All photo by 郡元菜摘●セットリスト
01. フーチークーチーウーマン
02. Boom Boom
03. アラバマソング
04. Bang Bang (My Baby Shot Me Down)
05. 新月とコヨーテ
06. The End of the World
07. more
08. 瓶とスコール
09. 朝日のあたる家
10. The End
（アンコール）
11. Jeff's Boogie
12. Paint It Black
13. ハイエナ
『CUT』主催によるトーク＆ライブ複合イベント「CUT NIGHT」vol.15 が2月19日、ライブスペース・池袋harevutaiにて開催を迎えた。渋谷陽一による、ジェフ・ベックや「ロックの昔とロックの今」について語られたトークライブが会場を大いに熱くしたあと、lukiのライブがスタートした。
昨年の11月から洋楽の名曲を新しい日本語詞でカバーするプロジェクトをスタートし、コンスタントに配信シングルを出している彼女だが、この日もカヴァー曲に主軸を置いたセットリスト。“フーチークーチーウーマン”“Boom Boom”と、このイベントではもうお馴染みのブルース・カヴァー２連発でいきなり会場を沸かせた後は、新たなカヴァー“アラバマソング”を初披露。オペラの劇中曲であり、ドアーズやデヴィッド・ボウイ、マリリン・マンソンなど数多くのロック・アーティストによるカヴァーでも知られるこの楽曲の核にある悲哀とユーモアを、歌い手としても詩人としても大胆なアプローチで捉える。まるで舞台女優のような存在感もパフォーマンスから溢れ出していて、ここにきて彼女の洋楽カヴァーの中でも明らかな新境地で魅了した。
中盤は“新月とコヨーテ”“more”“瓶とスコール”といったオリジナル曲も織り交ぜながらの展開だったが、錚々たる世界の名曲の中で、これらの曲たちがより活き活きと輝いているのも印象的だった。歌うことで「生きるとは何か？」を生々しく問い続けるlukiの音楽へのブレない姿勢は、洋楽カヴァーという新たな実体験を経ることによって、より強い肉体性を持ち始めている。そして、その究極は本編のラストに演奏された、今回が２回目の披露となるドアーズのカヴァー“The End”。10分強のロック・スペクタクルは、さらに鬼気を増していて、まるで雷で撃たれたようなショックを残しながら本編が終了した。
既にこの時点でロック濃度が重量オーヴァーの内容だったがアンコールで投下されたのはジェフ・ベックの“Jeff’s Boogie”。円山天使のギターも、lukiのハープも、インストながら全ての音が歌いながらグルーヴ。それはまるでジェフ・ベックの魂の熱さを体現しているようで会場は凄まじい熱狂。続けてダメ押しのKOパンチのようにローリング・ストーンズのカヴァー“Paint It Black”。怒りと悲しみの先にある、美しさと肯定的なエネルギーを、山本哲也（Key）、張替智広（Dr）も含めた、この４人のlukiバンドにしか鳴らせない音で表現した見事なアレンジだった。
アンコールラストの“ハイエナ”まで圧巻の約１時間。これを見て４月15日の開催が発表されるワンマンライブ「新古今洋歌集」に期待するなと言われても不可能、そんな一夜だった。（古河晋）
