POLYSICS×Base Ball Bear 「POLYMPIC 2017」/渋谷CLUB QUATTRO

POLYSICS×Base Ball Bear 「POLYMPIC 2017」/渋谷CLUB QUATTRO - POLYSICS All photo by 酒井麻衣POLYSICS All photo by 酒井麻衣
POLYSICSBase Ball Bearによる「POLYSICS結成20周年記念2マンTOUR!!! POLYMPIC 2017」の渋谷CLUB QUATTRO公演1日目。この2組と言えば、昨年ベボベからギタリスト・湯浅将平が脱退し、その後開催された彼らの一大イベント「日比谷ノンフィクションⅤ」にポリのハヤシ(G・Vo・Syn・Pro)がサポートギタリストとして出演したのが記憶に新しい。酸いも甘いも分かち合った両者によるこの日のライブは、「長年にわたりバンドを続けるということは一体どういうことなのか?」というテーマが自然と思い起こされるような、非常に奥深く、そしてたまらなくエモーショナルな空間だった。

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先攻のBase Ball Bearが1曲目に選んだのは“changes”。《すべてがいま変わってく すべてが始まる/深呼吸ひとつ、合図にして 駆け出してく》というリリックが歌われるこの曲は、まるで20周年ですら一つのスタート地点であることを対バン相手に告げているかのように響きわたり、初っ端から感激させられる。
ワンマンライブかと思うくらいの熱い盛り上がりを見せた“LOVE MATHEMATICS”を経てMCへ。小出祐介(Vo・G)が昨年の「日比谷ノンフィクションⅤ」のことやポリとの対バンが8年ぶりであることを話し、「僕らも昨年結成15周年を迎えましたが、バンドを続ける中で、お互い泥水をすすったり、砂利を食ったりした時があると思うんですよ。でも最高の瞬間が訪れたりもするわけで」とバンド活動の意義についてしみじみと語る。後輩らしい真面目なMC……かと思いきや、締めは今年2月にリリースされたポリの再録ベストアルバム『Replay!』の“Tune Up!”のミュージックビデオについて、「まさか20年目で(ハヤシが)車になるとはね……。さすがに乗り物になろうっていう発想はなかったです。僕らも5年後は乗り物になろうと思います」とコメントし、オーディエンスをどっと笑わせた。

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バンドが3人体制になってからの楽曲である“すべては君のせいで”は、歯切れの良い小出のカッティングやサポートギタリスト・弓木英梨乃の幻想的で艶めいた光のカーテンのような旋律でリスナーを心酔させ、今の彼らが絶好調であることを告げる。小出の低音ボーカルの色香が漂うデビュー曲“GIRL FRIEND”を決め込んだ後は、ラストまで駆け抜ける怒涛の灼熱メドレーへ。

お立ち台に上がった関根史織(B・Cho)がど太いベースソロを轟かせ会場を一気に沸点へもっていった“十字架 You and I”、堀之内大介(Dr・Cho)が「渋谷クアトロ! まだ行けますか! 夏夏夏夏夏夏夏!!!」と煽り、ヘドバンしながら獅子奮迅の勢いでドラムを叩き狂った“逆バタフライ・エフェクト”、小出と弓木が10cm開いているか開いていないかくらいの超至近距離で向かい合いギターのユニゾンを繰り広げ、いろんな意味で観客の胸をめちゃくちゃ高鳴らせた“SHINE”とかまし、ラストはインディーズ時代からのナンバー“CRAZY FOR YOUの季節”を倍速でプレー! なんだかこの日のベボベのサウンドは、今までのどのライブのそれよりも骨太に聴こえた。もしかしたらそれは、メンバー脱退を乗り越えさらなる発展を遂げるバンドの強靭さが自ずと表れているということだけではなく、次に烈火のごときライブを見せてくれるであろう先輩バンドへの、リスペクトの精神が演奏に宿っていたからかもしれない。とにかく聴く者を圧倒する、凄絶なライブに仕上がっていた。やりきった表情の小出が、「引き続き、POLYSICSでお楽しみください!」と粋なバトンパスを見せ、Base Ball Bearはステージを後にした。

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そのバトンをしかと受け取ったPOLYSICSは“WAKE UP,POLYSICS!”で堂々登場し、一発目から“SUN ELECTRIC”を投下する。ヤノ(Dr・Vo)が鳴らす高速キックが腹の底にドカドカあたり、疾うに茹だった観客からはもうこの段階でダイバーが出現。続く“Let's ダバダバ”と“MEGA OVER DRIVE”では、ハヤシが自身のスマホを取りつけた自撮り棒を持ち出して客席をバックに自撮り&ショルダーキーボードを観客に弾かせるというパフォーマンスを披露し、どんだけファンと戯れたいねん! と思わず心の中でツッコんでしまうほどフレンドリーな一面を覗かせる。

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挨拶としてお馴染みの「トイス!」合戦のあと、ハヤシがちょっと照れくさそうに「歓声がうるさすぎて自分のギターの音が聴こえない(笑)!」とぼやく。それに対しフミ(B・Syn・Vo)が「今それ(言う)?」と返すと、「……まぁ、20年経ってもこれだけの歓声が上がるっていうことだよね!」とポジティブシンキングに方向転換し、観客からこれまた盛大な拍手喝采が送られる。
その後披露された“Baby BIAS”では、間奏でフミがハヤシにハイキックを食らわそうとする場面が。20年目のステージで改めてバンド内の力関係が示され、会場は先のMC以上に大いに沸き立った(がんばれ、ハヤシ)。

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ベボベの「日比谷ノンフィクションⅤ」のリハーサルで、真面目な感じで挨拶をしようとしたら即座に特撮の話を振られたというMCを挟むと(ハヤシ・小出・堀之内は大の特撮ファンである)、“WEAK POINT”、“DNA Junction”、“Code4”といったバンドの歴史を遡る楽曲が炸裂。フミのメロディアスでぶっといベースが「踊れ」と言わんばかりにリスナーの身体を鞭打ち、ヤノの一切テンポがブレないテクニカルなドラムがしっかりとキメを作り出し、ハヤシの刻むようなリズムギターが観客をはずむように踊らせるという、3人のロックバンド然としたサウンドが際立っていたのがとても印象的だった。

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ライブはいよいよ終盤に入り、耳をつんざく稲妻のようなギター&地を揺るがすようなリズム隊の轟音が鳴り響く“URGE ON!!”へ。バイザーを投げ捨て、ド頭からシャウトに近い声量で歌い上げるハヤシとパンク調の超ハイテンポなビートに、フロアからはマグマから湧き出るあぶくのようにダイバーが続出する。他の客もヌーの大群のように前に押し寄せ、そこにハヤシが背中からダイブ! オーディエンスに支えられたままギターを遮二無二弾き狂う姿はまるで、会場に生まれた狂熱に全身をじっくりと浸しているかのようだ。

本編ラストの“Buggie Technica”は、演奏し切ったハヤシが「まだまだやれる」と言わんばかりの闘志剥き出しの目をしていたのがインプレッシブだった。あの表情はきっと、「こんな凄まじいライブは二度と観られないかもしれない」とオーディエンスに思わせるくらいの、一回性の強い、まさに闘いのような壮絶なライブを、20年にも渡って繰り広げてきたバンドマンだからこそ見せられるものだと思う。メインが終了になってもなお戦闘モードでい続ける彼のスタンスに、ただただ心が震えた。

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アンコールは“ドモアリガトミスターロボット”と“Electric Surfin' Go Go”。どちらもシンセやボコーダーやギターの爽やかな音色が駆け抜ける楽曲で、観客も腕を挙げて縦に横に揺れ、ハッピー感満載でライブは締めくくられる。……でも、不意にこんなことを思う。この景色は、決して当たり前のものではないんだよな――と。
冒頭にBase Ball Bearの脱退の件を述べたが、POLYSICSにもまた、同じ困難に直面した過去がある。2010年のカヨ卒業後には、バンドは一度活動休止に至った。しかしそこからすぐに3人体制で復活し、現在までの20年間、音楽を鳴らすという選択を採りつづけている。この日の熱狂、歓声、爆笑、多幸感もきっと、無数の選択肢の中から彼らがひたすらに音楽を選び取ってきたからこそ生まれたものなのだ。……そう思ったら、この2曲の爽快感がやけに目に染みてきて、思わず涙を浮べてしまった。このサウンドが鳴り響いている会場の幸せな空気をすべて吸い込んで、胸の奥にしまっておきたいような気持ちにもなった。……まったく、笑いも熱狂も尖鋭も愛らしさもメカも人間性もエモさも全部揃っているなんて、デパートのようなバンドだな、ポリは。

演奏後はハヤシもフロアも名残惜しそうに「トイス!」を乱れ撃ち、興奮が冷めやらぬままライブは幕を下ろした。試練を乗り越え音楽という糸をひたすらにたぐって来た2組の屈強さが、それぞれの音の中で炎のような光輝を放つ、なんともまばゆい空間だった。(笠原瑛里)

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●セットリスト
Base Ball Bear
1.changes
2.LOVE MATHEMATICS
3.すべては君のせいで
4.GIRL FRIEND
5.十字架 You and I
6.逆バタフライ・エフェクト
7.SHINE
8.CRAZY FOR YOU の季節

POLYSICS
1.WAKE UP,POLYSICS!
2.SUN ELECTRIC
3.Let’s ダバダバ
4.MEGA OVER DRIVE
5.Young OH! OH!
6.Baby BIAS
7.Digital Coffee
8.Funny Attitude
9.WEAK POINT
10.DNA Junction
11.Code4
12.Rocket
13.シーラカンス イズ アンドロイド
14.Tune Up!
15.URGE ON!!
16.Hot Stuff
17. Buggie Technica
EN1.ドモアリガトミスターロボット
EN2.Electric Surfin' Go Go

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