュー5周年、6年目の阿部真央が弾き語りでどんなライヴをやるのかというのと同じくらい、わたしの好きなアーティストさんを観てもらうのが嬉しい」と語られた今回のツアー。満場の「あ・べ・ま!」「お!!」コールに応えてのアンコールは、Aimerとのセッションである。阿部真央が作詞・作曲でAimerに提供した“words”(ミニアルバム『After Dark』収録)と、Aimerのフェイヴァリットであるという阿部真央ナンバー“for ロンリー”を、サポートのピアノを含めた編成でデュエット披露する。順繰りにリード・ヴォーカルを務め、そして阿部真央の芯の強いエモーショナルな美声と、Aimerの豊かなヴィブラートを響かせるハスキー・ヴォイスによるハーモニーへ。オーディエンスから「ライヴCDを出して欲しい」と声が飛ぶのも納得の名演であった。今後の各地で繰り広げられる対バン、そしてもちろん、10月の初の武道館公演も、楽しみにして頂きたい。(小池宏和)
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