2016年秋から北米で34公演、年明け2月から欧州で3公演を行ってきた「シェルター・ライヴ・ツアー」が、いよいよ今回のプロジェクトとも縁深い日本に上陸し、一夜限りのパフォーマンスが繰り広げられた。才能豊かな2人のアーティストが、アイデアと技術を惜しみなく注ぎ込むショーだ。
ステージ上手側にキャップを被ったマデオン、下手側にニット帽のポーター・ロビンソンという形でそれぞれ機材を前に位置につき、まず届けられたのはさっそくの“Shelter”だ。細やかなヴォーカル・チョップを絡めたUKのマット・ゾーによるリミックスへと移行する。もちろんサンプリングは使用するものの、ほぼ全編がライブ演奏のパフォーマンスである。マデオンってこんなに歌上手かったっけ、と驚かされるほどの、滑らかな美声も放たれる。
ポーターの“Flicker”は、ボカロのヴォーカル・リフレインが大歓声を誘い、日本の車窓風景を加工したMVが用いられるのだけれど、楽曲はヘヴィなベースミュージックとして響き渡る野心的なアレンジだ。マデオン“Finale”の強烈にバウンシーな曲調が、ポーターのエモーショナルな歌を運ぶというコラボも見事である。今回のステージでとりわけ白眉だったのが、真っ赤な砂嵐の映像を背負い、マデオンの“ID”や“Imperium”といった凄まじいダンス・トラックにポーターの楽曲がマッシュアップされてゆく一幕。エレクトロニック・ミュージックで、どこまでも豊かな感情表現を生み出してしまう2人の、遥かな高みで成立した共同パフォーマンスだ。
アンコールでは、ポーターのキーボード伴奏のみで再び“Shelter”が披露されるのだけれど、作曲とマデオンの歌声の素晴らしさが際立つ名演だ。そして“Language”がフロアを最後の盛り上がりへと導くと、それぞれに感謝の言葉を交えて挨拶し(ポーターの「タノシカッター!!」という言葉の響きは、真に深い感慨を受け止めさせるものだった)、ステージは幕を閉じた。デビュー前からインターネットを通じ交流を深めていた2人が、それぞれのキャリアの交点に素晴らしい作品とパフォーマンスを残したということ。そこには、日本文化のインスピレーションもあったということ。新しい時代のポップ・ミュージックを支える「出会い」のドラマに、我々も立ち会ったのだ。(小池宏和)