JUN SKY WALKER(S)/日比谷野外大音楽堂

JUN SKY WALKER(S)/日比谷野外大音楽堂 - All photo by 平野タカシAll photo by 平野タカシ


●セットリスト
01.全部このままで
02.だけど一人じゃいられない
03.BAD MORNING
04.その日まで‬
05.声がなくなるまで
06.ガラスの街
07.悲しすぎる夜
08.メロディー
09.NO FUTURE
10.PARADE‬
11.いつも二人で
12.アパート
13.さらば愛しき危険たちよ
14.歩いていこう
15.Let's Go Hibari-hills
16.START
17.すてきな夜空
18.ロックンロール☆ミュージック
19.MY GENERATION

(アンコール)
EN01.遠くへ行かないで
EN02.One-Way

(ダブルアンコール)
WEN01.青春


JUN SKY WALKER(S)が30周年ツアーのファイナル公演「30th Anniversary Tour FINAL ~全部このままで~」をバンドの聖地・日比谷野外大音楽堂で開催した。昨年9月からスタートしたツアーは30周年にちなんで、全30公演。その集大成となったこの日、素晴らしかったのは、集まったお客さんが一方的に「バンドの30年を祝う」というムードではなかったことだ。そこは、ジュンスカと同じ時代を生き抜き、それぞれに年を重ねた一人ひとりの人生を讃え合うような場所だった。だからこそ、5年後、10年後、20年後も、この聖地で彼らと何度でも待ち合わせの約束を交わしたくなる、そんなジュンスカらしいライブだった。

JUN SKY WALKER(S)/日比谷野外大音楽堂

大歓声に包まれて、ステージに姿を現した宮田和弥(Vo)、森純太(G)、寺岡呼人(B)、小林雅之(Dr)の4人は、いきなり客席のど真ん中にあるセンターステージへと移動した。360度をお客さんに囲まれ、全員がアコースティックギターを奏でながら歌いはじめたのは、1988年発表のメジャーデビュー曲“全部このままで”だった。四声の美しいハーモニーに合わせて、会場が温かいハンドクラップで包まれると、メンバーは再び客席のあいだをすり抜けてステージへ戻る。宮田が吹くブルースハープのノスタルジックな音色にのせて、スクリーンに映されたカウントダウンが「2019」から「1988」まで辿り着くと、小林が繰り出すスピーディなビートが炸裂したバンド初期の楽曲“だけど一人じゃいられない”や“BAD MORNING ”を皮切りに、90年代バンドブームを牽引したジュンスカの代表曲の数々が惜しげもなく披露されていく。曲間に少しでも隙があれば、会場からはメンバーの名前をよぶ声が次々に湧く。それが「野音が似合うバンド」と呼ばれ、紆余曲折を経た結成30年にしてなおその「聖地」に立つジュンスカへの熱い期待感を物語っていた。

“ガラスの街”ではイントロを間違えて、やり直すというくだりもあったが、そのハプニングすらライブの醍醐味とばかりに味方するのが、かつてホコ天で伝説を生み、ライブハウスを拠り所にした生粋のライブバンド=ジュンスカの底力だ。森が奏でるギターリフが歌うようにメロディに寄り添った“悲しすぎる夜”、ピースフルな景色を描いた音楽讃歌“メロディー”のあと、「これは未来への歌です」と伝えた“NO FUTURE”では、宮田がステージを降り、最前列の柵から身を乗り出して、目の前にいるお客さんに熱い応援歌を捧げた。この日、会場に集まったお客さんの多くは、ジュンスカと共に青春時代を駆け抜けて、大人になった世代だ。それぞれに人生を重ね、バンドの活動があるときも無いときも、その生活の傍らにジュンスカの音楽があったのだと思う。そういう、それぞれの人生が美しく交差したのが、この日の日比谷野音だった。「ここから35周年、40周年、50周年と、みんなと一緒に歩いていけますように」。宮田が熱い願いを込めた“PARADE”では、薄っすらと暮れはじめた野音のステージをカラフルな照明が美しく彩った。人生という名のパレードは、決して戻ることはなく、あらゆる理不尽を受け入れながら、次第にスピードを上げていく。けれど、こんなにも素敵な日があるのなら、そんな人生も悪くないなと思ってしまうのだ。

JUN SKY WALKER(S)/日比谷野外大音楽堂

中盤、いったんメンバーが捌けると、昨年10月に30周年イヤーのスタートとして、自由が丘駅前で復活したホコ天でのフリーライブの映像が流れた。その後、宮田と森がふたりだけでステージに現れて届けたのは、名バラード“いつも二人で”。「解散したあとは仲悪かったんだぜ(笑)。みんなも人生いろいろあると思うけどさ、いまはすげえ仲良しだ」。そんなふうに伝えたあと、宮田はアコギ、森はエレキギターを弾き、1本のマイクに身を寄せ合ってメロディを紡ぐ。ラブソングのようでもあり、バンドとお客さんとの絆も思わせるようなその歌のあと、ふたりが交わしたハイタッチは、この日のハイライトのひとつだった。

JUN SKY WALKER(S)/日比谷野外大音楽堂

かつて、風呂なし、共同トイレ、家賃は2万円のアパートに住んでいたという宮田のエピソードから繰り出した陽性のロックンロール“アパート”からは、いよいよクライマックスに向けて、野音の熱狂は天井知らずに加速していった。イントロ一発で会場から割れんばかりの大歓声が湧きおこった“歩いていこう”から、野性味あふれるバンドサウンドを合図に客席に一気にタオルが掲げられた“Let's Go Hibari-hills”、そして、時代を重ねるごとに様々な意味を帯びた出発の歌“START”へ。曲を重ねるごとにどんどん解放されゆくお客さんの反応を目の当たりにすると、ステージ上のメンバーもまた、目に見えて興奮の度合いが増して、動きが自由になっていく。そんな無邪気さもまた彼らの愛すべきポイントだ。

最後のMCで、「5月なのに、この暑さ。夏の野音は俺たちには無理です(笑)」と切り出した宮田。令和という新しい時代を迎えたことに触れると、「平成は戦争のない、とても素晴らしい時代だったと思います。これからも、みんなと一緒に年をとっていきたいし、平和な日本であるように、僕たちは歌で発信していきたい。今日は“すてきな夜空”の下で、この時代に生まれた喜びを分かち合いながら、みんなと一緒に歌いたいと思います」と伝えると、すでに次の曲が何であるかを悟った客席から大きな喝采が湧くなか、「カモン呼人!」という声を合図に“すてきな夜空”へと突入した。「歌って」と言われるから歌うのではなく、会場からは自然と湧き上がる大合唱。歌詞なんて見なくとも、4人が鳴らす音さえあれば、条件反射のようにメロディを口ずさめてしまう。そうやって作り上げた美しい光景のあと、共に生きてきたいくつもの時代を巡るようなライブを締めくくったのは、ジュンスカの代名詞ともいえる“MY GENERATION”だった。華やかに銀テープが舞うなか、思いっきり助走をつけた宮田の大ジャンプに、会場は割れんばかりの歓声に包まれた。

JUN SKY WALKER(S)/日比谷野外大音楽堂

アンコールの1曲目は、ファーストアルバムに収録のミディアムテンポ“遠くへ行かないで”だった。続けて、30周年を記念したベストアルバムに収録した新曲“One-Way”を披露。《大人》になる自分なんて遥か未来のことだと思っていたあの頃の歌も、大人になったいま、色褪せない《あの日》を懐かしむ歌も、すべて地続きのジュンスカの歌として野音に響きわたっていた。さらにダブルアンコールでは、メンバーが一言ずつコメントをした。「もともと俺はギターのジャーンっていう歌が好きでバンドを組んだけど、気づいたら30年経ってました」(森)、「RCサクセションが好きで、ここで見てた。ここでやれることを毎回うれしく思います」(小林)、「僕は、常に前にいきたい男だけど、30周年いろいろなファンの人たちに表情を見て、たまには後ろを振り返ってもいいなと思いました。また明日から自分探しの旅をはじめます」(寺岡)。そして、最後に宮田が学生時代に組んだバンドで50歳を過ぎたいまもライブをやれる喜びを伝えたあと、「これからも奢らず、誇り高く歌っていきたいと思います」と伝えると、ラストは“青春”で、この日いちばんの大きなシンガロングを巻き起こして、終演。伝説なんて言葉は気安く使いたくはないけれど、過去と未来が交錯した30周年のジュンスカの野音は、紛れもなく新しい伝説を生んだ一夜だった。(秦理絵)
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