開演を今か今かと待ち望む観客で埋め尽くされた会場には、BGMでQueenの往年の名曲たちが流れていた。中でも“We Will Rock You”が流れると、リズムに乗せて観客がハンドクラップをし始め、こちらは全員準備万端だというような一体感を開演前から露わにしていた。そんな熱気溢れる会場正面のステージバックにはツアーロゴがプリントされたフラッグが堂々と掲げられており、グルメツアーというタイトルに合わせて、ご飯の盛られたお茶碗と空のお茶碗(おかわり公演にちなんで)の可愛らしいイラストもしっかりプリントされていた。
そして「誰も倒れたりすることなく、水分とって最後まで宜しくお願いします」との谷口の声に続いたのは“ミミック”! ハイテンションでキレのある古賀のギターサウンドが、谷口の伸びやかなハイトーンと絡み合って聴く者の耳を刺激していく。そこからの“白夜”“クローン”と続くダンスビートの応酬に、満杯の会場は縦に横にと自由に踊りまくる。
ここからは、古賀トークが炸裂。ツアーを通して一番印象に残ったグルメを発表するという場面では、谷口・飯田・小泉が北海道で食べた鮭てんこ盛りの鍋〈鮭なベイベー〉を推す中、一人仙台の蔵王チーズをゴリ推しし、その魅力について熱弁する古賀。そんな古賀に対して「だから何?」と冷たくあしらうメンバーにも負けず、さらにモノマネまで披露し始める古賀。「先に名前を言わなきゃ分かってもらえない」というようなクオリティーの古賀のひとりモノマネ大会では、観客に正解を当ててもらうクイズ形式のもと、本多圭佑選手とドラゴンボールのミスターサタンのモノマネを披露。ラストは江頭2:50のモノマネをしながら「後半戦行けんのかー!」とコールするという、なんとも前衛的な入り方で、後半戦を“ウォーリーヒーロー”からスタート! サビで同じ歌詞を繰り返すことで言葉が持つリズム的な魅力を引き出すと共に、覚えやすさという点でも効果を表してる“ストラテジー”、そして“かけぬけて”“さくらのうた”の持つ緩急のある柔らかい音色に、「(Zepp DiverCityは)あくまで通過点」と話す谷口が、そしてKANA-BOONが目指す大きな未来を垣間見た。
そして会場に響く「おかわり!」コールに迎えられ再び登場した4人は、「上京する時に作った曲を」と新曲“生きてゆく”を披露。「普段4つ打ちばっかりやから、気持ちいいねん」と谷口が話すように、小泉の柔らかいドラミングと飯田のベースの上に心地良く響く古賀のギターリフと谷口のヴォーカルが、新しいKANA-BOONの魅力を存分に引き出していた。そしてラストは「僕たちにはこの曲なしには終われないっていうのがありますよね?このグルメツアーで中華を食べれなかったと。だから最後はみんなで○○を食べて終わろうかと」というMVに掛けた振りから、「皆さんのお腹をいっぱいにして終わろうと思います」という谷口の掛け声に始まった“ないものねだり”! 今まであんなに踊り狂っていたのにまだやれるのか?というほどのエネルギッシュな会場は、この日最高のテンションを迎えた。《ゆらゆらゆらゆら僕の心》というラストサビのコール&レスポンスでは、各メンバーひとりひとりの美声(?)も披露。(古賀のターンでは《こがこがこがこがこがこがはやと》に歌詞を変えて全員でシンガロングをするというおまけ付き) そうして大円団で迎えたグルメツアーラストは、会場全員で手を合わせての「ごちそうさまでした!」の声に幕を閉じた。
アンコールで披露された“生きてゆく”は8月27日にシングルとしての発売が決定されており、さらに8月30日には「KANA-BOON野外ワンマン ヨイサヨイサのただいまつり! in 泉大津フェニックス」が開催される。お腹いっぱいで今回のツアーが終わっても、今年の夏は各地フェスでまたお腹を空かせた彼らに会えることだろう。グルメ的にも音楽的にもひとまわりもふたまわり大きくなった彼らの躍進劇は、これからも続く。(峯岸利恵)
■セットリスト
01.1.2. step to you
02.ワールド
03.MUSiC
04.ミミック
05.白夜
06.クローン
07.夜のマーチ
08.見たくないもの
09.東京
10.羽虫と自販機
11.レピドシレン
12.ウォーリーヒーロー
13.ストラテジー
14.かけぬけて
15.さくらのうた
16.結晶星
17.盛者必衰の理、お断り
18.フルドライブ
(encore)
19.生きてゆく
20.ないものねだり