凛として時雨/Zepp Tokyo

凛として時雨/Zepp Tokyo - All photo by 河本悠貴All photo by 河本悠貴

●セットリスト
1. Ultra Overcorrection
2. High Energy Vacuum
3. who what who what
4. I was music
5. DISCO FLIGHT
6. Tornado Minority
7. Chocolate Passion
8. a symmetry
9. ten to ten
10. DIE meets HARD
11. Who's WhoFO
12. EneMe
13. abnormalize
14. Telecastic fake show
15. TK in the 夕景
16. #5


会場が暗闇に包まれて最初に鳴らされたのは、無機質かつ機械的なディスコードである。重なっていく音は、轟音そのもの。やがて、緊張感が増したステージにメンバーが登場すると目についたのは、大きく「5」と書かれたピエール中野(Dr)のTシャツ。2月14日にリリースしたアルバム『#5』のリリースツアー「凛として時雨 Tour 2018 “Five For You”」のファイナルステージだ。6月にツアーの追加公演である大阪・フェスティバルホール、東京・国際フォーラムAが控えているものの、ツアーはここで一旦終わりを迎える。

凛として時雨/Zepp Tokyo

青く光る照明の下で刹那、訪れた一瞬の静寂の後ライブは始まった。“Ultra Overcorrection”だ。TK(Vo・G)と345(Vo・B)の歌が、序盤から深く絡まり合っていく。“High Energy Vacuum”を終え、「凛として時雨です」とTKは静かに囁いた。ここからはあっという間、言葉通り「ノンストップ」だ。

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“Chocolate Passion”で、己と同じ空間にいる人間たちの理性をどんどんぶっ放していく3人。それを証明するのは、フロアから突き出される拳の数とあちこちで発生するモッシュピットである。しかし、“ten to ten”で一気に凍てつく空間。静と動を性急に行き来するのは、凛として時雨にとっては必然的な表現のひとつで、常識という概念が存在するならば、このバンドの音楽はそれとは大きくかけ離れたものだ。オープニングに鳴らされたあの音も、単体で聴いてみれば理解するには少し難しく思えるが、こうやってライブで鳴らせばエネルギーの密度は圧倒的なものと化して、頭がクラクラするほど気持ちの良い音へ姿を変える。

凛として時雨/Zepp Tokyo

TKと345がステージから姿を消すと、マイクを握ったピエール中野は「ツアーファイナルだからみんなでXジャンプをやりたい」と言い放った。満員のフロアと交わされる「We are」「X!」という全力のコールとジャンプ。続けて「日本のアンセムと言われている“どんぐりころころ”をBGMにドラムソロをやろうと思います」と言い、予告通り童謡“どんぐりころころ”に合わせてドラムを叩く。

凛として時雨/Zepp Tokyo

ポップな時間から凛と時雨のライブに切り替わる瞬間、張り詰めた空気が一気に立ち込めた。ここから“DIE meets HARD”、“Who's WhoFO”、“EneMe”と、『#5』のナンバーを連続で爆走させていく。1stアルバム『#4』収録の“TK in the 夕景”で奏でられるのは、粘っこいギターリフとピエール中野の胸をえぐるようなドラムの上に乗せられる、345の艶めかしい声とTKのシャウト。それは次でオーラスを飾った“#5”でも同じだった。あまりにも狂気じみているその音は、必ず誰かに寄り添っている。結成から15年の間で抱えた理想と現実のギャップ、日常への葛藤、果てのない孤独、そしてこれまで歩いてきた道への誇り。これらは一度も切れることなくストーリーとして繋がっていた。それをフラッシュバックさせるようにして、“TK in the 夕景”から“#5”という流れが組み込まれたのだ。全てを鳴らし終え、真っ白に照らされたステージを晴れやかな顔を浮かべ無言で去って行くメンバーの姿とそこへ送られる拍手に、『#5』というアルバムでまたバンドの鮮やかな未来への道が広がったのだと思った。(林なな)

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