開演時間を告げるスクリーン上のカウントダウンに合わせて、いつもならオーディエンスの声が上がるところだが、シンガロングや大きな発声の自粛が求められる環境の中で、辛抱強く手を打ち鳴らす音が響き渡る。真太郎(Dr)の鋭いファンキービートに乗せて、誠果(Sax・Manipulator)が熱くサックスを吹き鳴らすオープニング曲に始まり、克哉(G)、彰(G・Programming)、信人(B)、そしてTAKUYA∞がステージ後方の高台になった部分から降りてくる。“Making it Drive”から“stay on”へと連なってゆくライブ序盤は、のっけからフューチャリスティックなロックシンフォニーで巨大なグルーヴを生み出し、アリーナの人々を一息に飲み込んでいった。「いいよ、心で歌え。あとは全部、TAKUYA∞とUVERworldが歌う!」と告げた後には、TAKUYA∞が信人のスラップショットを煽る“UNKNOWN ORCHESTRA”、そして花火が吹き上がる“ROB THE FRONTIER”の爆走では、分厚い音の中から彰の味わい深いギタープレイが顔を覗かせる。砂時計のグラフィック演出と共に始まった新曲“HOURGLASS”は、来春公開の映画『ブレイブ -群青戦記-』の主題歌として書き下ろされたナンバーだ。エモーショナルなビッグメロディに乗せて命の重さと自由を問う、そんな一曲である。
スペシャルゲストのAK-69がTAKUYA∞との掛け合いを繰り広げる“Forever Young feat. UVERworld”はバースデーソングにもぴったりだし、古くからの盟友である愛笑む・世田谷のりこと共に披露された新曲“来鳥江”は、挑発的でゴリゴリとしたロックアンセムになっていた。克哉のアコギリフに導かれる“PLOT”はオーディエンスの手拍子を巻き、シンガロングパートも自ら担うTAKUYA∞の熱唱によって、これまでに体験したことのないタイプの一体感が育まれる。前日の2回公演を経て、深夜に10km走った(Crewたちとスマホで連絡を取りながら走り、日付を跨いで誕生日を迎えたそうだ)ことを語るTAKUYA∞は、「今日のために走ってきたんだよ。長生きするために走ってるんじゃねえぞ!」と告げて“PRAYING RUN”に持ち込むのだった。公演スケジュールを考えれば信じ難いペースの熱演だが、それを可能にする肉体を地道に作り上げてきたのだ。
都会的なサックスフレーズも絡んでくるソウルフルな新曲“Teenage Love”は、ファルセットのハーモニーも良いアクセントになったロマンチックな美曲。UVERworldは、最先端ポップミュージックと渡り合うようにバンドサウンドを刷新してきたが、今回披露されている新曲はいずれも、スッと腑に落ちるような芯の強いキャッチーさを備えていて、一段階上のステージに到達している。今後の音源化が楽しみだ。
4人の楽器パートがせめぎあうインスト曲“Spreadown”を挟み、ファイアーボールが吹き上がる“Touch off”以降は、決して今までどおりにはいかないはずなのに逃れ難い熱狂へと巻き込んでゆくスパートだ。Crewから募集したシンガロング音源をミックスした“IMPACT”では、生のシンガロングができない状況さえも突破するように、アリーナ一面が大きくバウンスする。「でも俺、今年の誕生日も幸せだよ。間違いない誕生日を選べた」と告げながら、TAKUYA∞は身近な人々に祝われるばかりではなく、不特定多数と音楽を共有する生誕祭の意味について語る。銀河を舞う鯨のCGアニメーションと共に披露された“AFTER LIFE”は、その思いを裏付けるように美しく響いていた。そして、今回のライブを締めくくったのは新曲“EN”。覚悟を宿した重厚なロックシンフォニーの中で、TAKUYA∞はこの2020年の経験を刻みつけるように歌い、お前はどうだ、お前はどうする? と問う歌詞を投げかけてくる。凄い曲だ。今を生きる人だからこそ心揺さぶられる、軽薄さとは正反対の意味で「ポップ」の責任を貫いたナンバーである。この曲が早い時期に多くのリスナーに届くことを、切に願っている。(小池宏和)
『ROCKIN'ON JAPAN』2月号は12月28日(月)発売!
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