PUFFY @ 渋谷C.C.Lemonホール

PUFFY @ 渋谷C.C.Lemonホール

最新アルバム『Bring it!』のライブ・ツアー、東京公演はC.C.Lemonホール。開演前の注意事項アナウンスはよく耳にするが、それをPUFFYの二人が自ら行っている。で、「お隣SHIBUYA-AXにはユニコーンさんが出演されているところ、わざわざお集り頂きありがとうございます」だの「ステージには物を投げないでください。但し、おひねりは一部いただく場合がございます」だの「場内はたいへん暑くなりますので、生ものをお持ちの方はご注意ください」だの言ってオーディエンスの笑いを誘っている。姿を見せる前から既に、ゆるゆるほんわかなPUFFYモードだ。会場入り口にはたくさんの花が届けられていて、扉をくぐるなり立ち込めた香りが鼻をくすぐっていたのだが、それらの差出人の名前に目をやるとニューロティカとかZEEBRAとか小栗旬とか書いてある。多くの著名人や企業の名前が見られたが、単に豪華絢爛ということではなくて、例えばニューロティカとZEEBRAと小栗旬から届けられた花が並んでしまうということ自体が、何ともPUFFYなのだなあ、と感じた次第であります。バンド・メンバーが登場し、続いて大歓声の中にPUFFYの二人が現れた。マイクやリボン、亜美のシャツのストライプや由美のワンピースの柄に、効果的に蛍光のイエローと蛍光のピンクを配した、色は派手派手だけれどもキュートにまとめられたビジュアルで登場である。けたたましいシンセと共にバンド・サウンドが轟き、いきなり賑々しい『Bring it!』収録曲“DOKI DOKI”からのスタート。フジファブリック・志村正彦の提供作品である。というか、PUFFYはまだこの後にも公演を残しているのでセットリストの細かいところまでは触れることが出来ないのだが、どうやら今回のツアーはもろに「新作アルバムの曲をやる」という方向に性格が振り切れているようだ。立て続けに『Bring it!』の収録曲が披露されてゆく。新作アルバムのツアーなんだから当然、と思うかも知れないが、彼女たちのようにヒット曲を数多く抱えたアクトがこういう方向に振り切れるのはなかなかリスキーなことだ。そういう意味でも、彼女たちが『Bring it!』という作品にかける自信のほどが伺える。『Bring it!』は、PUFFYが多くの人と分かち合い、多くの人に(それこそニューロティカとZEEBRAと小栗旬の花が並ぶほどに)愛されてきたPUFFYというキャラクター性を改めて強く打ち出し、それによって彼女たちの歌い手=発信者としての主体が強く浮かび上がってくる作品だ。椎名林檎が提供した“主演の女”や、PUFFYチームのキーボード奏者でもある斎藤有太の“あなたとわたし”というタイトルは、まさにそのまま歌の向こうに歌い手であるPUFFYの顔が見えてくる。パンキッシュな和風スウィング・ジャズあり、ディスコ・ロックあり、アメリカ西海岸直輸入の英語詞ポップ・パンクあり。そんな雑多な曲群にも一本筋を通してしまう強烈なキャラクター性が、PUFFYにはある。もしかすると楽曲提供者も、PUFFYが歌うというキャラクターの「縛り」の中で作品を生み出しているのではないだろうか、というぐらいに。僕が個人的に最も好きなのは“DOKI DOKI”と同じく志村正彦が手掛けた“Bye Bye”で、ディスコ・ビートにキャッチーなフックが弾けるサビもいいのだが、何よりもPUFFYの特徴であるユニゾン・ボーカルを逆手に取るようにして、同一のメロディを重ねてリフレインさせるブリッジ部にニヤリとさせられてしまう。明らかにPUFFYのキャラクターを意識していて、かつ志村ならではのソング・ライティングが輝きまくった曲だ(でも、今回のライブでは二人がリフレインせずに、一緒にユニゾンしていたのでちょっと残念だった)。開演から1時間経過して9曲を演奏し終えたとき、なんとそのうち8曲が『Bring it!』からの楽曲であった。PUFFY、攻めている。そして、その後のMC。由美:「今日、曲順すごく悩んだんですよー。」
亜美:「リーダー(亜美)、悩んじゃった〜。」
由美:「……皆さん、ちょっと静かにしてもらえますか?
   マイク使ってすみません……チッ(舌打ち)。」
亜美:「まぁ人には得手不得手というものがありますので……
   そういうのはいつも、吉村さんが頑張ってくれるんですけど。」
由美:「PUFFY、シングルいっぱいあるんだぜってところも見せたくて、
   こういうの考えましたー!」メドレーである。ここで往年の名曲連打である。が……ちょっと待て。普通のメドレーじゃない。例えば、ヒット曲がいっぱいあるミュージシャンて、カラオケにもヒット・メドレーみたいなやつあるでしょ。仮に、このメドレーをPUFFYヒット・メドレーとしてカラオケで配信したとしよう。誰も歌えないと思う。歌えたとしても、そんなの熱狂的なPUFFYファンだけだ。全然カジュアルじゃない。めちゃめちゃハードコアでカオスなのである。全然飛ぶべきじゃないところで次の曲に飛んだり、こっち行ったりあっち行ったり、こっちに戻ってきたりするのである。アクロバティックなDJミックスみたいなことを、人力のバンド生演奏でやっているのである。すげえ。バンマス/ベーシストの木下裕晴が、1月から作っていたそうだ。はっはっは。「もう一回やってー!」って、鬼か、PUFFYファンは。これ、本当におもしろいし、カッコいいし、今のPUFFYの攻めの姿勢にもめちゃめちゃフィットしていると思う。ロデオみたいなとんでもないメドレーを、見事に歌いこなした二人も素晴らしかった。アンコールでは、チバユウスケ作詞作曲のニュー・シングル“誰かが”も披露してくれた。「メッセージ性の強い曲とか、あまり歌わないんですけど。今回はこうしてみんなでツアーしたりもしている中で、仲間を大切にする、というテーマの、すごくいい曲です」と由美が説明していたが、疾走するロックンロールの中に率直なメッセージがビシビシと決まりまくる、本当の名曲だ。聴けてよかった。人と人との連なりが育んだPUFFYのキャラクター性があって、その先に初めて、新しい風景とメッセージを抱えたこういう名曲が生まれたのではないだろうか。(小池宏和)
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