sumika/日本武道館

sumika/日本武道館 - All photo by 後藤壮太郎All photo by 後藤壮太郎

●セットリスト
01. MAGIC
02. Lovers
03. カルチャーショッカー
04. 1.2.3..4.5.6
05. ソーダ
06. イナヅマ
07. いいのに
08. enn
09. Summer Vacation
10. 明日晴れるさ
11. まいった
12. ほこり
13. KOKYU
14. マイリッチサマーブルース
15. ふっかつのじゅもん
16. ペルソナ・プロムナード
17. フィクション
(アンコール)
en1. 下弦の月
en2. 雨天決行
en3. 「伝言歌」


sumikaの初の武道館ワンマンは、予想していた以上に感動的で温かい気持ちにさせられたライブだった。「"Starting Caravan"」と銘打った全国ツアーは、すべてホール会場でのライブで、東京公演は日本武道館の2デイズ。7月1日、その2日目のライブに足を運んだ。今年の5月に結成5周年を迎えたばかりのsumikaの、まさにこれまでの集大成や成長を見せつけるようなベストなセットリストが組まれ、1本のライブの中で、複数の多様なクライマックスが用意されているような、どこをどう切り取っても音楽の豊かさと喜びに溢れたステージだった。

sumika/日本武道館

メンバーが1人ずつステージに登場し、片岡健太(Vo・G)がアコギを抱えスタンドマイクの前に立つと、いきなり“MAGIC”でライブはスタート。会場中で驚きと歓喜の声が上げる。まさに開始から1秒、会場中の誰もが迷うことなくsumikaワールドへと滑り込んだような、マジカルな瞬間だった。いきなりのトップギアに驚いていると畳み掛けるように“Lovers”へ。反則だと言いたくなるくらいの連続技。メンバーもめちゃめちゃ楽しそうな表情で演奏している。このツアーのセットリストは、今振り返って見てみても、sumikaがその力を出し惜しみすることなく、100の力で持っているものをすべて出し切るようなものだったと思う。冒頭は、前述の2曲に続き“カルチャーショッカー”、“1.2.3..4.5.6”、“ソーダ”、“イナヅマ”と、すべてがキラーチューンと言ってもよい楽曲を6曲も続けて繰り出してきたのである。相当な集中力を要するはずだが、こちらにそんなことを考えさせる余地も与えないほど、素晴らしいバンドアンサンブルで聴き手の心をぐいぐい引っ張っていく。1万人のオーディエンスとステージとの距離感は、このオープニングですっかりゼロになった。割れんばかりの大歓声がそれを物語る。

sumika/日本武道館

ベストな選曲で臨むということは、作品をリリースするごとに「最高」を更新していくsumikaゆえ、最新作『Fiction e.p』の楽曲ももちろん演奏される。“いいのに”ではsumikaの武器のひとつでもある、歌声の見事なハーモニーをじっくりと聴かせ、小川貴之(key・Cho)がリードボーカルをとる“enn”へと続いたところも、このライブでのひとつのクライマックスだった。小川の声に片岡のコーラスが寄り添い、先ほどとはまた違ったハーモニーを聴かせてくれる。荒井智之(Dr・Cho)も、まるでそのハーモニーを体感しているように、とても気持ち良さそうにリズムを刻む。続く“Summer Vacation”ではハンドマイクの片岡が、ステージいっぱい左右に移動しながら、すべての客席の風景を見回すようにして、極上のミディアムバラードを聴かせてくれた。

「ホールでのライブならでは」ということで、観客全員を座席に座らせて「リラックスして聴いてください」と、“明日晴れるさ”、“まいった”、そして片岡がアカペラで歌い出し、小川のピアノがやさしく寄り添うようなバージョンで演奏された“ほこり”へと。“ほこり”はsumikaが一番最初にリリースしたミニアルバムに収録されている曲で、その頃にはまだバンドに加入していなかった小川のピアノが、今、その曲に新たな息吹を吹き込んでいるという、1曲の中にsumikaのひとつの歴史を見せてくれた瞬間でもあった。

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黒田隼之介(G・Cho)がグルーヴ感たっぷりに“KOKYU”のギターリフを奏で始めると、それを合図に再び観客全員が立ち上がって、片岡が「前半よりさらにギアを上げて、2倍、3倍、4倍、5倍……………15倍くらいまでいきたい! 最強の後半戦、始めます!」と告げた通り、オープニングの怒涛の選曲をも凌ぐかと思わせるほど、ハイパーでアグレッシブな後半へと突入。「最高のライブを作り上げるために、大切なものって何だか知っていますか?」と、“マイリッチサマーブルース”のリズムが刻まれ始めると、客席は秒速でタオルをスタンバイ。片岡は「さすが武道館、察しがいい」とニヤリ。サポートの井嶋啓介(B)のベースも跳ねるような夏らしいグルーヴを生み、ステージのメンバー全員の楽しそうなことといったらない。ぶん回される会場中のタオル。複雑なハンドクラップにも客席は完璧に応えてみせ、大サビではアリーナも1階も2階も全方位から弾けるようなシンガロングが起こる。そのままのテンションで“ふっかつのじゅもん”、さらに「ネットの中の誰かではなく、あなたの心をバズらせにやってきました!」と、最新作『Fiction e.p』から“ペルソナ・プロムナード”へ。終盤も終盤で、この超絶的な疾走感とプログレッシブなアンサンブルが求められる楽曲をドロップしてくるとは! 黒田のキレッキレのギターソロも圧巻。この曲の演奏後に片岡は「もうこの記憶だけで10年くらい生きていけそう」と言っていたけれど、この終盤の展開は、ほんとにしばらく忘れられそうにない。最後は、またもや最新作からの“フィクション”。武道館を最高にあたたかい空気にして本編を終えた。

sumika/日本武道館
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アンコール1曲目も『Fiction e.p』から、黒田のギターが疾走する“下弦の月”。まるで、この後もまだまだライブは続くかのように、フレッシュなバンドサウンドだ。片岡は「1曲目からそうですが、気が緩んだら涙があふれてしまいそう」と言って、sumika初期の名曲“雨天決行”へ。sumikaとしてのスタートとも言えるこの曲を、ライブのこのタイミングで披露するということの意味――とても丁寧な演奏が、その思いをしっかりと伝えてくれた。鳴り止まない拍手は、ステージと客席と、お互いの気持ちがしっかりと通じ合ったことの証だ。最後は“「伝言歌」”。《伝えたい》のシンガロングが、これまで聞いたことがないほどの力強さで会場中に響いた。演奏後には「愛してます!」と客席に向かって叫んだ片岡。そして客席から「ありがとう!」の声が飛ぶと、「こちらこそ、ありがとうですよ!」と返す。これがsumikaの言う「両思い」なのだ。どこにも、どちらにも嘘がない。

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もう一度言う。どこをどう切り取っても最高のセットリストだった。sumikaが5年間で歩んできた道のり――決して順風満帆ではなかったけれど、メンバー、スタッフ、そして多くのリスナーと共有した日々をぎゅっと濃縮してみせたような、とても感動的なライブだった。どんな会場であろうとも、そこで予想を上回るステージを見せて、さらに、確実にそれを超える「次」を体現してきた彼らだからこそ、今日のこの日の武道館公演につながったのだ。これからも、sumikaが見せてくれる新しい景色を楽しみにしていたいと思う。

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ちなみに7月30日(月)発売の『ROCKIN’ON JAPAN』では、別冊で今回の武道館ライブの密着レポート(写真も満載です)と、メンバー全員によるツアー振り返りインタビューを掲載します。そちらもお見逃しなく!(杉浦美恵)
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