KICK THE CAN CREW/日本武道館

KICK THE CAN CREW/日本武道館 - All photo by 西槇太一All photo by 西槇太一

●セットリスト
1. Keep It Up
2. 全員集合
3. なんでもないDays
4. GOOD TIME!
5. スーパーオリジナル
6. タカオニ2000
7. カンケリ01
8. 千%
9. SummerSpot
10. イツナロウバ
11. クリスマス・イブRap
12. LIFELINE
13. ユートピア
14. TORIIIIIICO!
15. 神輿ロッカーズ
16. 地球ブルース~337~
17. マルシェ
18. sayonara sayonara
19. アンバランス
(アンコール)
EN1. 完全チェンジTHEワールド
EN2. 住所 feat. 岡村靖幸



KICK THE CAN CREW/日本武道館
前日に「908 FESTIVAL 2018」が開催された日本武道館での、KICK THE CAN CREWによる「現地集合〜武道館ワンマンライブ〜」。過去の「908 FES」出演や昨年の「復活祭」といった武道館でのステージはあったものの、ワンマンとしては2002年以来約16年ぶりとなる。

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先頃には、これまたフィジカルシングルとしては約15年ぶりとなる『住所 feat. 岡村靖幸』をリリースしたキックだが、開演前から熊井吾郎(DJ・MPC)が往年のキック・ナンバーの数々で場内を温めた今回のステージは、ニューシングルのカップリング曲“Keep It Up”で幕を開けた。ファストなブレイクビーツで一気にカチ上げるこの曲は、しかしLITTLE、MCUKREVAのマイクリレーにかかると、エキサイティングでありながらも不思議と鉄壁の安心感を抱かせるパフォーマンスになってしまう。

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「今日やるならこっちだろう!」と“全員集合”の弾けるフックを「現地集合!」に差し替えるぐらいは朝飯前。LITTLE(赤)、MCU(白)、KREVA(黒)とそれぞれに全身コーディネイトした衣装で満場のオーディエンスの視線を引きつけ、前半戦は“千%”に込められた《経て からの ここ》、つまりキックの歴史を振り返るコンセプトがとりわけおもしろかった。

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広がりのあるシンセサウンドのレイヤーが美しい“タカオニ2000”は、終盤にビートを切り替えてインディーズデビューのシングル曲“タカオニ”(一部のみ)へと繋がり、オリジナル版“カンケリ”(3人が初めて音源化したコンピ収録曲)から“カンケリ01”へと移行してみせる。ものの数分間というパフォーマンスがトリガーとなって、触れる者の記憶の引き出しをばんばん空けまくる、そんな音楽の力を見せつける時間になった。

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“千%”の前にはシンガーのYURIが呼び込まれ、力強いソウルボーカルでオーディエンスを魅了する。“千%”のイントロ部分は、レコーディングされた彼女のコーラスのテンポを上げたものだそうで、つまりこれは《経て からの ここ》というレコーディング過程の再現だ。初めてこの曲のMVに触れたときと同じかそれ以上に、胸を熱くさせる。本格的復活を果たしてからのキックは、「新旧の自分たちの楽曲をどんなふうに使えばライブがおもしろくなるか」という部分に、とても工夫を凝らしている。

KICK THE CAN CREW/日本武道館
以前からライブでの成功確率が低いとメンバー自身が語っていた“SummerSpot”は、しかし精巧な機械部品のように組み合わされてゆく3人のラップで大喝采を浴びる。アルバム『KICK!』収録曲は、肩の力が抜けているように聴こえても実は非常に高度なスキルが注ぎ込まれていて、ライブの場で触れるたびに舌を巻くことになる。「できたーっっ!! もうやることはやった!(KREVA)」、「(Nintendo)Switch、持って来た?(MCU)」と満足げに楽屋に引き返そうとする2人を、LITTLEが「いやっ……!《まだ何も終わっちゃいないぜ》!!」と引き止めて“イツナロウバ”に持ち込むあたりも、もはやお家芸である。

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熊井吾郎が緩急自在のドラムソロのようにMPCを打ち鳴らすインタールードを経て、衣装を変えた3人は“LIFELINE”や“ユートピア”といったキックのエモーショナルな一面を見せてゆく。前者は個人的に久々にライブで触れて感慨深かった。KREVAは「みんなと楽しむために音楽を作ってるんだな、と思います」と語り、例によってMCUは喋り出しで水を差されながらも「最初ステージに出て来たときに、みんなのいい顔が並んでるじゃん。緊張なんか吹っ飛んじゃった!」と告げる。そしてLITTLEは、ジャンルや世代の異なるアーティストがブッキングされる近年のフェス出演について「俺たちのタオルを持ってる人がいたりすると、すげえ力になります」と感謝の思いを伝えていた。

KICK THE CAN CREW/日本武道館
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ライブ終盤は、「これだけでもフェス1本分くらい」と予告されていた怒涛のパーティチューン連打だ。“地球ブルース~337~”でMCUが言い放つ《来年で46です》には、年々オーディエンスのどよめきが大きくなっておもしろい。飲み会マスター面目躍如の“マルシェ”ではテープキャノンが放たれ、本編ラストには“アンバランス”がモラトリアム混じりのハートに勇気をもたらす。MCUはライブ中に「みんな、変わらねえなあ」と決め台詞のように告げていたが、それでも経てきた年月のぶんだけ、数々のメッセージがズシリと響くステージであった。

KICK THE CAN CREW/日本武道館
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アンコールの最後に披露された“住所 feat. 岡村靖幸”では、残念ながら岡村ちゃんとの生コラボは次の機会に持ち越しとなったけれども、チルウェイブ風の柔らかな陶酔感を誘うこのディスコチューンの中で、オーディエンスの盛大な歌声を集めて賑々しくフィニッシュする。言葉の力で酔わせ、踊らせ、痺れさせる、このキャラ立ち3本マイクの磁場は今回も特別だった。個人的に今度はぜひ、『KICK!』収録曲や『GOOD MUSIC』の時期の楽曲が多めに選曲されたステージも観てみたい。(小池宏和)

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