『マチネ』で昨年日本デビューも果たしたUKはロンドン出身のシンガー・ソングライター、ジャック・ペニャーテ。ジェイムス・ブラント以降、男性SSWのデビュー・ラッシュが続く英国だが、そんな中でも彼は売れ筋のバラッド・シンガーとは一線を画すユニークな個性で注目を浴びたアーティストである。
パンク、ギター・ポップ、ラウンジ、フォーク、ソウル……と曲毎に全く異なるニュアンスが顔を出し、いかにも「iTunes/MySpace世代」な折衷主義を旨とする彼のサウンドは、今夜のショウでも顕著だった。飄々とシンプルな爪弾きを美しく響かせたかと思えば、独楽のようにクルクル回りながらエレキを無作法に掻き鳴らし、白熱と脱力(若しくはローファイ?)のちょうど真ん中辺りの興奮を生んでみたり、好き勝手に曲を紡いでいく。
3ピース最小限のバンド・アンサンブルはけっして上手いとは言えないし、パフォーマンス自体にどこか習作っぽいアマチュアイズムが漂っていたのも確か。しかしSSWの定型を突き崩すそのフリーフォームな演奏、そしてソングライティング自体も、2000年代後半の「なんでもあり」なDIYムードを象徴していると言えるかもしれない。余談ですが、カーリーヘアに地味な大学生風味のルックス、そしてよれよれのボーダーTシャツを腕まくり上げて着こなしたジャックの風貌は、モダン・ラヴァーズ時代のジョナサン・リッチマンを彷彿させられるものでした。(粉川しの)
ジャック・ペニャーテ @ DUO MUSIC EXCHANGE
2008.02.10