1月に約3年ぶりにソロ4作目となるアルバム『チェンジング・ホーセズ』を発表したベン・クウェラー。07年以来の単独公演となる。
“ベン・クウェラーのひとり旅”と名づけられた今回の日本公演は、その名のとおり、サポート・バンドを引き連れてではなく、ソロでのパフォーマンス。ギター1本、ピアノ1一台、ハーモニカというミニマムな構成ながら、満員のオーディエンスの心をひきつけてやまないパフォーマンスを披露。クアトロという会場の大きさを感じさせない、親密な空間を作り上げていた。歌い手として、各地をこんなふうに“ひとり旅”していけたら最高に違いないだろう。
今年で28歳になるベンだが、ルックスのファニーな魅力は、デビュー当時からそのまま。フロアからも登場とともに「カワイイ」の声が。赤いチェックのネルシャツ+迷彩柄のTシャツという柄on柄のコーディネイトも、普通ならNGだろうが、この人がやるとなぜかまったく問題なしになっている。
だが、いざギターを手に、歌い出してみれば、ほんわかした雰囲気のなかにも、歌い手としての熱いエモーションが滴り出てくる。“ウォーク・オン・ミー”“コマース,TX”といった初期の楽曲から“オールド・ハット”“ウォンティン・ハー・アゲイン”といった最新作の楽曲までが、次々と繰り出される。要所要所でディストーションのエフェクターを効果的に使用し、衝動そのままに弦をかきむしり、ギュインとしたブルージーな音色で、パフォーマンス全体を引き締めていく。特にカントリー色が強い最新アルバムの楽曲は、今回のような構成のステージにはまる。ピアノとギターの間を頻繁に行き来し、そうした面でも飽きない見せ方を熟知しているように思えた。“シャ・シャ”などはピアノの弾き語りで披露された。
歌いまわしの味わい深さも増しており、ルックスは若々しくとも、パフォーマンスは「貫禄」という言葉が似合う領域に入ってきている。中盤披露されたニール・ヤングの“ハート・オブ・ゴールド”のカバーも最高だった。
それにしても一語一語が本当に聴き取りやすい。フォークの基本だが、MCも日本人的に聞き取りやすいので、盛り上がるのも必至といった感じ。一緒に歌おうよ、と唱和を促す言葉も聞き取りやすいから、フロアからのコーラスも徐々に大きくなっていく。オーディエンスのリクエストにも気さくに応え、“アイ・ゴッタ・ムーヴ”“マイ・アパートメント”などを披露。そうした楽曲では、アドリブなだけに「歌詞忘れちゃった」と最前列の人から歌詞を教えてもらったりと、なんとも笑えるやりとりもみせていた。長く愛され続けるアーティストとはこういう人のことをいうのだろう。アーティストとしての表現力の広がり、熟成ぶりもさることながら、ステージ運びのうまさにうならされるばかりだった。アメリカのフォーク・シンガーの底力は本当に計り知れない。(森田美喜子)
ベン・クウェラー @ 渋谷クラブクアトロ
2009.04.07