2018年内に2作目(通算3作目)となるフルアルバム『Tank-top Festival in JAPAN』をリリースして、1月から本公演23本+追加公演5本(締めくくりは6月のサンリオピューロランド2DAYS!)という日程で繰り広げられている「ヤバイTシャツ屋さん “Tank-top Festival in JAPAN” TOUR 2019」。その前半戦にスケジュールされた、Zepp Tokyo公演2日目の模様をレポートしたい。セットリストを含め本文はネタバレを含むので、今後の公演に参加予定の方はご注意を。ライブ参加後に読んでいただけると、とても嬉しいです。
奇を衒った表現でも何でもなく、ヤバイTシャツ屋さんの真剣さとロックバンドとしての本領が、思い切り前面に押し出されたツアーになっている。楽しいと言えば、もちろん楽しい。でもそれは、ギミックやネタ的な要素がもたらす楽しさではなくて、ヤバTが生み出したロックチューンの数々を真っ直ぐに投げかければ絶対に人々をエンターテインできるし、何よりもそれをやらなければならないという、「ヤバTがヤバTのロックを信じる」精神から始まっているツアーなのだということが、とてもよくわかるステージだったのだ。
万国旗が渡された賑々しい視界のフロア(フェスっぽい)で、ほっこりした登場SEとは裏腹に、切実で刹那的なパンクスピリットを宿した“Tank-top Festival 2019”で急発進する3人。そこからさらにBPMの跳ね上がる“KOKYAKU満足度1位”にオーディエンスの威勢の良い間の手が食らいつき、フロアが丸ごと浮き上がるように視界一面がバウンスする“小ボケにマジレスするボーイ&ガール”へと繋いでみせる。以前よりもぐっと野太くワイルドになった気がするこやまたくや(G・Vo)の歌と、甲高くキュートなしばたありぼぼ(B・Vo)の歌が交錯し、それをもりもりもと(Dr・Cho)の前のめりなパンクビートが後押しする。
ときには自虐的に、ときにはフラストレーションを爆発させるように、笑えるロックソングのテーマを次々に掴み取ってゆくヤバTではあるが、そのバンドサウンドはどこまでも3ピース・パンクの快感原則に忠実だ。ストレートにかっこいいパンクロッカーを気取るのは気恥ずかしいけれど、パンク本来のかっこよさだけは誤魔化すわけにはいかないし、譲れない。そんなジレンマと戦いながら、ヤバTはヤバTでしかありえないロックソングの数々を生み出し、そして今や疾風怒濤のライブを繰り広げている。
もりもとだけがサンリオピューロランドの年間パスポートを所持していないということで「そんなにわかでファイナルやろうなんて」とサンリオキャラクターの山手線ゲームを始めたり、前日のZepp Tokyo初日にしばたが敬愛してやまない道重さゆみが来場(もりもとだけが知っていたらしい)し、終演後いざ対面というときにしばたが2秒で号泣したという様子をこやまが泣きマネで完コピしたりと、ツアー序盤から充実のMCタイムもある。それでもやはり「かっこいいロックバンド、ヤバT」というライブ全体の印象は揺らぐことがない。
「こんなこと言っていいのかわからないですけど、昨日、正直すごい悔いが残ったんですよ。悔いのない時間を積み重ねていきたいと思うんですけど。でも、悔しいときのヤバイTシャツ屋さんは、すごいライブをすると思うんですよ」。こやまがそんなふうに語ってからの、ズシリと胸に響く重厚なナンバー“ゆとりロック”はめちゃくちゃ素晴らしかった。人は誰も自分が生きる時代からは逃れられない。しかし、自分が生きる時代ときっちりケリをつけて進む、そんな名曲。有り余って滲み出るようなその反骨精神は、正真正銘パンクバンドのものに他ならなかった。
あらためてセットリストを見て貰えればわかると思うけれど、この日はライブ序盤からがっつりと盛り上げながら、シングルのリード曲やMVで知られる人気曲を本編終盤やアンコールに固め打ち。ヤバTの底力は、彼らのすべてのロックソングが効力の高さを証明していた。“スーモマーチ”でもオーディエンスを巻き込んでみせたアンコールは、今や「やらんでも成立する」という“あつまれ!パーティーピーポー”を敢えて詰め込んでフィニッシュ。片時も熱を逃がすことのない、全26曲だった。(小池宏和)
●セットリスト
1.Tank-top Festival 2019
2.KOKYAKU満足度1位
3.小ボケにマジレスするボーイ&ガール
4.Universal Serial Bus
5.L・O・V・E タオル
6.メロコアバンドのアルバムの3曲目ぐらいによく収録されている感じの曲
7.眠いオブザイヤー受賞
8.どすえ ~おこしやす京都~
9.Tank-top of the world
10.DANCE ON TANSU
11.リセットマラソン
12.秋
13.ざつにどうぶつしょうかい
14.喜志駅周辺なんもない
15.ゆとりロック
16.とりあえず噛む
17.鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
18.無線LANばり便利
19.ヤバみ
20.かわE
(アンコール)
EN1.I wanna go home
EN2.スーモマーチ
EN3.スーモマーチ
EN4.ウェイウェイ大学生
EN5.ハッピーウェディング前ソング
EN6.あつまれ!パーティーピーポー