緑黄色社会/マイナビBLITZ赤坂

緑黄色社会/マイナビBLITZ赤坂 - All photos by 安藤みゆAll photos by 安藤みゆ

●セットリスト
1.Alice
2.恋って
3.Bitter
4.視線
5.またね
6.ひとりごと
7.サボテン
8.regret
9.Re
10.大人ごっこ
11.君が望む世界
12.Never Come Back
13.アウトサイダー
14.リトルシンガー
15.真夜中ドライブ
16.あのころ見た光
(アンコール)
EN1.want
EN2.始まりの歌


「もっと広い世界を見てみたい、みんなと一緒に。今日このマイナビBLITZ赤坂のステージに立てて、本当に嬉しい。こんな素敵な景色を見ることができて贅沢だなあとも思う。でも、もっともっと大きな場所で、みんなと一緒に夢を叶えていきたいです」
本編終盤、満場のフロアを見回して万感の想いを伝える長屋晴子(Vo・G)。その言葉と視線は、珠玉の作品とツアー完走の達成感よりも、さらなる「これから」の道程へ向けて沸き立つ冒険心に満ちていた――。

緑黄色社会/マイナビBLITZ赤坂

メジャー第1弾作品となるミニアルバム『溢れた水の行方』(11月7日リリース)を携えて全国7都市を巡る、緑黄色社会のワンマンツアー「溢れた音の行方」のファイナル:マイナビBLITZ赤坂公演。ソールドアウトの熱気と期待感を、長屋の伸びやかな歌声と卓越したプレイアビリティで痛快なまでに凌駕して、観る者すべてを高揚の彼方へと導く、どこまでもマジカルなアクトだった。

緑黄色社会/マイナビBLITZ赤坂

白や透明のバルーンに彩られた舞台に長屋晴子/小林壱誓(G・Cho)/穴見真吾(B・Cho)/peppe(Key・Cho)がサポートドラマー:比田井修とともに登場。開演SEの時点で巻き起こっていたフロア一丸のクラップの熱量を、1曲目の“Alice”でなおも高めてみせる。

あらゆるメロディとリリックにあふれんばかりの生命力と輝きを宿らせる、長屋の唯一無二のボーカリゼーション。そんな長屋の歌のポップ感に絶対的な信頼を置きながらも、いや信頼を置いているからこそ、実験精神もアグレッシブなダイナミズムも自由闊達に楽曲の中で炸裂させてみせる圧巻のクリエイティビティ――。
「音楽は/バンドはどこまでも楽しくなれる」をそのまま体現するかのような緑黄色社会ならではの表現が、シャッフルナンバー“恋って”では熱いシンガロングを呼び起こし、ダンサブルなビート感が印象的な“Bitter”では一面のハンドウェーブを繰り広げ、BLITZの空間をスリリングなまでの歓喜の上昇気流へと巻き込んでいく。

緑黄色社会/マイナビBLITZ赤坂

メランコリックなオルタナバラード“視線”、朗らかな表情と切迫感が交錯するミディアムナンバー“サボテン”など『溢れた水の行方』の楽曲を随所に配していたこの日のアクト。
さらに、「新曲持ってきました!」(穴見)と未発表の新曲“ひとりごと”も披露。ゆったりとしたリズムの中でソウル/ファンク/AOR/レゲエがカラフルに咲き乱れながら、オーディエンスの感情をひとつひとつその音の中に解き放っていくようなポップの開放感が、その歌と音像には確かにあった。

緑黄色社会/マイナビBLITZ赤坂

「初めて来たよ、ここ。すごく広いね! こんなに来てくれるなんて……本当にありがとうございます!」と長屋が呼びかけた後、“regret”、“Re”、“大人ごっこ”と1stフルアルバム『緑黄色社会』の楽曲を立て続けに披露。
4人それぞれが作詞や作曲を手掛け、それぞれのバックグラウンドを織り重ねながら極彩色の音世界を構築している緑黄色社会。その一方で、長屋詞曲の楽曲によるこのパートの3曲は、小林/穴見/peppeの表現力に身を委ねて己の内面に迫り、その歌によって聴く者の心の奥底に寄り添っていく、というバンドのもうひとつの側面をくっきりと浮かび上がらせていた。

緑黄色社会/マイナビBLITZ赤坂

「最高です東京! あなた方、最強だよ!」(小林)、「みんなが、曲を歌ってくれるのよ。みんなが思ってる以上に、こっちのステージにはすごい声が届いてて」(peppe)、「ツアー中は日常でもずっとお客さんの顔が浮かんでて。『これからの緑黄色社会、もっとこうしていこう』っていろんなことを考えたツアーだった」(穴見)とメンバーそれぞれの喜びと感慨を語ったところで、“君が望む世界”からライブはいよいよ終盤へ向けて加速していく。

緑黄色社会/マイナビBLITZ赤坂

“Never Come Back”のハイブリッド&ミステリアスな質感のサウンドから、“アウトサイダー”の長屋の歌がひときわエモーショナルに空気を震わせたところへ、《僕は僕のために生きて 僕のために歌うよ》という“リトルシンガー”のフレーズが、目映いくらいの強烈なポジティビティとともに鳴り渡る。
“真夜中ドライブ”のディストーションと清冽なピアノが、長屋の艶やかな歌声と乱反射し合いながら爽快なまでの疾走感を描き出す頃には、BLITZは12月下旬とは思えないほどの熱気で満たされていた。

緑黄色社会/マイナビBLITZ赤坂

「今日でツアーは終わってしまうんだけど。本当の意味での、私たちの『溢れた音の行方』はこれからどうなっていくんだろう?」と自問しながら、長屋は冒頭に記した言葉を決然と語っていた。「もっと広い世界を見てみたい」と。
《予測はできない明日に手を伸ばして/僕ら今を生きてる》――本編ラストの“あのころ見た光”が、緑黄色社会というバンドの無限の未来を照らし出すように鮮烈に響いていた。

緑黄色社会/マイナビBLITZ赤坂

アンコールでは「さっき泣きそうになっちゃったんだよね、“あのころ見た光”とかで、みんながすごく声を返してくれてて」(長屋)と明かしつつ、“want”、“始まりの歌”で最高のツアー大団円を飾ってみせた。
「もっともっと大きくなるから!」と「その先」への決意を語っていた長屋。ポップスタンダード化必至の歌の普遍性と、ポップの限界を押し広げるエッジィな探求精神――緑黄色社会という若き才気への期待感を天井知らずにかき立てる熱演だった。(高橋智樹)
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