初日なので、セットリスト等のネタバレはなしで……って、考えたらアルバム1枚分・13曲しか持ち曲がないので、ネタバレもクソもないのだった。全曲やるに決まってるし。前述の初ライヴの時はカイ・ギョーイ(奥田民生)とジューイ・ラモーン(岸田繁)、それぞれの曲をやったりもしていたけど、今回はそれはないと思うし。ない方がいいとも思うし。とりあえず、せめて曲順くらいは伏せて書くことにします。
「もう半分だ」
それぞれ時計を見るオーディエンス(私も)。時刻は19:30。フロアのあちこちからあがる「えーっ!!」という声。そりゃそうだ、このままいくと20:00には終わっちゃうんだから。
本人たちも「さすがにそれはちょっとどうなのか」と思ったようだが、そこでカイ・ギョーイが講じた策は「休憩!」だった。「トイレ行って来い!」「尿をとってこい!」(医者なので)、などと、それまでピシッと締まったステージをくり広げていた己を恥じるかのように、積極的にぐだぐだ方面にもっていくのであった。結果、二度のアンコールを終えて3人がステージを去ったのは20:48でした。
②それぞれ自分の得意技を出せるし、それを受け止められる相手と一緒にやっている。
③ただし、得意技を出すだけでは許されない。逆に、自分以外のふたりと一緒にやることによって、自分が普段やっていないことや、かつてはやっていたけど今はもうやっていないことや、将来的にはやるかもしれないけど今のところやっていなかったことなどを、やることになる。というか、やらざるをえなくなる。しかも一緒にやる相手がすごいので「とりあえずやってみた」だけではすまない。高いクオリティを要求される。
という3つが、僕の考えた、サンフジンズのアルバムがすさまじくよくなった理由なのだが、ライヴでも同様。これまでフェスやイベントで短い尺のステージしか観たことがなかったので、ワンマンだとそれをよりいっそうじっくりと楽しめる。
特に③。サンフジンズが、お互いの才能を認め合うすぐれたミュージシャンが集まって自分のいいところを出しつつ相手のいいところを引き出す、というだけのバンドではなく、「この普段閉まってる引き出し開けろ!」「昔この引き出し開いてたよな、開けろ!」「こんな引き出しおまえが持ってるかどうか知らないけどとにかく開けろ!」みたいなバンドであることがよくわかった。
というかそもそも、それぞれがいいところを出し合って楽しみたい、というバンドだったら、カイ・ギョーイとジューイ・ラモーンが曲によってベースとギターを持ち替えたりしないで、最初からベーシスト入れるだろう。ふたりとも本来ギタリストなんだから。
ケン・シューイに関しても、僕はそれなりにいろんなところでドラムを叩く彼を観てきたつもりだが、こんなドラムを叩いているのは、このバンドでだけだ。
そういえば、この初日はドラムセットまでそうだった。これまで見たこともないドラム。バスドラがいつもよりでかくて、しかも楕円形に歪んでいる上に、ライドシンバルのスタンドがバスドラ上部からニョキッと生えていたりするシロモノ(写真参照)。ケン・シューイとジューイ・ラモーンがtwitterで写真をアップしているので、興味をお持ちの方は、そちらもご参照ください。
終演後に本人にきいたら、「民生さんが買ったんです。ドイツのドラムで、空輸で今日直接チッタに届いて、『これを使え!』って」とのこと。なんかすごいビンテージのようです。事故でひしゃげちゃったドラムというか、子供が描いたドラムセットの絵というか、そんなようにも見えますが。
・アルバムに入っていない新曲、1曲あり! このツアーと同じタイトルの“過注射”という曲です。
・二度目のアンコールで急遽もう1回やった2曲以外に、最初から2回やることが決まっている曲が1曲あります。1回目と2回目で、カイ・ギョーイとジューイ・ラモーンがギターとベースを持ち替えます。
・中盤のMCにて。ジューイ・ラモーン、ここ川崎まで京急(くるりの“赤い電車”が昔CMで使われて今でも品川駅の電車接近音に使われている)で来た、と言ったのを受けてカイ・ギョーイ、「このふたり、いつも電車の話ばっかりしてるんだよ。(ケン・シューイに)今日はなんで来たの?」と振ったところ、「クルマで」というお答え。「おまえいつも電車電車言ってて! 電車で来いよ!」。場内、大笑い。なお、いつも、ジューイ・ラモーンとケン・シューイは電車の話、カイ・ギョーイとジューイ・ラモーンはカープの話、カイ・ギョーイとケン・シューイは地球三兄弟の話(特に桜井秀俊の悪口)をしているそうです。
・“ハリがないと”でジューイ・ラモーン、その場でサビに合わせた振付を思いつき、オーディエンスに強要。みんな素直に、というか大ノリで従い、爆笑の渦になる。たぶんこれ、今後のツアーで毎回やるのではないかと思う。やってほしいとも思う。
・アンコールでのカイ・ギョーイのあいさつ。
「よくこの長いオペに耐えましたね。みなさんの生きたいという気持ちが、僕達を疲れさせました。このあとミーティングをやって、今後のツアーに臨みたいと思います。よいお年を!」
そのミーティングで今後のツアーがどうなるか、楽しみにしています。(兵庫慎司)