miwa/Zepp Tokyo

miwa/Zepp Tokyo - All photo by 佐藤薫All photo by 佐藤薫
「ライブが当たり前じゃないこんな状況で、こうして皆さんと会えることが奇跡みたいなことなので、1曲1曲を大事に、最後までお届けしたいと思います」。「miwa “ballad collection” live 2021~decade~」と題された、Zepp Tokyoの2日間。配信ライブなどは行われていたものの、有観客の単独ライブとしては「miwa concert tour 2018-2019“miwa THE BEST”」の日本武道館以来、丸2年ぶりである。

その間に彼女はめでたくデビュー10周年を迎え、この3月には12年目に突入した。今回のステージは公演タイトルどおり、彼女の歩んだ軌跡を振り返る落ち着いたムードのパフォーマンスの中で、久しぶりにmiwaとオーディエンスが直に対面する感慨を織り込んだ内容になった。3月20日の公演はインターネット生配信も行われ(見逃し配信は3月27日23:59まで)、本稿では配信の模様を振り返ってみたい。

今回のライブが静謐なパフォーマンスを中心に構成された理由は、大きな発声やシンガロングの自粛がオーディエンスに求められる、この新型コロナウイルス禍のライブ環境への配慮でもあるだろう。ピアノ伴奏だけで1コーラスが歌われ、ウインドチャイムの響きを合図にバンドサウンドへと移行する“片想い”は、miwaの素晴らしいピッチコントロールによって、動きのあるメロディや鮮やかな転調がくっきりと浮かび上がる。アコギを携えて軽快に届けられる“Napa”では、オーディエンスの手拍子に包まれながら笑顔を覗かせていた。バンドメンバーは、オバタコウジ(G)、この2日間で初めてmiwaライブに出演した櫻井陸来(B)、白根佳尚(Dr)、そしてバンマスのeji(Key)という布陣である。

miwa/Zepp Tokyo

困難な状況の中で会場に駆けつけたオーディエンスに感謝の思いを伝え、「やっと会えたね! 2年ぶりだね!!」と喜びを溢れ出させるmiwa。生配信でステージを見つめるファンにも言葉を投げかけ、このテキストの冒頭で紹介した決意を語りながら、クリスピーな節回しに気丈さを宿した“サヨナラ”へと向かっていった。ハンドマイクでステージ上を跳ね回りながら披露される“SPLASH”は、アコースティック中心のアレンジでありながらも、強烈な推進力と躍動感を感じさせている。

「この会えない間、みんな元気だった? どうやって過ごしてきたんだろう。いろんな日々を乗り越えてきたんだろうなと思います」。そう告げて歌われるのは、アコギのソロ弾き語りによる“Delight”だ。一言一句を噛み締め、光量控えめなステージの中央でmiwa自身が光源と化すように、膨大なエネルギーを放ち始める。これこそがmiwaのソウルだ。

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続く“あなたがここにいて抱きしめることができるなら”はピアノ伴奏のみのパフォーマンスだが、miwaはここで大粒の涙を溢し、声を詰まらせながら熱唱する。歩み寄るmiwaに、ejiも励ますような視線と演奏を送っていた。この曲に込めた思いと、今日の我々が置かれた困難、さまざまな感情が交錯し、あの涙を誘ったのかもしれない。「10年経っても、こんなに弱い部分があって。皆さんに支えてもらって10年間走って来れましたし、こうして12年目をスタートできていることを、感謝しています」と彼女は告げていた。

劇場アニメ『神在月のこども』の主題歌として制作された新曲“神無-KANNA-”は、和の情緒を伴うシーケンスを絡めたバンドサウンドで、動きのある照明演出とともに披露される。強い信念と希望に満ちたその歌は、新鮮な曲調をもって若い人々を、そしてかつてのmiwa自身を鼓舞するかのようだ。今回のライブにもぴったりの1曲である。そして、彼女にとっての節目の季節であり、また誰にとっても新しい期待と不安に満ちた季節であるこの3月に、“めぐろ川”が届けられる。《離れてても あなたのこと 忘れないから》という一節が、以前とはまた違った感慨をもたらしていた。

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ちょうど1年前の3月20日にデジタルリリースされた“Who I Am”を経て、眩いフラッシュライトの中で歌われる“We are the light”は気高いロングトーンの歌声とともに拳を高く振りかざしてフィニッシュ。そしてライブ本編は、11年分の思いと表現力を上乗せしたデビュー曲“don't cry anymore”で、熱いクライマックスを迎える。

Tシャツ姿で再登場したアンコールでは、「今までのライブ史上で一番泣いたかも知れない。ペットボトル(の水)を頭から被ったくらいヤバかった、ってスタッフさんに言われて」と笑いながら“あな抱き”の一幕を思い返す。バンドメンバーやオーディエンスとの記念撮影を終えると、ここで鬱憤を晴らすかのようにロックモードのmiwaが全開である。“again×again”に“春になったら”、オバタの背面ギタープレイが炸裂する“chAngE”ではmiwaも負けじとストラトキャスターを弾きまくり、フライングVモデルにスイッチして“ヒカリヘ”へと向かう。

miwa/Zepp Tokyo
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「本当はみんなの声を聴きながら歌いたいんですけど、心の中で一緒に歌ってくれますか」と告げて披露されたのは、絆の合唱のためのメロディ“結 -ゆい-”だ。この曲の終盤、なんとmiwaは「みんなだけで歌ってみましょう」と呼びかける。決して空気を震わせることのない無数の歌声が、束になり、響いてくる気がした。余りにも印象深い一幕だ。

「みんなと過ごせた時間、本当に幸せでした。これからもみんなと一緒に、繋がりを感じながら、会えない時もみんなのことを思っています。私の音楽が、少しでもみんなにとって、元気だったり、勇気だったり、楽しみだったり、苦しみを救ってくれるものであることを、いつもいつも願っています」。そう語ったmiwaは、最後に「また会える日まで、一緒に頑張りましょう」という言葉を残し、今回の配信は幕を閉じるのだった。(小池宏和)

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●セットリスト
1.片想い
2.Napa
3.サヨナラ
4.SPLASH
5.Delight
6.あなたがここにいて抱きしめることができるなら
7.神無-KANNA-
8.めぐろ川
9.Who I Am
10.We are the light
11.don't cry anymore
(アンコール)
EN1.again×again
EN2.春になったら
EN3.chAngE
EN4.ヒカリヘ
EN5.結 -ゆい-
EN6.つよくなりたい



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