思えば波乱の幕開けだった。天邪鬼でやさぐれてて退廃的で不敵で、だからこそラフでスリリングなロックンロールそのものを鳴らしてしまう、00年代に飛び出した稀代の新鋭=The Mirraz。だが、10月14日にリリースされた最新アルバム『NECESSARY EVIL』を引っ提げた全国ツアー『NECESSARY EVIL Tour '09 ~旅だって行くんだ、すんなルーラー~』開幕を目前に控えた10月31日、オフィシャル・ブログにVo・G=畠山承平がUPした内容は、「畠山本人のウィルス性耳下腺炎により面会謝絶の自宅療養、よって11月5日のツアー初日:横浜LIZARD公演を延期」、そして「畠山の長年の親友でもあるベーシスト=和田遼太郎の正式脱退」だった。
しかし……ついに畠山&関口塁(Dr)の2人になったThe MIrrazは、それでもサポート・ベーシストを迎え、横浜LIZARDの振替公演を1月14日に決定し、THE BEACHES/BlieAN/QUATTRO/PILLS EMPIRE/a flood of circleなどの猛者を対バン相手に迎えながら全国ツアーを回りきってきた。そして、『NECESSARY EVIL Tour '09』ツアー・ファイナル……ではあるが最終日ではない(ああややこしい)満員の代官山UNITワンマン公演に臨んだ畠山は、ブログに綴っていた血のにじむような文章とは一転、やっぱりどこまでも天邪鬼で、やさぐれてて、退廃的で、不敵だった。
上記の通り、まだ「最終日」が残っているのでセットリスト全掲載は避けるが、“走れ魔法使い”など新作『NECESSARY EVIL』からの楽曲をのっけから畳み掛けつつ、“canのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい”のロックンロール超特急ぶりや“アナーキーサヴァイヴァー”の胸騒ぎ必至の妖しいコードワークでUNITのオーディエンスをどんどんミイラズとの共犯関係に引きずり込んでいく。何より、音楽的な構造で言えばシンプルでキャッチーですらあるアンサンブルのはずが、それこそコード一発鳴らしながらビートが走り出しただけで、その音はアンダーグラウンドでダーティで危険なロックの匂いを聴く者すべての脳裏にまとわりつかせていく……サポート・ギターのK様、そして盟友・QUATTROから馳せ参じたサポート・ベース=ケイゾーを迎えた4人編成から繰り出す音は、そんなマジックに満ちていた。そして、畠山の機関銃のようなリアル・ワードの一斉掃射が、そこに「今、ここ」の焦燥感を与えていく。当然、フロアは阿鼻叫喚の熱狂ダンス&ジャンプの場と化す。そして、そんな狂騒感をさらに煽り立てていたのが、他ならぬ畠山のMCだ。
序盤からぎゅうぎゅうで上気しまくりのキッズの顔を見回しては「客少ねえなあ! あんま人気ねえなあ」「まだ7時とかだから、テンション上がってねえな?」「酒が足んねえんじゃねえか?」とSっ気たっぷりに言い放つわ、かつて某誌で「アークティック・モンキーズのパクリ」と評されたのを逆手に取って「全然パクってない! まず、テンポが違う。次に、テンポが違う。あと……テンポが違う」と笑ってみせるわ(その前にはご丁寧にアークティックの“I Bet You Look Good On The Dancefloor”をカバーまで披露していた)、さすがにリアクションに困った空気のオーディエンスを「……今の結構笑えるネタだったんだけど」と煙に巻いてみせるわ。足下のスミノフの瓶を片っ端から空けながら、その不敵モードは留まるところを知らない。挙げ句の果てにはせっかくサポートについてくれたケイゾーまでもターゲットにして、ひたすら「ギャラ引くから!」を決まりネタにしてイジり倒していく。たとえば終盤、疲れきった(酔いの回った?)様子の畠山が「もう帰りてえ!」と言い出した場面では……ケイゾー「俺も帰りてえよ」、畠山「いつもだったらもう帰ってる頃だよな?」、ケイゾー「ったく、曲数クソ多いよぉ!(怒)」、畠山「……ギャラ引くから!」、といった具合である。その傍若無人な畠山の悪童っぷりがしかし、今のミイラズへの畠山自身の手応えを象徴しているみたいで、なんだかかえって嬉しかった。畠山「この人、QUATTROのベース・ボーカルだから!(もちろん嘘)」、ケイゾー「そう。基本『ヘイ!』しか歌わないから(これも嘘)」という内輪のじゃれ合いのようなMCまでもが、ミイラズのステージでは実にサマになって見える。
そして、「そんなQUATTROを意識した新曲やります!」とまたも適当な畠山のMCから雪崩れ込んだのが、本編終盤の新曲“ハイウェイ☆スター”。自らのシニカルさを爆裂ロックンロールで突破していくような、そんな勢いにあふれた曲だ。「曲いっぱいたまってるから、アルバムも、来年の……夏か、秋か、冬か。まあ、できたら出すよ」と畠山。ツアー・ファイナル! 大団円!というよりは、The Mirrazのやさぐれた(同時に不屈の)闘争心がより猛威を振るうに違いない「これから」へ向けての期待感が高まる、そんな一夜だった。アンコールでは「疲れるからあんまやりたくねえんだよ! これ以上やって病院送りになったら、お前らのせいだからな!」とオーディエンスに軽く言ってみせながらも、途端に神妙な口調になってツアー・スタッフや対バン相手に感謝の言葉を述べた畠山。「でっかいところでやりてえ!」とも言っていた。アリーナ級の会場のでっかいステージの真ん中で次々と悪態をつく彼の姿を想像してちょっと可笑しいのと同時に、なんだか無性に胸躍ってしまう自分もいたのだった。最高の2時間だった。(高橋智樹)
The Mirraz @ 代官山UNIT
2009.12.03