ポーター・ロビンソン&マデオン @ Zepp DiverCity

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ポーター・ロビンソン&マデオン @ Zepp DiverCity
ポーター・ロビンソン&マデオン @ Zepp DiverCity
昨年10月、共作曲“Shelter”を発表し、ジョイント・ツアーに臨んだUSのポーター・ロビンソンとフランスのマデオン(“Shelter”の製作経緯と日本独自のコンピレーション『シェルター:コンプリート・エディション』についてはこちらの記事を→http://ro69.jp/blog/ro69plus/155985)。

2016年秋から北米で34公演、年明け2月から欧州で3公演を行ってきた「シェルター・ライヴ・ツアー」が、いよいよ今回のプロジェクトとも縁深い日本に上陸し、一夜限りのパフォーマンスが繰り広げられた。才能豊かな2人のアーティストが、アイデアと技術を惜しみなく注ぎ込むショーだ。

ステージ上手側にキャップを被ったマデオン、下手側にニット帽のポーター・ロビンソンという形でそれぞれ機材を前に位置につき、まず届けられたのはさっそくの“Shelter”だ。細やかなヴォーカル・チョップを絡めたUKのマット・ゾーによるリミックスへと移行する。もちろんサンプリングは使用するものの、ほぼ全編がライブ演奏のパフォーマンスである。マデオンってこんなに歌上手かったっけ、と驚かされるほどの、滑らかな美声も放たれる。

ポーター・ロビンソン&マデオン @ Zepp DiverCity
ポーター・ロビンソン&マデオン @ Zepp DiverCity
背景いっぱいのスクリーンには美しく刺激的なCGアニメーションが映し出され(でも、“Shelter”のビデオは部分的な使用に留まった。あれは独立した作品ということなのだろう)。マデオン“Pay No Mind”の華やかなエレクトロ・ディスコに応じて映像もダイナミックに展開すると、ポーターが美麗な鍵盤プレイを奏でる傍で、マデオンがパーカッションのスティックをタクトに見立てて楽しそうに振っていたりする。“Sad Machine”ではオーディエンスに歌声を預けた後、ポーターも負けじとヴォーカルに臨むのだった。

ポーターの“Flicker”は、ボカロのヴォーカル・リフレインが大歓声を誘い、日本の車窓風景を加工したMVが用いられるのだけれど、楽曲はヘヴィなベースミュージックとして響き渡る野心的なアレンジだ。マデオン“Finale”の強烈にバウンシーな曲調が、ポーターのエモーショナルな歌を運ぶというコラボも見事である。今回のステージでとりわけ白眉だったのが、真っ赤な砂嵐の映像を背負い、マデオンの“ID”や“Imperium”といった凄まじいダンス・トラックにポーターの楽曲がマッシュアップされてゆく一幕。エレクトロニック・ミュージックで、どこまでも豊かな感情表現を生み出してしまう2人の、遥かな高みで成立した共同パフォーマンスだ。

ポーター・ロビンソン&マデオン @ Zepp DiverCity
ポーター・ロビンソン&マデオン @ Zepp DiverCity
アタック感の強い“Divinity”でキラキラとテープが降り注いだ後、ダンス・フロアに向けた2人のビート・プレイの妙技が加速してゆく。緻密なサウンドにシンクロして映像が変化し、“Shelter”のメロディをモチーフにした荘厳なエレクトロ・シンフォニーが押し寄せるさまは圧巻だ。「俺のお気に入りヴァージョンの、マデオン“Beings”だよ」とポーターが紹介して自らこの曲を歌い、本編終盤は華々しいことこの上ない“Icarus”の一撃が放たれる。そしてヴォコーダー演奏を取り入れ、和の柔らかく美しい色彩のアニメーションを背負った“Goodbye To A World”が胸を締め付けるのだった。

アンコールでは、ポーターのキーボード伴奏のみで再び“Shelter”が披露されるのだけれど、作曲とマデオンの歌声の素晴らしさが際立つ名演だ。そして“Language”がフロアを最後の盛り上がりへと導くと、それぞれに感謝の言葉を交えて挨拶し(ポーターの「タノシカッター!!」という言葉の響きは、真に深い感慨を受け止めさせるものだった)、ステージは幕を閉じた。デビュー前からインターネットを通じ交流を深めていた2人が、それぞれのキャリアの交点に素晴らしい作品とパフォーマンスを残したということ。そこには、日本文化のインスピレーションもあったということ。新しい時代のポップ・ミュージックを支える「出会い」のドラマに、我々も立ち会ったのだ。(小池宏和)

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