先月にはジャスティスが新木場STUDIO COASTをフルハウスにしたかと思えば、デジタリズムはSHIBUYA-AXに満員の観客を集めた。昨年ボコボコと表舞台に登場したダンス・アクトのなかでも人気・実力ともにトップを張るデュオ2組を見比べてあらためて思うのは、「ニュー・レイヴ」というキーワードとともに十把一絡げにされがちなこの2アクトが、まったく違う性格と意味合いをもっている、という事実だ。どっちがいいとか悪いとかいう話ではない。端的に「違う」のだ。
で、両者を較べたとき、際立つのはデジタリズムというユニットが醸し出すキャッチーさである。そして、ライヴとなればそのキャッチーさが、アルバムの5割増であらわれるのだ。大きな身体を揺らしてシンセ・パッドをぱかぱか叩きながら「トーキョー」と叫ぶイシちゃんと、ひょろひょろした身体をくねらせて歌うジェンスくん。見た目からしてキャッチーである。そして代表曲“ポゴ”に象徴されるように、その楽曲の中心にはメロディと歌がある。その竹を割ったような明快さとポピュラリティがデジタリズムの特徴であり武器なのだ。ダフト・パンクがそうだったように、ダンスとかロックとかを超越したポップ・フィールドにそのサウンドを響かせる可能性を、彼らはもっている。
そう考えると今日のライヴはちょっと意外な展開だった。“ポゴ”を含めた歌モノを序盤に固め、後半はストイックに「踊らせる」展開。シンプルでありながら力強いビートが、最後まで途切れることなくフロアを盛り上げていく。その全体のなかで最大の飛び道具だったはずの“ポゴ”が、彼らのなかで過去のものになりつつあるという印象を受けた。ライヴにおいてそれはもはや主役ではなく、ひとつの(もちろん重要な)フックとしての機能をまっとうしていた。さらに意外だったのがオーディエンスがしっかりとその展開に付いていっていたことで、むしろ前半より後半のほうが盛り上がっていたくらいだった。もちろん本質的なキャッチーさ、フレンドリーさは何ひとつ変わっていないのだけれど、デジタリズムの新しい側面が見えてきたようなライヴだった。(小川智宏)
デジタリズム @ SHIBUYA-AX
2008.02.19