MUCC@国立代々木競技場・第一体育館

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3月からスタートしたMUCCの7ヶ月連続ライヴプロジェクト「SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争-」。各メンバー・プロデュースによるワンマン・ツアーを皮切りに、バラエティ豊かなバンドとの2マンや3マン、6月リリースの12thアルバム『THE END OF THE WORLD』を引っ提げたワンマンなど、コンセプトの異なる全6種類・各9公演のツアーを月ごとに実施する一大プロジェクトである。その58本目にしてグランドファイナルとなる「Final Episode 『THE END』」が国立代々木競技場第一体育館で開催された。

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半年間の集大成であると同時に、初の代々木第一体育館ワンマンとなるこの日。そんなスペシャルな夜に相応しいセンセーショナルな幕開けに、いきなり心を持っていかれた。オープニング映像を終えてステージが露わになると、目に飛び込んでくるのは布の上の「THE」「END」「OF」「THE」「WORLD」の文字。そのまま“THE END OF THE WORLD”に突入すると、「THE」の文字を映し出した幕が炎に包まれ、その奥から逹瑯(Vo)が現れる。さらに「END」「OF」「THE」「WORLD」の文字が順番に燃え上がり、SATOち(Dr)、YUKKE(B)、ミヤ(G)が次々と登場。場内に沸き起こるのは当然のごとく、割れんばかりの大歓声である。これまでも様々に趣向を凝らしたステージで観る者を驚かせてきたMUCC。その類稀なる企画力と遊び心を、ひしひしと感じさせてくれる瞬間だ。これで場内のヴォルテージを一気に上げると、続く“ENDER ENDER”ではオーディエンス一丸のヘッドバンキングを誘引。さらに“Ms. Fear”をアグレッシヴに叩きつけ……と『THE END OF THE WORLD』の冒頭3曲をそのままプレイする展開で、壮絶な狂騒感にまみれたMUCCの現在地をまざまざと見せつけていく4人であった。

MUCC@国立代々木競技場・第一体育館
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“謡声(ウタゴエ)”“World's End”などのライヴアンセムで弾けるような高揚感を描きつつ、その後もセットリストの随所でヴィヴィッドな輝きを放つのは、『THE END OF THE WORLD』の楽曲群だった。逹瑯のエモーショナルな歌心が鮮やかに花開いた“Tell me”。ミヤのフレーズとYUKKEのビートが濃密に絡み合い、燃え上がるようなグルーヴを生み出した“999-21st Century World-”。“WateR”からメドレー的に繋いだ“369-ミロク-”では、昭和歌謡のエッセンスをふんだんに盛り込んだディスコティックなメロディで会場を上下左右に揺さぶっていく。中でも圧巻だったのは、メディアに躍らされる世の中の現状を皮肉交じりに綴った“メディアの銃声”を経て、天井に歌詞が映し出される中で披露された“JAPANESE”。20人余りのストリングス隊とともに奏でられるシンフォニックな音像は、「批判」「罵倒」「中傷」などの痛烈なリリックと相まって、美しさと残酷さが渾然一体となったカオティックな情景を描いていた。「終わり」をテーマに掲げ、壊れゆく世界の中でもポジティヴに歩む意思をパワフルに綴った『THE END OF THE WORLD』。そのアルバムを貫くメッセージが、この日最高にダイナミックかつエモーショナルに提示された名演だった。

MUCC@国立代々木競技場・第一体育館
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終盤に入ると、バラエティ豊かな楽曲で場内を翻弄。眩いサウンドで宇宙空間へと突き抜けた“ニルヴァーナ”、明るくポップなメロディで会場中のタオルを振り回させた“風と太陽”、ヘドバン炸裂の殺伐とした熱狂を生み出した“咆哮”……と1曲ごとにテイストの異なる世界観を描き出し、オーディエンスの歓喜を多方向に押し広げていく。アルバムごとに音楽性もスタイルもガラリと変えながら、結成から17年にも及ぶ長い月日を力強く歩んできたMUCC。ひとつの枠に収まらない自由でチャレンジングな活動の末に、こんなにも振れ幅の大きな高揚感が生み出されていると思うと、感慨深い。そして鮮烈なシンセ音と逹瑯のグロウルにまみれた“Mr. Liar”で絶頂を迎えると、渾身のバラード“死んでほしい人”へ。すべての客席に事前に用意されたリストバンド型ライトが青一色に点灯し、ストリングスの音色と逹瑯の朗々としたヴォーカルによって幻想の彼方へと導かれたところで、本編終了となった。最新アルバムのラストに収録されたこの曲。そこから続く「終わりの始まり」の物語を示唆するように、メンバーが去った後には「FUTURE」の文字が出現し、オーディエンスの万感の拍手を誘っていた。

アリーナ後方のサブ・ステージで行われたアンコールでは、事前のファン投票でリクエストの多かった楽曲を次々と披露。これにはオーディエンスも狂喜乱舞するばかりで、サブ・ステージ両脇に設けられたスタンディング・エリアでは随所でサークルモッシュが出現していく。中でも痛快だったのが、イントロとともに大きなどよめきが上がった“大嫌い”。ステージ四隅からスモークが濛々と噴き上がる中、「キライキライキライ……」と連呼するギラついたサウンドと会場一丸のオイ・コールが炸裂し、ネガポジ反転のカタルシスを生み出していた。4thシングル『負ヲ讃エル謳』のカップリングとして発表され、知る人ぞ知るこの曲。それが人気投票で選ばれるあたりに、バンドとファンの絆の深さを感じたのは私だけではないはずだ。

MUCC@国立代々木競技場・第一体育館 - FUJI TELEVISION KIDS ENTERTAINMENT,INC.FUJI TELEVISION KIDS ENTERTAINMENT,INC.
メイン・ステージに戻ってのダブル・アンコールでは、メンバー各々が半年間を振り返るトークを披露。オーディエンスをバックにした記念撮影を経て、お祝いゲストとしてフジテレビの子供番組『ポンキッキーズ』シリーズのキャラクター・ムックが登場! 7カ月間を無事に闘い終えたMUCCへの表彰セレモニーと「終戦宣言」が執り行われる。その後は“前へ”“MAD YACK”をアグレッシヴに叩きつけ、“蘭鋳”では「最後のジャンプでひとつになろう!」とオーディエンス全員座っての一斉ジャンプを慣行。ラストは9月10日にリリースしたばかりの新曲“故に、摩天楼”の強くしなやかなメロディが天空へと駆けのぼり、紙吹雪とカラフルな光がファンタジックな彩りを添える中、華やかなフィナーレを迎えた。

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アンコール含め全28曲3時間強。とても長丁場なステージだったけど、一瞬たりともダレを感じさせない濃密な時間だった。それもこれも、自由度の高い音楽性のみならず、パフォーマンスにおいても自由なアイデアを駆使して、ファンを楽しませることに全力を注ぎ続けるMUCCのエンタテインメント精神の賜だと思う。フォーク/ヘヴィメタル/ダンスミュージックなど多彩なジャンルを融合させたバンドサウンドを磨きつつ、アッと驚くような企画も毎年のように実施して、独自の人気とスタンスを築き上げてきたMUCC。その真価が発揮されたと同時に、今後のキャリアがますます楽しみになる充実のアクトだった。(齋藤美穂)

■セットリスト
01.THE END OF THE WORLD
02.ENDER ENDER
03.Ms. Fear
04.G.G.
05.謡声(ウタゴエ)
06.ガーベラ
07.World's End
08.Tell me
09.999-21st Century World-
10.WateR~369-ミロク-~WateR
11.未完の絵画
12.メディアの銃声
13.JAPANESE
14.ニルヴァーナ
15.Hallelujah
16.風と太陽
17.咆哮
18.Mr. Liar
19.死んでほしい人

(encore)
20.オルゴォル
21.空と糸
22.ホリゾント
23.流星
24.大嫌い

(encore2)
25.前へ
26.MAD YACK
27.蘭鋳
28.故に、摩天楼
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