THE BACK HORN/日本武道館

THE BACK HORN/日本武道館 - All photo by RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)All photo by RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)

●セットリスト
1.その先へ
2.ブラックホールバースデイ
3.サニー
4.罠
5.ジョーカー
6.ひとり言
7.悪人
8.雷電
9.コワレモノ
10.初めての呼吸で
11.ヘッドフォンチルドレン
12.美しい名前
13.未来
14.Running Away
15.グローリア
16.シンフォニア
17.コバルトブルー
18.刃
(アンコール)
EN1.冬のミルク
EN2.ハナレバナレ
EN3.無限の荒野



THE BACK HORN/日本武道館

そこには素っ裸のTHE BACK HORNがいた。叫ぶ以外に生きる術を持たない人間でも、世界と取っ組み合うように掻き鳴らすだけのバンドでもなく、ありのまま今の音を打ち鳴らす4人。“その先へ”からオーディエンスに歌わせる姿も、“ブラックホールバースデイ”で客席へ駆け寄る影も、孤独な“ひとり言”を一心不乱に叩きつける声も、“コバルトブルー”でまたここからと自らを、みなを鼓舞する鼓動も。そのすべてが今を闘い、今を抱きしめるようなものだった。だからアニバーサリーを祝って終わりではなく、20年歩んできてなお新たな一歩を刻んでいくためのライブでもあった。それがこの「THE BACK HORN 20th Anniversary『ALL TIME BESTワンマンツアー』~KYO-MEI祭り~」のファイナル、武道館公演だったのだ。

THE BACK HORN/日本武道館

「マニアックヘブン」という催しの成り立つこのバンドのリスナーならば、セットリストを見ただけで「“その先へ”から入るのか、“雷電”やばっ、日の丸の下で歌う“刃”最高でしょ」といったことは容易に伝わるはず。武道館だからどうってことも、もはやなかった。当然のようにあのステージを自らのものとしていた。もちろん、研鑽の過程を経たうえで。ただ演出としては、シンプルな舞台設計を基本としながらも、左右と背面に配された大型スクリーン、そこに映し出される映像が楽曲の魅力をブーストしていたり、火柱による特効のすさまじさに「B'zかよ(笑)」とツッコミを入れたくなったりと、「祭り」ならではの要素もあった。

THE BACK HORN/日本武道館

とは言え、やはり咲き誇ったのは20年間で生まれた楽曲そのものである。彼らの足跡を振り返れば、あくまで結果として、「KYO-MEI」の範囲をでっかくし続けてきた道のりだったと思う。
「結成した当初はそのときの自分たちがやりたい音楽──なんで生きてんだろう? とか、どうして悲しみって生まれるんだろう?──そういう気持ちを曲にして、自分たちが救われていたのかもしれません」(松田晋二/Dr)。
「人としてちゃんと生きていこうという力を、THE BACK HORNから、みんなから貰っている気がします。みんなが今日ここまで生きてこれたことを祝福するようなライブを、これからもずっとしていきたいと思います」(山田将司/Vo)。
寂寞とした心の穴があればこそ、ほかの誰かと共鳴できる。自分、あなた、彼ら、社会、そして世界と、人生の巡り合わせのなかでそれぞれに、年輪のような心の絆を紡いできた。それをより強く、より大きく、より確かなものとしてきたのがTHE BACK HORNの楽曲群なのだ。

THE BACK HORN/日本武道館

加えて蛇足だが、音楽的功績にも触れておきたい。THE BACK HORNがいなければ、日本語ロックシーンは少なからず形を変えていた。BLANKEY JET CITYeastern youthの流れを汲む、切なくドラマティックなメロディ。例えば極めてロック的ではない長7度をこのバンドは多用したが、今ではyonigeSIX LOUNGEを始め、若いバンドも普通に使っている。オルタナティブロックを文字通りオルタナティブに更新してきた。妥協なきその姿勢は、誰にでも真似できるものでは決してない。

THE BACK HORN/日本武道館

「KYO-MEI」が生む心の絆……終演後、頭に浮かんだのは、「THE BACK HORNと一緒に前へ進める人生って、すでにめっちゃ幸せだなあ」ということだった。(秋摩竜太郎)

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