ユニコーン @ 横浜アリーナ

ツアー『甦る勤労』12本目にして初の東京圏内のライブ、横浜アリーナ。2月27日のシークレット・プレミアム・ライブ@横須賀芸術劇場、3月18日茨城県民会館に続き、このツアーを観に行ってここでレポートするのは3回目だが、まず、観る度に、驚くくらい、飛躍的にライブがよくなっている。そりゃ何本かやればその分こなれてよくなるでしょ、とも言えるが、そういう「こなれる」「慣れる」レベルではない。
いいバンドの場合、全員の音が重なった時に、ただ重なっているとか合っているだけではない、足し算以上のウネリのようなものが生まれることがあって、それをいわゆるグルーヴと呼んだりするわけだが、まさにそれ。バンド・グルーヴが太く、強靭になっている。

元々ユニコーンって、バンド・ブームのバンドたちの中においては「演奏が上手い」と評価されてきたバンドだったが、それはどっちかというと「個々が上手い」「ちゃんと弾ける」「ちゃんと合っている」という意味合いであって、「グルーヴがすごい」とか「ウネっている」とか、そういうニュアンスではなかった。もっとこう、ある意味、無機質な演奏をするバンドだった。1993年、川西幸一が脱退した時のロッキング・オン・ジャパンのインタビューで、民生が「そこが満足できなかったのも脱退の理由じゃないか」みたいなことを言っていたのを憶えている。そこが違うのだ。今はそうじゃないのだ。つまり、解散前のどんな全盛期よりも、今のライブのほうがいいのだ。ある種、別のバンドになったとすら、言ってもいいかもしれない。何故16年ぶりにやることにしたのか、その必然が音に表れている。

なお、今日は、10本目にして初のアリーナ公演。ステージ左右上方にスクリーンが追加されたり、ステージ左右に延びる花道があったり、照明が豪華だったりと、細部はアリーナ仕様になっているが、あと後半で1993年ユニコーン解散前最後のツアーのドラマーを務めた古田たかしが登場し、2曲ツイン・ドラムでプレイするというサプライズがあったが、それ以外の、基本的なセットや映像や衣裳や進行などなどは、横須賀&茨城と同じ。セットリストも同じ。にもかかわらず、横須賀は2時間40分くらい、茨城は電車がなくなるのでアンコールの最後の曲を観れなかったんだけどたぶんそれよりちょっと長いくらい、そして今日は終わって客電が点いて時計を見たら、あと2分で3時間だった。
曲数は同じなのに尺が長くなっているということは、それ以外のしゃべりとかが長くなっているということです。「我々はこのようにグダグダである」ということを、MCで民生が何度も強調していたが(GDGDというそうです)、確かに、演奏が鋭くかっこよくグルーヴがでっかくなるにつれ、それ以外のグダグダっぷりも増大している。

特に阿部B。詳しくは書きませんが、でもファンなら「ああ、あれか!」とすぐわかるでしょうが、彼が中心になるコーナーがある。そこでアドリブのしゃべりがどんどんエスカレートしていって客席もメンバーも爆笑80%&「まだ曲に入らないのかなあ」20%、みたいな状態になるのを、昔体験したことのある方は多いと思うが、その究極みたいなことになっていた。今日は。この先、もっとエスカレートしていくと予想されます。
しまいには、客席に乱入して、ユニコーンと縁の深い音楽評論家、平山雄一氏にマイクを向けていた。16年前に同じ曲をやった時、同じところでマイクを向けようと思ってステージから呼びかけたら、平山氏が途中で帰っちゃってて恥をかかされた、そのリベンジだそうです。「俺は忘れないぜえ!」と叫んでおられました。大笑いでした。

阿部Bだけではない。民生がMCしている時に、うしろでメンバー同士でしゃべっていて、「私語を慎みなさい私語を! 仕事中なんですよ!」と民生が怒ったり、民生がしゃべってたらテッシー&EBIがかぶってしゃべってきて「みんなでいっぺんにしゃべったらわかんないでしょ!」とまた民生が怒ったり、なんだかもう、40オーバーのおっさんたちが、横浜アリーナ超満員の客を前にやることとは思えない状態になっていました。これもまた、今後、さらにエスカレートしていくものと思われます。

このあと東京圏では、5月2・3日にさいたまスーパーアリーナ2デイズ、5月19・20・22日に日本武道館3デイズ。またレポートします。(兵庫慎司)
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする