eastern youth@TSUTAYA O-EAST

eastern youth@TSUTAYA O-EAST - all pict by 平川啓子all pict by 平川啓子
人生大楽勝、なんていうムードは微塵も感じられないけれど、絶対に負けない3人の男たちがいた。僕が初めて彼らを観た15、6年前とまったく同じように、全身全霊の爆音パフォーマンスを繰り広げてみせた。最新作『ボトムオブザワールド』リリースを前に、23年の歳月、この至高のトライアングルの一角を担って来た二宮友和(Ba)は、「極東最前線/巡業2015〜ボトムオブザワールド人間達〜」終了後にバンドを脱退することを表明した。全国18本のツアーは、この渋谷公演と、6/6の札幌公演の2本を残すのみである。札幌公演を楽しみにしている方は、以下の演奏曲表記含む内容にご注意を。

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凛としたピアノジャズのSEと大喝采に包まれて姿を見せた3人は、さっと位置について新作の冒頭を飾る“街の底”へ。堰を切ったように溢れ出すヘヴィ&ハードコアな轟音の中、吉野寿(Vo・G)による前のめりでパンキッシュなトーキングブルースが迸る。涼しい表情とは裏腹に、丸太の如き腕で撃ち抜くようなビートを刻む田森篤哉(Dr)。高速のベースフレーズをブンブンと振り回す二宮。この3人の音はいつでも、鳴り出した瞬間にそれが特別なものであることを理解させる。吉野が爪先立ちになって身を捩らせるようにしながら叫ぶ“鳴らせよ 鳴らせ”以降、新作曲と歴代の名曲群がほぼ半々というセットリストで、パフォーマンスは続いていった。

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新作曲“イッテコイ カエッテコイ”は、ライヴで聴くとその凄味が倍加するナンバーだった。どこに行っても重い空気が毎日のしかかってくるような生活感を、容赦無しに音像化する3人。吉野の歌にベッタリと張り付くのではなく、絶妙な距離感でそれぞれがひた進むような二宮のハーモニーも素晴らしい。序盤はMCもなくガンガン演奏を進めるので感傷に浸る暇もなかった(というか、3人が与えなかった)が、これほどまでにストイックな新作曲を3人でプレイする機会も限られているのかと思ったら、少しグッと来てしまった。一切の甘えや宥め賺しを排した歌があるからこそ、“ナニクソ節”といった反骨精神の爆発力も際立つというものだ。照明でステージが朱に染まる“男子畢生危機一髪”から、“青すぎる空”、“雨曝しなら濡れるがいいさ”という必殺曲連打の合間、吉野と二宮はじっくりと語らうように、音を響かせ合う。

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そして“踵鳴る”でこの日最速の爆走を繰り広げた後、二宮はふいに「こんばんはー」と言葉を放った。会場内から「パパー」と飛ぶ幼い声に「やかましい。ウチの子供なんですけどね(笑)」と照れくさそうに応えつつ、道玄坂で通りがかった男のホットパンツが、何やらパンッパンに詰め物がしてあるみたいだった、と。「詰め物が飛び出してきたら・・・? 分かりますね? その手で“直に掴み取れ”!」とユーモラスに煽り立てて楽曲に繋ぐ。吉野はここで、ご機嫌にヒゲダンス風のステップを踏むのだった。3人で轟音のオーケストラを奏でるような“万雷の拍手”がまた美しい。「今日は本当にありがとうございました! 俺たちeastern youth、旅はまだまだ続くんだ!」と吉野が言い放ち、”荒野に針路を取れ”の勇壮なパフォーマンスで締め括られるのだった。

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アンコールに応えると、「あのう、3人で一緒に歩いてきたんですけど、ちょっとあっちの方行くわ、じゃあ、って」と、再び語り出す二宮。「もともと目的があって一緒に歩いてたわけじゃなくて、面白そうだからってだけで……その頃は、お金になるなんて思ってなかったし。どっちの道が正しいとかじゃなくて、こっちに行ったら肥溜めにボチャンってなるかも知れないですけど、それぞれの顛末を楽しんで頂ければな、と思います」。文字にしてしまうと、軽い印象を与えてしまうかも知れない。でもそれは、言葉にして伝えられることはそれ、というものであって、何よりもこの日の、圧巻の音像と歌声で塗りつぶした本編の後に、放たれた言葉であった。ダブルアンコールにも応えて“夜明けの歌”を披露すると、田森も二宮の方を示すように掌をかざして、拍手を贈る。二宮は「ありがとうございました」と手を振り、投げキッスを見せて、笑顔で去っていった。(小池宏和)
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