King Gnu/日本武道館

King Gnu/日本武道館 - All Photo by 伊藤滉祐、小杉歩All Photo by 伊藤滉祐、小杉歩

●セットリスト
SE 開会式
1. どろん
2. Sorrows
3. Vinyl
4. It's a small world
5. 白日
6. 飛行艇
7. Overflow
8. Slumberland
9. Vivid Red
10. Hitman
11. The hole
12. ユーモア
13. 傘
14. Tokyo Rendez-Vous
15. 破裂
16. Prayer X
17. ロウラヴ
18. Flash!!!
(アンコール)
SE 閉会式
EN1. 三文小説
EN2. Teenager Forever



King Gnu/日本武道館
King Gnu/日本武道館
やっぱり最高である、このロックバンドは。卓抜したスキルと、それを凌駕するエモーション。日本のロックの聖地・日本武道館のドアをKing Gnuは真正面から蹴破り、そしてそこで巨大な「セレモニー」をぶち上げてみせた。時代もコロナ禍の状況もぶっちぎるような正攻法で、彼らはこの記念すべきステージを完遂してみせた。

King Gnu/日本武道館
King Gnu/日本武道館
新型コロナウイルスの影響で中止となってしまった春のツアーに代わり、新たに設定されたこの秋のツアー。アリーナクラスの会場、観客の前でアルバム『CEREMONY』が初めて実演されるのである。会場内にはライブが始まる前から期待が充満している。スピーカーからは1964年東京オリンピックのマラソン競技の実況音声、ステージには巨大な聖火台。そこに“開会式”が流れ、メンバーが登場する。聖火台に火がともり、常田大希(G・Vo)が叫んだ。「トーキョー!」。そして“どろん”の切羽詰まったようなアンサンブルが瞬時にしてその場の空気を変えていく。新井和輝(B)と勢喜遊(Dr・Sampler)が視線を交わし、井口理(Vo・Key)がラストのハイトーンを響かせると、客席からは大きな拍手が起きた。そのまま“Sorrows”へ。勢喜のドラムが手綱を握り絶妙な緩急をコントロールするなか、井口と常田のツインボーカルがスリリングなハーモニーを聴かせる。

King Gnu/日本武道館
King Gnu/日本武道館
観客の盛大な手拍子が盛り上げた“Vinyl”でさらにギアを上げると、一転して勢喜のビートと常田のギターがドープに鳴り響き、井口が「今日は歌って、踊って、楽しんでいってください!」と客席に声をかけて“It’s a small world”へと突入し――新旧の楽曲が繰り出されていく序盤だけで、そのパフォーマンスはすでに圧倒的な求心力を放っている。そんななかでぽんっと放り出されるように演奏されたのが“白日”だった。昨年末の『第70回NHK紅白歌合戦』でも歌われた、押しも押されもせぬKing Gnuの代表曲がこうして前半にあっさりと(というふうに僕は感じた)披露されるという構成自体、前進し続けるバンドからの明確なメッセージだと思った。

King Gnu/日本武道館
King Gnu/日本武道館
再びともった聖火と真っ赤なライトのもと巨大なスケール感で鳴らされた“飛行艇”(常田がやたら楽しそうにギターを弾いている)を経て、勢喜のドラムソロから“Overflow”へ。小気味のいいカッティングが“飛行艇”の重たいグルーヴからアンサンブルを大きく飛翔させていく。常田の美しいピアノの音色が印象的だった“Vivid Red”に、オルガンの音と美しいハーモニーが厳かに響いた“Hitman”。ジェットコースターのような上下動を繰り返しながら、圧倒的な密度をもった音が次々と繰り出されていく。井口の歌声がひときわ美しく響き渡った“The hole”を終えるとここで一息。歌詞を間違えた(「アレンジしちゃった」)と井口が告白しメンバーからツッコミを受けるが、4人とも笑顔だ。「今日さ、ちょっと真面目なMCやろうと思ってたんだけど、今の“The hole”でできなくなっちゃった」と笑う井口に「あ、俺も」と応える新井。どうぞどうぞのダチョウ倶楽部状態になったところに「じゃ、俺が」と勢喜が手を挙げ「今日は来てくれてありがとう」と客席に語りかける。これぞ阿吽の呼吸である。

King Gnu/日本武道館
King Gnu/日本武道館
そんなやり取りを経て改めて井口が語りはじめる。先日、声楽の先生のコンサートに行ってきて、80歳になったその先生の歌声を聴いて感動したというエピソードを披露しながら、「ただ歌が好きだった」という先生の言葉に「俺、そこまで続けられないかもしれないかもって怖くなったと同時に、なんて素敵なことなんだろうって気持ちになった」と井口。「こうして武道館に立っているわけじゃないですか。死ぬまでバンドとか音楽をやっているかはわからないけど、続けていくことの重みというか。ファンのみなさんもいらっしゃいますし、ちゃんと応えていきたいなと」。

King Gnu/日本武道館
King Gnu/日本武道館
King Gnu/日本武道館
King Gnu/日本武道館
一方で新井は、かつてパン屋でバイトしながら毎日King Gnuで武道館に立つことを考えていたという記憶を語りつつ、その時代に師匠と自分をつないでくれたミュージシャン・斎藤デメ氏のパートナーの方が病気で手術を控えていて、しかもその手術をすると聴力を失ってしまうということを明かす。本来であればすぐにでも手術をすべきだが、「最後に武道館でKing Gnuの音楽を聴いてからにしたい」という希望でその手術を延ばしてまで今日ここに来てくれているそうで、「彼女がいなかったらたぶんここには立っていない。すごく個人的な話なんで、ここで話すのはどうかなと思ったんだけど、みんなで応援できたらなと思っています」と話す彼の目には涙が。ロックバンドが、ミュージシャンがこの武道館に立つとはどういうことなのかを改めて教えてくれるようなその言葉に、客席からは大きな大きな拍手が送られた。

King Gnu/日本武道館
そこからますますエモーショナルに展開した後半戦。井口がまっすぐに前を向いて歌った“ユーモア”、常田のギターが音源で聴く以上に力強く響き渡った“傘”を終えたところでサウンドのトラブルが発生するが、ここでも4人は阿吽の呼吸を見せつける。ちょっと時間がかかりそうだと見るや、井口が「ごめん、ちょっとトイレ行ってきていい?」とまさかのトイレ宣言で笑いを取り(本当に行った)、そして勢喜と新井はセッションを開始。数分後、無事トラブルも解消され、井口もトイレから戻ってきて、4人の濃厚なアンサンブルが展開する“Tokyo Rendez-Vous”が始まっていく。まったく、見事なコンビネーションだ。

King Gnu/日本武道館
King Gnu/日本武道館
常田が爪弾くギターからしっとりと“破裂”を聴かせると、ここからいよいよ最終盤である。“Prayer X”をずっしりと重いリズムに乗せて届けると「ラスト2曲! 最後までついてこい!」と井口が叫んだ。King Gnuのアンサンブルの妙味を全開にした“ロウラヴ”から、緊迫感のある電子音とサンプリング音声に合わせて勢喜がヘビーなビートを叩き出して“Flash!!!”へ。「跳べ!」の声に客席は最後のお祭り騒ぎに突入した。まばゆいフラッシュライトが武道館を照らし出し、大量のスモークがステージを包むなか、井口はタンバリンを振って歌う。最後はレッド・ツェッペリンばりのハードでブルージーなセッションでフィニッシュ。異様な熱気をあとに残して、4人はステージを降りていった。

King Gnu/日本武道館
もちろんアンコールを求める拍手は鳴り止まない。そんな武道館に“閉会式”が鳴り響く。怒号のような歓声とチェロの物哀しい響きとともに、バンドがステージに戻ってくる。ここからが本当のフィナーレだ。まず披露したのは新曲“三文小説”。“The hole”、“白日”と連なるKing Gnuのバラードの系譜をさらに推し進めた、とんでもない深みをもった名曲が、井口のファルセットボイスによって美しく広がっていく。そして、その余韻を断ち切るように勢喜の暴れドラムが響き渡り、「準備はいいかい? 楽しんで帰りましょう!」という井口の最後の一言から、“Teenager Forever”へ。King Gnu史上最もラフで最もロックバンドなこの曲が、4人の関係と武道館への道程を肯定するように轟いた。(小川智宏)

※「King Gnu Live Tour 2020 AW “CEREMONY”」幕張メッセ公演が12月8日(火)23:59まで見逃し配信中です。
※12月26(土)20:00~22:00にはMUSIC ON! TV(エムオン!)にて、武道館公演の独占初放送も決定しています。

King Gnu/日本武道館
King Gnu/日本武道館

King Gnu、12/2に両A面シングル『三文小説 / 千両役者』リリース
King Gnuが、12月2日(水)に両A面シングル『三文小説 / 千両役者』をリリースする。 同作は、アルバム『CEREMONY』以降初、約9ヶ月ぶりの新作で、2018年9月リリースの『Prayer X』以来2枚目のシングルとなる。収録タイトルは、日本テレビ系 土曜ドラマ『35歳の少女…
King Gnu、12/2に両A面シングル『三文小説 / 千両役者』リリース - 『三文小説 / 千両役者』12月2日発売


  • King Gnu/日本武道館
  • King Gnu/日本武道館
  • King Gnu/日本武道館
  • King Gnu/日本武道館

公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする