いや、違う。着ぐるみとかゲスト多数登場とか、そういうのはなくて、いかにシンプルでコンパクトな形で、その集大成を実現するか、みたいなライブだった。映像(device girlsってほんとセンスいい。電気のことをわかりすぎるくらいわかっていないと作れない映像)。レーザー光線。瀧の、被りものみたいな派手さはないけど確実に常に変な衣裳。ビールを飲みながらやっているせいで、ライブが進むにつれてどんどん、ご陽気に・言いたい放題に・むちゃくちゃになっていく、卓球のMC。特に後半、瀧に話を振って、それに瀧が答えている間にもう次の話をはじめる、というシーンが何度もあって、瀧がキレてて、笑いました。それから、「冴島奈緒!」と口走った直後にシーンとしたフロアを見て「あれ? また俺だけ?」とおっしゃっていましたが、大丈夫です、少なくとも私には届きました。私にしか届いていなかったかもしれませんが。って思ってる奴、この日のAXにはたくさんいたと思う。ってことは届いてるのか。
で、新しいアルバム2枚からの曲は、わりと前半に固めて、中盤から後半は、歴代の代表曲のオンパレード。しかもそれだけじゃない。電気の暗黒時代の曲であり、ライブでは封印されていた(と僕は思っていた)『KARATEKA』収録の“スネークフィンガー”をやったのには驚いたし、個人的に大好きなんだけど地味な曲なのでライブで聴けることはもうないであろうと思っていた『ORANGE』収録の“スコーピオン”をやってくれたのは、すごくうれしかった。
アンコールまで含めて全34曲、2時間50分。上記の通り、選曲、最高。しゃべり、面白い。映像、すごい。レーザー光線、効果ありまくり。あらゆる意味で、ライブハウス・サイズで観れる電気のライブとしては、もう究極だったと思う。楽しくない瞬間が、片時たりともなかった。
あえて言うなら。インストの曲がもっとあっても、お客は充分付いてきたと思いますよ、新しいアルバム2枚=『J-POP』と『YELLOW』の曲をもっとやってもよかったですよ、ここまでサービスに徹したセットリストにしなくても大丈夫ですよ、卓球さん瀧さん。と思ったけど、きっと、本人たちがこういうモードなんだと思う。サービスでやったっていうよりも、こうしたくてしているんだと思う。
あとひとつ。電気って、「ライブっていうのはこういう形態でこういうふうにやるもの」っていう前提に頼らずに、ゼロから自分たちのライブのやりかたを作ってきて、そして今こうなっているんだなあ。それがすごいなあ。と改めて思ったけど、考えたら人生の頃からそうだったんだった。バックトラックと卓球の歌、他の数人はステージで奇怪な格好で奇怪な動きをしているだけ、というのを初めて観た時「こ、これライブっていうの?」ってびっくりしたもんなあ。あ、今「バックトラック」って書いたけど、まだそんな概念など音楽シーンにない時代の話です。
1987年、京都BIG BANGでのことです。もう21年前かあ。うわあ。(兵庫慎司)