LUNA SEA/日本武道館

LUNA SEA/日本武道館 - Photo by 田辺佳子Photo by 田辺佳子


●セットリスト
01. LOVELESS
02. TONIGHT 
03. Rouge
04. END OF SORROW
05. TRUE BLUE 
06. 宇宙の詩 ~Higher and Higher~
07. FACE TO FACE
08. RAIN
Drum Solo(乱序)〜 Bass Solo
09. BLUE TRANSPARENCY 限りなく透明に近いブルー
10. I for You 
11. BLACK AND BLUE
12. IN MY DREAM (WITH SHIVER)
13. TIME IS DEAD
14. ROSIER

(アンコール)
EN01. 悲壮美
EN02. Déjàvu
EN03. WISH
EN04. FOREVER & EVER


「5人がさらに上を目指している想いをこれからもエンジンにして、みんなを新しい世界へ連れていこうと思ってます」。RYUICHI(Vo)が最後に語ったその言葉どおり、LUNA SEAの30周年を記念したメモリアルライブ「LUNA SEA 30th anniversary LIVE -Story of the ten thousand days-」に脈打っていたのは、伝説のバンドではない「今」を生きるバンドとしての鼓動。そしてこれから始まる未来への胎動。決してまっすぐではなかったバンドの30年、繋がってきたファン=SLAVEたちの想いもまるごと抱いて、全員で新たな歴史の1ページを刻んだ奇跡の夜だった。

LUNA SEA/日本武道館 - Photo by 橋本塁Photo by 橋本塁

360度解放されたスタンド席は立ち見エリアも含めてびっしり埋まり、全方位からの期待がステージに注がれるなか、暗転とともに30年を振り返るムービーが流れ出す。LUNA SEAらしく月の満ち欠けになぞらえた映像は、終幕ライブ「THE FINAL ACT」とともに新月となり、ふたたび月は満ちてREBOOT(=活動再開)し、そして現在へ。早速感極まるムードに降り注ぐ、印象的なアルペジオ――1曲目は“LOVELESS”だ。LUNA SEAのメモリアルなライブで幾度となくオープニングを飾ってきた楽曲に、過去のライブを思い出した人も多いはず。さらに続いた“TONIGHT”、“Rouge”、“END OF SORROW”、“TRUE BLUE”と、時代を彩ってきたシングル曲連打には、LUNA SEAとの出会いを思い出した人もいるかもしれない。30年間のどこかで出会い、今ここで邂逅する。そんな楽曲たちが、今の輝きを持って熱を放っていくさまに、武道館は早くもクライマックスかのような盛り上がりだ。今年1月に肺の手術を乗り越えたばかりだというのに、RYUICHIは空間を切り裂くようなのびやかな声と、激しいシャウトでもってオーディエンスを扇動。真矢(Dr)のダイナミックに轟くドラムを背に、SUGIZO(G・Vn)、INORAN(G)、J(B)はそれぞれ花道やバックサイドへ勢いよく飛び出していく。数えきれないほどこのステージに立ってきた貫禄を感じる一方で、最高を更新し続けようとするメンバーの前のめりな姿勢に、一切の妥協はない。

LUNA SEA/日本武道館 - Photo by 田辺佳子Photo by 田辺佳子

TVアニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』のタイアップソングとして発売されたばかりのシングル曲“宇宙の詩 ~Higher and Higher~”は、きらびやかなギターフレーズと骨太な低音が支える広がりのある音像が、まさに音で描く宇宙のようだった。全面をLEDビジョンで覆ったステージに映し出される映像も相俟って、LUNA SEAの世界がどんどん新しい色を見せていく。すると、さきほどまでの歓喜の熱狂から一転、静寂のなか始まったのはプリミティブなリズムセッションだ。なんとINORANがギターを置き、パーカッションで真矢のリズムと絡んでいく。そのまま、見たことのない編成での“FACE TO FACE”。荒ぶるリズムに後押しされ、同じ宇宙でも、まるでブラックホールに吸い込まれるような重低音に武道館が揺れる。渦巻くグルーヴに蹂躙されたあと、今度はSUGIZOがギターを置いてバイオリンを、INORANがアコースティックギターを構え、またも180度違う静謐なムードで、リアレンジされた“RAIN”が3人編成で繊細に紡がれていく。まさに動から静へ、闇に陽が射すようにめくるめく展開に息を呑んだ。ここ数年のLUNA SEAは、こうして過去の楽曲を大胆にリアレンジすることがよくある。レコーディングされることはない、ライブでのみ披露される「今」だけの表現。このアレンジがこの日限りのものだとするともったいないが、それも一期一会のライブに懸ける彼らの情熱の証左に違いない。

LUNA SEA/日本武道館 - Photo by 橋本塁Photo by 橋本塁

恒例のドラムソロにも驚きが待っていた。真矢のドラムの背後に現れたのは、鼓や笛などを構えた囃子。能の伝統的な伴奏のひとつである「乱序」に合わせ、和楽器の音色、そして無音の「間」との共演は、武道館という空間で一層荘厳に響きわたる。能楽師の家系に生まれた彼ならではのパフォーマンスだ。最後は「真矢!」コールで盛り上げたあと、入れ替わりでJが登場し、ベースソロへ。5月から新たにエンドースメント契約を交わしたフェンダーのニューベースを携えるシルエットが目新しい。ドライブ感溢れるフレーズとコール&レスポンスで、武道館を灼熱のライブハウスに変えていった。

LUNA SEA/日本武道館 - Photo by 橋本塁Photo by 橋本塁

後半戦は“I for you”を挟み、一気にラストスパートへ突入する。最新アルバム『LUV』からの“BLACK AND BLUE”に、インディーズ時代の楽曲“TIME IS DEAD”、とどめに最強のキラーチューン“ROSIER”でピークへ。時代を飛び交いながら、まったく時差を感じさせずに楽曲たちが繋がり、“ROSIER”でJがマイクスタンドを投げるパフォーマンスには、もちろん大歓声が巻き起こる。過去を否定することなく歩む王道と、刺激を求めて転がっていく変革。その両輪があるからこそ、今のLUNA SEAは強いのだ。

LUNA SEA/日本武道館 - Photo by 田辺佳子Photo by 田辺佳子
LUNA SEA/日本武道館 - Photo by 田辺佳子Photo by 田辺佳子

アンコールでは、ダブルAサイドの新シングルのもう1曲“悲壮美”が披露された。壮大なスケールの“宇宙の詩~”に対して、ひとりの人間が生きる切なさや哀しみに寄り添うようなバラードが染み渡る。そのあとのメンバー紹介では、INORAN、J、SUGIZOがそれぞれオフマイクの生声で熱くオーディエンスを煽り、続く真矢がそれを適当に翻訳してみせる、という微笑ましい一幕も。さらにSUGIZOとINORANが無茶ぶりな掛け合いでRYUICHIを紹介する姿に、会場が笑顔に包まれた。メンバー同士がボケあったり、ほのぼのする光景も今やお馴染み。これもまた、LUNA SEAのもうひとつの顔だ。そこから“Déjàvu”を挟んで “WISH”のイントロで金色のテープが舞い、満場の多幸感とともに大団円を迎える――かと思いきや、RYUICHIから今年12月21日(土)、22日(日)のさいたまスーパーアリーナ公演決定のニュースが告げられた。喜びに湧く会場に改めてRYUICHIが感謝を述べ、ラストに贈られたのは、LUNA SEAの楽曲のなかでも屈指の抒情性を誇る“FOREVER & EVER”。《限りなく続く この道の先に/求めるその何か あると信じたい》、《何処まで翔べるのか確かめたくて》――バンドの節目節目で歌われてきたこの歌詞は、時に活動休止を、時に終幕を意味してきたこともあった。でも今は、彼らがともに歩んで行く未来をはっきりと指し示して響いている。そして、誰よりも5人がLUNA SEAの未来に夢を見ている。そのあまりにも美しく、優しく、力強い誓いを全員の胸に刻みつけて、メモリアルな夜は幕を閉じた。すでに発表されているとおり、12月にはスティーヴ・リリーホワイトをLUNA SEA初の共同プロデューサーとして迎えたニューアルバムがリリースされる。同時進行でそれぞれのソロワークも活発化している貪欲っぷりも含めて、留まるところを知らない5人の進化の、さらに先にある「新しい世界」が楽しみでならない。(後藤寛子)

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