山崎まさよし@東京文化会館 大ホール

山崎まさよし@東京文化会館 大ホール - all pics by 岩佐篤樹all pics by 岩佐篤樹
格調高い音楽ホールに、美しく野趣溢れる楽曲群が咲き乱れるような、濃密な3時間であった。メジャーデビューから20周年にあたる今年、4/24の広島から全9公演のスケジュールで繰り広げられている「Yamazaki Masayoshi String Quartet “HARVEST”」。公演タイトルどおり、服部隆之アレンジの弦楽四重奏を加えたステージであり、これまでに行われてきたライヴシリーズ「LIVE SEED FOLKS」に対してこの20周年には豊かな実りの「収穫」を迎えている。なお、今後の日程も残されているため、以下少々の楽曲表記などネタバレを含む本文にはご注意を。

昨年のスペシャルライヴにも迎えられていたストリングスカルテットは、室屋光一郎(1st Violin)、伊藤彩(2nd Violin)、榎戸崇浩(Viola)、堀沢真己(Cello)という顔ぶれだ。“僕はここにいる”は山崎による流麗なギターアルペジオの弾き語りにストリングスがナチュラルに添えられてゆく一方、“月明かりに照らされて”では榎戸&堀沢のソリッドな低音リフと艶やかな歌声がスリリングに拮抗するといったふうに、アレンジの妙と強烈なライヴ感を際立たせながらステージは進行してゆく。逆に言えば、ときに前衛的といってもいいぐらいのストリングスアレンジさえ受け止める、山崎作品の基礎体力の高さを痛感させられるのだ。

山崎まさよし@東京文化会館 大ホール
「そこんとこ、大理石なんですね。御影石かな? 御影石じゃないか。御影石は墓石だもんね(笑)」と、挨拶の合間に緊張感を解きほぐすようなユーモアも絡めて、キャリアからの厳選ナンバーや名カヴァーを届ける。木村大作監督・撮影の映画『春を背負って』の主題歌として書き下ろされた“心の手紙”は、CG技術が進歩し続ける現代に、監督もキャストも全員で実際に過酷な山に入って撮影が行われたことに感銘を受けた、と語りながら、その鮮烈な感動が音像から立ち上るピアノ弾き語り+ストリングスの熱演になった。

山崎まさよし@東京文化会館 大ホール
途中、約15分の休憩を挟み、第2部開幕というタイミングで山崎があらためてカルテットを呼び込むと、列を成して登場する4人の最後尾に、ひょっこりと顔を覗かせる作曲家・編曲家の服部隆之が。サプライズで来たので、楽屋で照明も消して隠れていた、と笑いを誘う(山崎本人には、スタッフ経由でバレていたらしい)。そして以前のライヴ(『WITH STRINGS』として音源化もされている)で服部が手掛けたアレンジの難易度について談笑しつつ、「山崎まさよしの曲は、どこかクラシックっぽい」「ここ、カラヤンも立ったんだよ! 名門中の名門だよ!」(服部)といった言葉も飛び出してライヴが再開されたのだが、この直後のディープな音楽世界へと一気に引き摺り込むような選曲とアレンジ、実験性とダイナミズムは本当に凄まじかった。

山崎まさよし@東京文化会館 大ホール
ストリングス隊が率先してクラップを打ち鳴らすモータウン調の“Flowers”や、タンバリンのループに乗せられてオーディエンスが客席から立ち上がり歌声を上げる“ドミノ”と、本編終盤は賑々しくパワフルなパフォーマンスで熱気が立ち籠めてゆく。「てなわけで、皆さん立たせてしまいましたね(笑)。ホント、20周年で、幸せな思いをさせてもらってます」と告げる山崎まさよしである。アンコールで披露されたトロピカルなヒューマン・ビートボクシング入りの“セロリ”では、一輪の花が一瞬のうちに二輪に増えるマジックも飛び出して大喝采。「さっき、カラヤンって何やっけ?って(笑)」とオチも付いて、最後には笑顔のスタンディングオベーションを浴びるのだった。(小池宏和)
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