SOUL FLOWER UNION @ 恵比寿リキッドルーム

SOUL FLOWER UNION @ 恵比寿リキッドルーム - pic by Okuma Ryopic by Okuma Ryo
ソウル・フラワー・ユニオン恒例の9月東名阪ツアー、ファイナルの東京公演である。ステージのバックドロップには笑う巨大な太陽と人々、またフロア左側壁には数々の愛らしい妖怪の姿が鮮やかな色彩で描かれた幕が、それぞれ掲げられている。うむ。これこそソウル・フラワーの世界。あと、キーボード奏者/奥野真哉の背後に設置されたレスリー・スピーカーには「猛虎」と大書された阪神タイガースへの姿勢表明も。これはフロントマンの中川敬が勝手に貼り付けたものらしい。さあ、「人生は、祭りだー!」という中川のシャウトとともに、庶民のブチギレ居直りソング“エエジャナイカ”でバンドは開演の祝砲を撃ち鳴らした。

続いてのSFU最新シングル曲“ルーシーの子どもたち”は、1974年にエチオピアで発見された350万年前の化石人骨をテーマにしたという、マンボをベースにした賑々しい人間讃歌だ。発掘の宿営地でよく聴かれていたビートルズの“ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンズ”にちなんで、その化石人骨はルーシーと名付けられたのだそうだ。本当に、なんてロマンチックな歌なんだろう。現代人類は350万年前の彼女の末裔であり、同時にラブ&ピースを願ったロック・ミュージックの子だ。今年、河村博司と入れ替わるように加入したギタリスト/高木克がソリッドなギター・サウンドを聴かせる。見た目にもアクションが大きく楽しいプレイヤーだ。ベーシストのJIGEN、中川、高木と並ぶ前線は、SFU史上もっとも熱く(暑苦しく)、「男度」が高い3トップである。中川がJIGENを突き飛ばしてギター・ソロを見せつけたりしている。

「大阪でえーらい目にあってしまって。お客さんに乗せられてしまったんよ……乗せてくれ、バンドを!」と中川が煽れば、盟友・奥野も「今日はぶっとばすぞー、乗り遅れんなよー!」と火に油を注ぐ。最近のSFUのライブはバンド演奏の地力を見せつけるインスト曲にも積極的で、高木の強烈にブルージーなスライドが決まる一曲、その名も“棹を擦る男”(なんちゅうタイトルか!)、追悼キング・オブ・ポップとして実に彼ららしい選曲、アッパーにアレンジされた“ヒューマン・ネイチャー”、スタイル・カウンシル“ミックス・ブレッシング”のSFU流解釈“シンヤの祝福”などをたたみ掛けてゆく。その上で彼らの真骨頂である「歌」の本領も発揮されていて、オーディエンスの弾け飛ぶ性急なナンバーから“海へゆく”などの体の芯からじわじわと熱くなるメロウ・チューンまで、豊かなメロディ群が次々に披露されてゆく。正直言ってセールス的に特大アーチを描くようなヒット曲はほぼ皆無だが、キャリアを重ねるごとに着実に生涯通算安打記録を更新してゆくような、SFUの名曲コレクションは本当に素晴らしいものになっている。キャッチーなフックを歌わせ、同時に強いグルーヴで踊らせる曲ばかりだ。大きなシンガロングが広がった“うたは自由をめざす!”は、前半戦のハイライトだった。“風の市”を歌い終えた中川は、「そんなに、おもろい見せもんとちゃうで。参加型やから」と言っていた。そういうことだ。彼らの生み出す歌は、すべてそのために機能している。

ニューエスト・モデルとメスカリン・ドライヴという2つのメジャー・バンドの合体/再編によって組織されたSFUは、それゆえに「ロック=衝動に任せて突っ走る表現」という公式に則った活動を、予め制限されていたバンドだった。だからこそ、彼らは誰よりも「ロックする理由」に対して意識的なキャリアを歩んできたのだ。非戦・反骨の精神を貫きながらも変化を恐れずむしろ望んだし、前身バンドから20年以上の歴史があってなお、懐メロ・バンドに陥ることなく最新の機能的な「歌」にオーディエンスを巻き込んでくれる。奥野がアコーディオンを奏でるブルース・フォーク風の新曲“再生の鐘が鳴る”は、まさに「歌」の誕生を祝福するような曲だった。

現SFUのお囃子を一手に引き受ける上村美保子のリード・ボーカルで強烈な歌詞と華々しいロックンロールとが誘爆する“霊柩車の窓から”を経て、“月光ファンファーレ”ではこう歌われる。《大捕物の観客と 壊れた羅針盤/神と悪魔に頼まれて 私もエキストラ/阿鼻叫喚のスクリーム 塹壕カーチェイス/地球で迷子の我々にゃ 残念 字幕なし》。何の因果かここに生まれてしまって、誰もが手探りで描くしかない人生劇場。役立たずの気休めはすべて投げうって、SFUはリアルな泣き笑いのテーマ・ソングを奏でてみせる。

終盤戦は“満月の夕”から、三味線のようにベースを引っ叩きつつ押し売り気味の県自慢を歌う定番JIGENシングス“秋田音頭”、やたらボルテージが高かったニューエスト時代のモラトリアム粉砕ナンバー“こたつ内紛争”、そして必殺どころか必生の祭囃子ロックンロール“海行かば 山行かば 踊るかばね”と一気にまくし立ててステージ本編を終えた。更に二度のアンコールに応え、しめて2時間半、全26曲を披露。盛りだくさんなようだが、それでも彼らのライブ定番曲として知られる曲はまだまだ他にも残されているのだということを、会場で先行販売されていた10月7日発売の最新ライブ・アルバム『エグザイル・オン・メイン・ビーチ』を聴きながら思った。

なお、ソウル・フラワー・ファミリーのアコースティック・ユニットであるソウル・フラワー・モノノケ・サミットは、この2日後の9月21日に沖縄で、リーダーのヒデ坊こと伊丹英子が陣頭指揮を執る「米軍基地問題を考えるフェス」=『Peace Music Festa!’09 from 宜野湾』に参加する。(小池宏和)

1.エエジャナイカ
2.ルーシーの子どもたち
3.アル・ファジュル
4.棹を擦る男(Inst.)
5.ラヴィエベル~人生は素晴らしい
6.ヒューマン・ネイチャー(Inst.)
7.海へゆく
8.うたは自由をめざす!
9.名もなき惑星
10.そら(この空はあの空につながっている)
11.シンヤの祝福(Inst.)
12.風の市
13.再生の鐘が鳴る
14.平和に生きる権利
15.ホワイトハウスを爆撃(Inst.)
16.アクア・ヴィテ
17.霊柩車の窓から
18.酒と共に去りぬ
19.月光ファンファーレ
20.満月の夕
21.秋田音頭
22.こたつ内紛争
23.海行かば 山行かば 踊るかばね

アンコール
24.マージナル・サーフ(Inst.)
25.神頼みより安上がり

アンコール2
26.道草節
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