「今やこのメジャー・デビューの記念日にね、こんな大きなところを貸し切りにできてね、しかも私たちのことをお祝いしたいって思ってくれる人が、こんなにたくさん……」。序盤のMCから早くも感激のあまり目を潤ませているあ~ちゃんを励ますように、満場のオーディエンスから拍手と歓声が湧き起こっていく――最新シングル『Cling Cling』を携えて、全国7都市14公演にわたって行われてきた、Perfumeのアリーナ・ツアー「Perfume 5th Tour 2014『ぐるんぐるん』supported by チョコラ BB」の最終日であり、国立代々木競技場第一体育館4DAYS(9月17日・18日・20日・21日)の4日目であると同時に、2005年9月21日のメジャー・デビューから10年目のアニバーサリー・イヤー開幕を告げる記念すべき公演となったこの日のアクト。「私たちメンバーも、スタッフさんも、集大成を見せようと、気合いを今一度入れ直してきました!」とのっちが熱く意気込みを語っていた通り、Perfumeの「最新型」と「原点」、そして彼女たちが日本を代表するポップ・アイコンとして支持され続ける理由が、トータル3時間以上に及ぶ熱演の一瞬一瞬からはっきりと伝わってくる、最高のステージだった。
開演前から高らかなクラップと期待感に満ちていた代々木第一体育館。場内暗転し、舞台覆う白幕にハイパーなオープニングCG映像が映し出され、その映像が“Cling Cling”ミュージック・ビデオのアジアン・テイストの風景に変わり――という展開の中でさらに高まっていった客席のテンションは、白幕が落ちてポージングを決めたかしゆか/のっち/あ~ちゃんが現れた瞬間にあっさりと沸点を越え、終演まで全編クライマックス状態の熱気へと突入していく。美術監督:種田陽平による、アジアの裏通りを模したような“Cling Cling”MVのセットがステージ上に完全再現され、3人のエスニックな衣装&パフォーマンスと相俟って、オリエンタルでミステリアスな“Cling Cling”のポップ感を代々木第一体育館の空間に描き出していく。“Handy Man”“Clockwork”と最新アルバム『LEVEL3』からの楽曲を畳み掛けた後、瞬時に白の衣装にチェンジして“レーザービーム”へ! カラフルな歌声とレーザー光線が会場狭しと弾け回り、歓喜と多幸感が刻一刻と増していく。「このツアー中にいつも言ってるんですよ、『お隣の人と仲良くなってくださいね』って。でも、代々木に来てからのっちにツッコまれて。『や、初めての人と隣で仲良くなるの無理じゃろ』って(笑)。でもさ、みんなPerfume好きなんでしょ? おんなじ気持ちじゃない? だから、隣の人は他人じゃないの。仲間なの!」というかしゆかの言葉が、オーディエンスの情熱をさらに高ぶらせていく。
「今回は『Cling Cling』っていうシングルでツアーを回ってるんですね。余白がたくさんあるので、昔の曲とかやってみたりしてるんですけど……」とかしゆか自身も話していた通り、シングル『Cling Cling』の4曲の他には、“エレクトロ・ワールド”のようなシングル曲はもちろん、“I still love U”(3rdアルバム『⊿』)、“セラミックガール”(2ndアルバム『GAME』)、さらには“恋は前傾姿勢”(シングル『Sweet Refrain』)、“SEVENTH HEAVEN”(シングル『ポリリズム』)といったカップリング曲まで披露。シングル・ベスト的な内容とはまったく別の形でデビュー以降の足跡を綴りながら、終始客席を熱いクラップとダンスで満たしてみせた、意欲的なアクトだった。メジャー・デビュー記念日のステージということもあって、「デビューの時、池袋サンシャインで記者会見やりました。いろんなカメラが立ててあって、その前で踊りました、“リニアモーターガール”! でもね、あのイベントの日ね、9月の21日じゃなかったんですよ、9月23日(笑)」(あ〜ちゃん)など、デビュー当時を振り返るMCが自然と多くなる3人。「今日、カメラが31台入っています。っていうことは、スタッフさんが、カメラの人だけで31人もおるんよ。うちらは、アイドルイベントやったら、31人お客さんが来てくれたら大儲けだったもんね。それがなんと、カメラのスタッフさんだけで31人!」と感慨深げに声を震わせるあ〜ちゃんに応えて、熱い拍手が巻き起こる。会場を3グループに分けての恒例のコール&レスポンス、この日の各グループ名は、“リニアモーターガール”にちなんで「リ」「ニ」「ア」。「リニアがどういう意味かわかってないけど(笑)」と言いつつ呼び起こした客席一丸のコール&レスポンスが、巨大な空間をびりびりと震わせていく。
“いじわるなハロー”の途中で、花道の先の円形センターステージへと移動した3人。ハンドマイク・スタイルでの“I still love U”に続き、文字通りマイクスタンドごと前のめりになってみせた“恋は前傾姿勢”を披露した後、マイクスタンドごと花道の下にせり下がっていく3人。プロデューサー・中田ヤスタカによるバキバキのトラックが響き渡る中、なんと先ほどまでのアジア裏通りテイストなセットがゆっくり変形。舞台背後の書き割りが縦回転してLED画面が次々に姿を現す。そして、舞台にはパープルの衣装に着替えた3人が現れ、“エレクトロ・ワールド”のアグレッシヴなサウンドと伸びやかなメロディが鳴り響く! 次の“DISPLAY”の途中で再び花道下に姿を消し、赤・青・黄の鮮やかな衣装に身を包んだ3人がステージ上の画面に映し出されていく――と思ったら、あたかもその映像から抜け出してきたように、同じ衣装にチェンジした3人が舞台に登場! さらに、瞬時に水色&白のコスチュームへと早変わりしたところで“SEVENTH HEAVEN”へ……音楽とパフォーマンスだけでなく、舞台演出も含めた「総合芸術としてのPerfume」の完成度の高さが、会場をさらに熱く高揚させていく。
お馴染みの「P.T.A.」のコーナーでは、いつものB'z“ultra soul”、trf“survival dAnce ~no no cry more~”に加え、振り付け指導とともに1万2千人のオーディエンスを♪カラダを夏にシテ〜とT.M.Revolution“HIGH PRESSURE”のダンスへと巻き込んでいく。さらに、満場の稲穂ハンドウェーブを巻き起こした「イナホ!」のコール&レスポンスから「カボチャ」「ススキ」「クリ拾い」と振り付けつきで展開していく。そんな「P.T.A.」のコーナーで生まれた高揚感と一体感を、そのまま“Party Maker”以降の終盤へとつなげていった3人。“GLITTER”“セラミックガール”“ジェニーはご機嫌ななめ”で熱いダンスと祝祭感の風景を生み出し、“チョコレイト・ディスコ”ではあ〜ちゃんが「すっごい声でした! もう、地響き!」と驚きを露にするほどの圧巻のシンガロングを呼び起こしていた。本編のラストを飾ったのは、シングル『Cling Cling』の収録曲であり、ファンが歌詞を手に書いた写真をつなぎ合わせたリリックビデオが制作されている“Hold Your Hand”。「自分たちが思っている以上に、たくさんの人の手に支えられているんだなあっていうことに気がつきました。こんなにもたくさんの手に求めていただけているのなら、応えていきたいと思いました。まだまだ、この手で掴んでいきたい。夢も、チャンスも……そして、あなたも」。決然とした表情で語るあ〜ちゃんの言葉とともに響いたこの曲が、どこまでもあたたかく、優しく、広大な空間を包み込んでいった。
アンコールを求める熱い手拍子に応えて、ピンクの衣装に身を包んだ3人がアリーナ後方のサブステージに登場。アンコール1曲目は、ライヴでは2007年の「感謝!感激!ポリ荒らし!~あらためまして、Perfumeです~」の名古屋公演以来実に7年ぶりの披露となるデビュー・シングル“リニアモーターガール”! Perfumeを支え続けたマネージャーのリクエストによる“Perfume”、さらに美しいバラード・ナンバー“願い”でフィナーレ……のはずが、この日はスタッフから3人へのサプライズが用意されていた。2005年のデビューから現在まで3人の歩みを綴った映像が、ステージ左右のヴィジョンに流れ、その映像がまさにこの代々木公演の様子を映し出した後、1万2千人のオーディエンスが一斉に赤と白のボードを掲げ、会場一面のコレオグラフが出現! 映像を見ていた時点で感極まっていたかしゆか、のっち、あ〜ちゃんの視界に踊る「We Love Perfume」「9月21日 2005→2014」「10年目!! THANKS!!」の文字に、3人ともあふれる涙を抑えきれなくなる。「(映像を)改めて見ると……ほんとにちっちゃい時から、3人頑張ってたね」(のっち)、「もう、全然お客さんおらんくてさ。“リニアモーターガール”の衣装も、暑くて切っとったなあ? それがね、今やこんなにおっきなところでライヴができて、こんなにたくさんの人にサプライズまでかけてもらって……本当に幸せです」(あ〜ちゃん)という言葉のひとつひとつが、客席を感動で包んでいく。「10年目に突入しました。これからもPerfumeでいさせていただける限り、求めてくださる方がいる限り、頑張っていきますので。応援よろしくお願いします」と呼びかけるあ〜ちゃんに、拍手と歓声が広がる。
「こういう記念日を、みなさんと過ごせて、いつも支えてくれているスタッフさんと過ごせて、何よりこの2人と過ごせて、本当に幸せだなと思いました」とかしゆか。「たくさん初心に返る瞬間があって。前に進みつつも、ちゃんと昔の自分でいられるような、そんなツアーでした。みなさんと今日、この場にいられたことを、本当に嬉しく思います」とのっち。そして、「もう……何て言って感謝したらいいかわからんよ……」と涙で声を詰まらせるあ〜ちゃん。「こんなになるとはね、10年前はもちろん思ってなかったし、5年前も思ってなかった。『ありがとう』以上の言葉があればいいなあって思うくらい、本当に感謝しております」。そんな心からのメッセージに応えて、満場の客席から惜しみない拍手喝采が湧き上がっていく。「みなさんも、毎日大変なことたくさんあると思います。悔しくて悔しくてしょうがない時も、頑張っても報われない時も、全然評価してもらえない時も、たくさんあると思います。だけど、必ず誰かは見とってくれる。だから、信じて、自分を! 曲げないで! また笑顔で、みなさんに会えたらなあと思います」……ステージの最後、自分たちの道程を振り返りながら客席に語りかけるあ〜ちゃんの言葉が、ライヴの熱い余韻とともに、いつまでも胸に焼きついて離れなかった。
2012年の「Perfume WORLD TOUR 1st」(アジア4ヵ国)、2013年の「Perfume WORLD TOUR 2nd」(ヨーロッパ3ヵ国)に続いて、10月31日からは台湾、シンガポール、イギリス、そしてライヴ初上陸となるアメリカでのLA&NY公演も含む「Perfume WORLD TOUR 3rd」がスタートする。「3年前よりも今の方が、自分たちカッコいいことやれてるって思える瞬間もたくさんあるし。やっぱり日本の音楽ってカッコいいって思える瞬間もたくさんあるので。世界の人にも知ってもらって、私たちを通して、日本のことをもっと好きになってほしくて。だから、私たちPerfume頑張って、行ってきますので。どうかみなさま、応援をよろしくお願いします!」と3度目のワールド・ツアーへの決意を語っていたあ〜ちゃん。自らの足下をしっかりと見つめながら着実に進歩を続けてきたPerfumeの「今」の充実感と、さらに大きな存在へと成長していくであろう「これから」への予感が、壮大なスケールで響き合っていた、珠玉の名演だった。(高橋智樹)
■セットリスト
01.Cling Cling
02.Handy Man
03.Clockwork
04.レーザービーム
05.いじわるなハロー
06.I still love U
07.恋は前傾姿勢
08.エレクトロ・ワールド
09.DISPLAY
10.SEVENTH HEAVEN
11.Party Maker
12.GLITTER
13.セラミックガール
14.ジェニーはご機嫌ななめ
15.チョコレイト・ディスコ
16.Hold Your Hand
(encore)
17.リニアモーターガール
18.Perfume
19.願い