『Devilock Night 09』 @ 幕張メッセ10,11ホール

祝・『DEVILOCK NIGHT』復活! アパレル・ブランドDEVILOCKが主催する名物イベント『DEVILOCK NIGHT』が、03年の以来の開催、幕張メッセでの大復活となった。まずは今回の出演者の顔ぶれ。これがとんでもないことになっている。出演順にこうである。どん! RYUKYUDISKO、the telephones、POLYSICS、LOW IQ 01 & MASTER LOW、the HIATUS、dustbox、9mm Parabellum Bullet、The Birthday、ACIDMAN。ベテランから若手まで、今日のライブ・シーンを先頭切って走る猛者ばかりなのである。音楽フェス隆盛の今日にあっても、さすがにこれだけの顔ぶれを1日で、1つのステージで立て続けに観る機会というのは、そうそうないのではないだろうか。いやすみません。この顔ぶれ、個人的にツボ過ぎて、当然自分一人のためというわけではないのに「ありがとうー!」と叫びたくなった次第であります。

タイトルは『Devilock Night 09』ではあるのだが、1日がかりのイベントなので最初のアクトの出演は午前11:30。ここからきっかり1時間毎に各アクトのショウと転換が行われ、9組のステージが約9時間に渡って繰り広げられる。うむ。わかりやすくていい。というわけで、物販や飲食店スペースを覗くのもそこそこにステージ前に移動する。お馴染み「琉球電舞」のノボリと首里城を模したシステム卓が目に入った。まずはトップ・バッター、RYUKYUDISKOだ。祭典の開幕を告げる、力強い電撃祭囃子バップがフロアに響き渡る。テクノからUKブレイクビーツ、オールドスクールなヒップホップ、エアロスミス“ウォーク・ディス・ウェイ”のギター・リフまでノンストップでミックスしてゆくライブ感満載のプレイだ。彼らのサウンドは自身のルーツを大切にしながら、しかしそれを押しつけにせず、高揚のためのエッセンスとして要所要所で盛り込んでゆくのが素晴らしいなあ、と思う。彼らのルーツと僕らの生活は断絶したものではなくて、確かに繋がることができるのだ、と瞬間的に実感させてくれるサウンドなのである。ボブ・マーリーがレゲエでやったことを、この2人は沖縄の音楽でやっているのだ。そして2組目は、「ハロー、エブリバディ!ウィー・アー・ザ・テレフォンズ!アー・ユー・ディスコ!?」と石毛がハイトーン・ボイスでまくしたてて大歓声を浴びるthe telephones。飛ぶ鳥を落とす勢いのライブ人気を誇るだけあって、けたたましくアグレッシブな割に説得力を増し続けるダンス・ロック・サウンドだ。松本のビートの安定感と、岡本のダンスの挙動不審ぶりが奇麗に比例しつつ右肩上がりになっている。笑顔で踊り狂うオーディエンスの姿を見れば、このバンドの「時代に後押しされてる」ただならぬ感じは一目瞭然だろう。7月に発売される待望のメジャー・デビュー・アルバムから“Monkey Discooooooo”も披露。彼ららしい高揚のシンガロング・フレーズを搭載したナンバーだ。終演後のフロアには、明らかにこの後のアクト目当てで参戦したはずであろうオレンジのツナギを来た若者が、なぜか何人も、すでに放水車状態になっていたりするのであった。

というわけで次なるは、現シーンのエレクトロ・ロックご本尊、POLYSICS。ハヤシの「トイス!」の挨拶と共にホイッスルが吹き鳴らされ、“P!”からのスタートだ。限られた持ち時間を気にしてか、はたまたサービス精神か、通常の2割増ぐらいの速度でトップ・ギアに持っていく。かつてのキワキワな存在感はすでに遠い過去となり、風格さえ纏いつつあるバンドとサウンドの佇まい。イントロ一曲毎に沸き起こる大きな歓声も、クラシックの貫禄である。“I My Me Mine”でのカヨのファニーなリコーダーの旋律に合わせて、フロアでは無数のサークルが形成されぐるぐると回っている。6月リリース予定のキラーなシンセ・フレーズを持つ新曲“Young OH! OH!”も投下し、矢継ぎ早に繰り出された楽曲群は、なんとしめて13曲。もう一度書くけど、1組あたりの持ち時間は転換込みで1時間である。貫禄あるのに生き急がずにはいられない、相変わらずのポリであった。と、ここでDEVILOCK代表、遠藤憲昭氏が挨拶に登場する。満場のオーディエンスに、開催の感謝の言葉を述べた。感謝したいのはこっちの方です。そして遠藤氏が呼び込むのは、LOW IQ 01 & MASTER LOWである。エレクトロ系サウンドで一気にフロアを加熱した後は、職人気質バンドの盤石の演奏に支えられたグルーヴィなストリート・サウンドへ。スター性全開のイチ君、年齢を感じさせない動きでステージを右へ左へと跳ね回り、ときにはこの凄いバンドを見ろ、とばかりに袖に隠れながら歌ったりもしている。お茶目さんである。跳ね回り過ぎて息が上がってしまったか“So Easy”あたりでは奇麗な歌メロが歌いきれていなかったりもしたのだが、そこは頼もしきファン達がシンガロングでフォロー。「10年分のベスト盤出します!いっちゃんサイコー!じゃあ新曲やってもよろしいでしょうか?」とパンキッシュな展開に伸びやかなメロが映える“NOT ALONE”へ。息切れも収まってガッチリと歌い込んでいた。出し惜しみ無しの名曲連打に、ラストは得意のバク転で大歓声を巻き起こすイチ君。さすがのカッコ良さである。直後に軽く腰をさすっていたのはご愛嬌。ほんと、ケガしないでね。

パーティ性の高いアクトが続いたが、ここでフロアの空気がガラリと変わった感がある。the HIATUSの登場に、オーディエンスはサウンドチェック時から固唾を飲んで見守るような緊張感があった。僕も観るのは初めてで、どのような音像が繰り出されるのかやはり気掛かりである。ひときわ大きな大歓声に応えて登場したバンド・メンバー。スケジュールの都合か、ピアノの前には堀江博久に替わって、東京事変の伊澤一葉がポジションについている。ジェントルなピアノの音色に導かれ、細美の伸びやかな歌が走り出した。そして爆発的なコーラス。なんだこれ。どこかグラマラスでもある。2曲目、沸々としたエモーションと共にスタートした楽曲は、アップテンポに展開し、ボーカルとリンクしたバンド一斉型のリフを轟かせる。すげえ。「たのしー!!」2曲目を終えて、細美は満面の笑みで叫んだ。彼は昔からよくステージの上で「楽しい」と言うが、このときの両腕にグッと力を込めてのガッツ・ポーズに、高揚の大きさを推し量ることができた気がする。このthe HIATUSは、今日のロックに必要なキャッチーさ、スピード感を誇りながら、同時にクラシックな名作ロックが持つ神秘性、ドラマ性やエピック性、リスナーとの約束、のようなものを内包している。噂に違わぬ、破格のスケール感を持ったバンドだ。キャッチーさの裏で複雑極まりないせいか、アンサンブルが危うく聴こえてしまう部分もある。それとももともとこういうアレンジなのだろうか。それも含めて、今後の展開に大きな期待を抱かせてやまないステージであった。「うおーっ!なに言いてえのか分っかんねえけど、ありがとうございましたあー!」と、細美は終盤、もう一度ガッツ・ポーズを決めた。ほとんど踊ったりせずに観ていたのに、背中にビッシリと汗をかいていた。

さあ、イベントも後半戦にさしかかり、次の登場はdustboxである。会場に集ったパンク・キッズの熱気を一手に引き受けるような、今日最高のメロディック・パンクだ。オーディエンスは、シンガロングにスカンキングと全力で弾け回る。「俺たちはこういう広い所でやったことがあまりないんですが、大きかろうが小さかろうが、関係ありません」というSUGAの言葉通り、圧倒的なライブ強さで矢継ぎ早に曲を繰り出し、ラストの“Tomorrow”までタイトかつ伸びやかなプレイで熱気を帯びていった。演奏の確かさ、シンガロングの大きさという点では、今回の出演者の中でも随一という印象であった。そしてこの後には9mm Parabellum Bulletが登場。ほんと、音楽性の違いも踏まえたバランスのいい、最高のブッキングである。あと、ほぼ15分〜20分ほどの短い転換時間を、みんなしっかりこなしてしまっているのも素晴らしかった。9mmはサウンドチェック時から既にフロアを沸かせてしまっていたのだが、ライブ本編は“Vampire Girl”からのスタート。両翼の滝と中村がいつもどおり、いきなり暴れ回る。“wonderland”のような一種の変態ロックに、しっかりついていくオーディエンスが頼もしい。菅原はMCで「ロック・バンドが景気の話すんなっつうんだけど、不景気だからこそ景気良くいこうっていうか。ギラギラしようぜ、みんなー!」と言っていた。この男はシンプルな言葉で、実に核心をついたMCをするのがうまい。そう、ギターを振り回す滝の動きはさながら、鋤か竹槍を突きかざす百姓一揆の如しではないか。ロックとは、困難の中でグラマラスにギラついた百姓一揆のことである。

The Birthdayのチバとキュウちゃんの姿が歓声の中に見えたとき、ああ、さっきthe HIATUSでウエノが同じステージに立ったな、と思った。で、ミッシェルが最後に立ったステージも、まさにこのホールだったことを思い出してしみじみしてしまった。みんな前に進んでいるのだ。The Birthdayは、キャリアの中で磨き抜かれてきた貫禄の、ソリッドなロックンロールを放出していた。“ALRIGHT”の〈夢をみようぜBABY〉というリフレインが、そして歌い出しをオーディエンスに丸投げしてしまった“涙がこぼれそう”が、爆音とシャウトの中にも大きな感動を孕むのであった。そして最後の出演者は、ACIDMAN。トリにふさわしい、スリー・ピースとは思えないグルーヴと豊かな音像で、会場を満たしていった。披露した楽曲はアンコール2曲も含めベストと言える内容だったのだけれど、2月にリリースした“CARVE WITH THE SENSE”の圧巻の即効性、それにこの5月27日にリリースされる“Under the rain”のライブ初披露もあり、今回のイベントのスペシャル感に花を添える形となった。

本当に素晴らしいイベントだったと思う。ぜひまた継続的に開催して頂きたい、と感じたし、それにしてもアパレル・ブランドが主催なのだから、アーティスト・グッズ売場の隣に遠慮がちにイベント・グッズを陳列するだけではなくて、もっと大々的に商品を紹介しても良いのでは、と少し思いました。(小池宏和)
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