熱気と歓喜で満たされた幕張メッセの大空間の中、アンコールで3万2千人のオーディエンスに語りかける藤原基央(Vo・G)の、充実の一夜の歓びを丁寧に伝える言葉に、惜しみない拍手喝采が広がっていく――。
まだまだツアーは続くので、曲目や演出含め内容についての記述はここでは最小限に留めさせていただくが、「今回のツアーは結構、昔の曲もやってて、『あれ? この曲何だろう?』みたいな感じの人も多いと思うんですけれども……もしよかったら『新曲?』っていう感じで聴いてくれたらいいなと思います(笑)」と直井由文(B)がMCで話していた通り、結成から21年に及ぶバンドヒストリーから幅広い年代の楽曲に(シングルコレクション的な視点とは異なる形で)ひとつの道筋を貫き通すようなセットリストを構築してみせたことは、この日のアクトの大きな特徴と言えるだろう。
今回のツアーに冠せられた「PATHFINDER(探求者)」というタイトルそのままに、楽曲が求めるサウンドを丹念に追い求め磨き上げていくその姿勢が、既存曲の数々にも今この瞬間の輝度とダイナミズムを与えて、幕張メッセを終始熱いシンガロングへと導いていく――一音一音に進化の息吹が宿る、珠玉の音楽空間がそこにはあった。
抑制の効いたシンプルなアンサンブルを、藤原の歌のリズムが力強く躍動させてみせた“記念撮影”。升秀夫(Dr)の繰り出すタイトなビートとともに、生命の手応えを壮大な多幸感あふれるアンセムに結実させた“アンサー”。増川弘明(G)の奏でるアルペジオの中、バンドの歩んできた道程と4人の絆、さらなる音楽の冒険への意志を決然と歌い上げた“リボン”……新たなサウンドスケープを編み上げているこれらの楽曲が、今回のツアーの揺るぎない軸となっていることを、この場にいた誰もが感じたはずだ。
「PATHFINDER」ツアーは来年2月10・11日のツアーファイナル=さいたまスーパーアリーナまで計29公演にわたって開催される。そして、その旅路の先に広がるBUMPの音楽世界の未来図は、これまで以上に眩く豊かなものになるはずだ――という抑え難い期待感を抱かせるには十分すぎる、至上のステージだった。(高橋智樹)
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