ただし。「それからたった1年で、よくまあここまで」とは、思わなかった。このバンドのポテンシャルを考えると、1年前の状況の方がおかしかったのだ。いや、今の状況が正しいとも思わない。まだまだ全然ちっちゃい。1年前の時点で、既に完成されていて、ライブを観て「間違いない、本物だ」と確信したけど、「モンスターだ」とまでは思わなかった。
今日は、思った。モンスターです、plentyって。それを立証するライブだった。すごすぎる。なんだこいつら。歌、ギター、リズム、いずれも、なんというか「日本語で内省的なことを歌う時のギター・バンド」(←ものすごい雑なくくりかたですみません)の王道であり、そこらじゅうのライブハウスにも、メジャーのシーンにもあふれている音楽スタイルである。でありながら、メロディも、歌詞も、歌いかたも、演奏のしかたも、どこの誰にも似ていない。誰の影響下にもない。いや、あるのかもしれないけど、それが感じられない。
たとえばBUMP OF CHICKENが登場時からそうであったように。たとえばsyrup16gがいきなりそういうものとして現れたように。たとえばRADWIMPS……は、ギター・バンドだけじゃなくて、ミクスチャーとかヒップホップの要素も入るから、ここで例に出すのは違うか。
でもとにかく、それくらいの衝撃だということです。ってこれ、既にplentyにやられているファンからすると「わかってるよそんなこと」って話だと思うが。かぼそくて悲鳴みたいなのに歌詞のひとことひとことがはっきり耳に飛び込んでくる、抑揚がでかくて美しくて次の予想がつかないメロディの歌を、作って歌う江沼が天才であることは、もうとっくに疑う余地がなかったが、そしてこの日は特に調子がよかったと思うが、リズム隊の2人、ベース新田とドラム吉岡も本当にいい。アレンジの付け方も、演奏のしかたも、江沼が描こうとしている世界や、気分や、タイム感と、寸分のズレもなく合っている。ってことは「江沼の世界」ではなく「plentyの世界」になっているということだ。
いいバンドだなあ。これで21歳って。何なんだろうこいつら。と、また思ってしまう。あと、このツアーは、アルバム『拝啓。皆さま』のリリース・ツアーなんだけど、次のアルバムも、もう完成しているそうで(ニュースのコーナー参照)、そこに入ると思しき曲も何曲もやった。
これが、いちいち全部、とんでもなかった。
元々あんまり持ち曲が多いバンドではなかったので、前作はほとんどライブで聴き慣れた曲ばかりだったから、そういう意味では驚かなかった。が、今日は、こんなに新しい、初めて聴く名曲を、次から次へと垂れ流されて、心底びびった。いつのまに作ったんだ、ここまでのものを。早く聴かせたい。というか、早く聴きたい。まだここで1回聴いただけだし。聴かせろ。にしても。前回のワンマンの時、ジャパンの誌面のレポートでも書かれていたが、plentyのライブのお客さんって、異様だ。最初、BGMが止まり、SEもなくメンバーが出てくると、ふわーって拍手はわくが、すぐ消えて、メンバーが楽器を持って、チューニングを終えて、音を出すまでの間、みんなシーン……。曲が終わってすぐ次の曲にいかずに、ちょっと間が空く時も、拍手のあと、シーン……。
1回目のブレイクで、江沼が「こんばんは、plentyです。今日は最後まで楽しんでください」みたいな短いMCをした時なんか、しゃべり終わっても、歓声も拍手も誰ひとりなし、シーン……のままだった。「江沼―!」とか「最高―!」みたいな声があがった瞬間、下手すると一度もなかったのではないか。
ちなみに、去年の5月の初ワンマンの時は、まだ、友達やライブハウス仲間も込みで満員になった感じで、拍手や歓声が結構とんでいたから、純然たるファンだけでソールドアウトした、前回=昨年10月のワンマンから、一気にこういう空気になったようだ。
もちろん、誰かがそう仕向けたわけではない。勝手に、自然にそうなっているのだ。
みんな、plentyに圧倒されて、呑まれているのだと思う。正しく伝わっているなあ、正しく受け止められているなあと思った。で、この「正しく伝わる規模」は、新しいアルバムが出たらすさまじく加速するだろうとも思った。(兵庫慎司)