●セットリスト
1. VS
2. HALO
3. D.N.K
4. MEMENTO
5. 声
6. ロストジンクス
7. パラノイア
8. Survivor
9. SUMMER DIVE
10. The Chicken Song
11. ルーキー ルーキー
12. HANDS
13. YOU
14. 夢花火
15. KICKASS
16. NEVER ENDING STORY
17. LIVER
18. DAY×DAY
19. だいじょうぶ
20. もっと光を
(アンコール)
EN1. 灯せ
EN2. THANKS
2017年11月に始まったBLUE ENCOUNTの「TOUR2017-2018 ~VS~」は、名古屋・大阪・東京の3ヶ所でバンド史上初のリクエストワンマンと2マンをそれぞれ一夜ずつ繰り広げるツアーだ。対バンには9mm Parabellum Bullet(名古屋)、sumika(大阪)、My Hair is Bad(東京)が招かれた。ここでは、年明け1発目のライブとなった東京・新木場スタジオコーストのリクエストワンマンをレポートしたい。特設サイト上に寄せられたリクエスト曲の集計結果は、各公演でかなり違う内容になっているのも面白かった。
即完となったフロアを前に、アメコミ風タッチのオープニングムービーが届けられ、田邊駿一(Vo・G)、江口雄也(G)、辻村勇太(B)、高村佳秀(Dr)の4人が位置につくと、痛快な和風ギターリフから最新シングル曲“VS”が放たれる。TVアニメのテーマ曲でありながら、ライブでの即効性もヤバい。“HALO”や“声”といったインディーズ時代からのレパートリーは、4人のサウンドがそれぞれくっきり明瞭に浮かび上がりながら緊密に繋がる今のブルエンの表現力のおかげで、こんなにも鮮やかな感情の色彩を伝える楽曲だったのか、とあらためて思い知らされる。
「名古屋から始まって、47都道府県……」、「まわってない、まわってない!」という田邊と江口の楽しそうな掛け合いも挟んで、リクエスト集計の20位中第19位に滑り込んだという“パラノイア”は、名古屋では突発的に演奏して大失敗したと言うものの、今回はヘヴィ&ストレンジなグルーヴにオーディエンスの声も加わって見事だ。その直後には、高村のソリッドなビートの上で辻村の熱いスラップと江口の鮮烈なギターフレーズが交互に繰り出されるセッションから“Survivor”に飛び込んでゆく。バンドのコンビネーションをきっちりと見せつける展開がかっこいい。
いかにもフロアが揉みくちゃになりそうな曲調なのに、MVのおかげで一面にタオルが振り回される真冬の“SUMMER DIVE”は、3公演のリクエストでいずれも上位に食い込んでいた。質実剛健な“ルーキー ルーキー”や、「あんたも歌っていいんだよ!」と告げながら晴れやかに届けられた“HANDS”。そして、じっくりと奏でられる“YOU”や“夢花火”の静謐さすら味方につけるような名演には大きな喝采が湧き上がっていた。花火の打ち上げ音のように響き渡る高村のビート1発にさえ、物語を感じる。緩と急、静と動、抑と揚を自由自在に行き来する、濃密なライブ体験である。ゴリッゴリの“KICKASS”からのキラーチューン連打は圧巻で、全身全霊のレスポンスを要求する“だいじょうぶ”の後、田邊はこんなふうに語っていた。
「このリクエストワンマンをやる前は、不安でした。ていうか、不安だからリクエストワンマンをやろうとしたんだ。試してた、ごめん! お前らで曲決めてさ、セットリスト作ってさ、全部あんたのせいにしようとしてた。正直に言うよ。ごめん! ごめん!」、「どの曲が1位でもいいんだよ。どの曲が20位でも、どの曲が50何位でも、1万位でもいいんだよ。どんな曲でも、あんたの前で歌えているのがいい」。そして、“もっと光を”の歌い出しでは「今までありがとな。紹介します! あんたを誇りに思う新しいバンドが目の前にいます! BLUE ENCOUNTです、よろしくどうぞーっっ!!」と高らかに叫ぶのだった。
アンコールでは、テンション高い物販隊長・高村のコーナーの後、ニューアルバム『VECTOR』(3月21日リリース)とそれに伴うワンマンツアー開催を発表。ツアー期間中の12月に、厳しいレコーディングをこなしてきたことも語られていた。そして、TVドラマ『オー・マイ・ジャンプ!~少年ジャンプが地球を救う~』のエンディングテーマに起用された新曲“灯せ”の、リスナーをグッと掴んで離さないメロディが届けられる。
つまり、表現力を向上させて新章に向かうブルエンだからこそ、コミュニケーションが一方通行になるのは嫌だったのだ。バンドの成長を知るファンとの絆を再確認し、共に新章に向かうために、リクエストワンマンという手続きが必要だったのだ。ブルエンは必ずまた、ロックの面白い景色を見せてくれる。そう確信する新春ライブであった。(小池宏和)
終演後ブログ