PILLS EMPIRE @ 代官山UNIT

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1stアルバム『MIRRORED FLAG』のリリース・ツアーに先駆けたリリース・パーティー(後述しますが、「レコ発ライブ」じゃなく「パーティー」なの、ちょっと重要だと思う、このバンドの場合)。タイトルは『SHOW YOUR FLAG』、ゲスト・ライブでVOLA&THE ORIENTAL MACHINEとThe Mirraz、DJで石毛輝(the telephones)が参加。
ゲスト・バンド、さっとレポートします。


VOLA&THE ORIENTAL MACHINE

1.Self defence
2.An imitation’s superstar
3.WEEKEND LOVERS
4.Acommunication refusal desire
5.PARTY SONG
6.DEAD OR DANCE

久々に観た。で、びっくりした。えらいよくなっている。音圧、個々のメンバーのプレイ、バンド全体のグルーヴ、ギターやパーカッションやシンセや2本のマイクをとっかえひっかえしながらパフォーマンスするアヒトの……なんというか、「観る人聴く人にモテる感じ」、もうどれもすごくアップしている。
僕がしばらくごぶさたしていた間に、バンドとして何かつかんだんじゃないかと感じた。やってる方向性は変わっていないのに、とてもポップに拓かれた響きかたをするようになっている。
というのとリンクしていると思うが、もうひとつ驚いたのが、今のこの、いわゆる新世代バンドたちと同じフィールドのものとして、フロアに熱狂的に受け入れられていたこと。で、それが実に自然だったこと。もうベテランの域なのに。元ナンバーガールだったり元syrup16gだったりするのに。ELLEGARDENやストレイテナーやホルモンが次々にどかーんといった時、その前の世代のくせに、その流れに完全にうまくはまっていたビークルと同じような、そんな「ずるい!」と言いたくなる感じあり。それがうれしかったです。


The Mirraz

1.イフタム
2.CAN
3.なんだっていい
4.シスター
5.check
6.神になれたら
7.僕はスーパーマン

このバンドも、ちゃんと観たの久々だったんだけど、なんというか、「ならず者度」というか「やさぐれ度」がアップしている気がした。ただそれは、たとえばPILLS EMPIREのNaoya(vo,b)が持っているような、UKロック80年代後半あたりのアーティストから現代まで脈々と続いているあの「ならず者感」や「やさぐれ感」とはちょっと違う。
表現欲求の根本になっているものは、内省的だったりナイーヴだったりするんだけど、それをアウトプットする時のアプローチが、なんでか暴力的で生活破綻者な感じをはらんでしまうというか。超高学歴なんだけど家はゴミの山、洗濯するのめんどくさいから下着は一回着たら捨てる感じ、というか。
どんな感じだ。でもなんというか、そういう「シャレにならなさ」を感じるステージだった。5曲目“check”で、the telephones全員乱入。


PILLS EMPIRE

1.Jaxtaposed Juggernauts
2.Demophophobia
3.Kubrick Syndicate
4.Trench
5.73(新曲)
6.Turn It On Now
7.Goose Step Exodus
8.Suicide Candy
9.Eins,zwei,Drei
10.Dare D
11.Manchester

アンコール
12. Kubrick Syndicate

アンコールの“Kubrick Syndicate”は、Mirrazのケイゾーがベースを弾くという事で、出てきて、セッティングの間Naoyaがしゃべってつないでいた。「俺ベース弾くの好きじゃないんだよ。歌うのも好きじゃないんだよ。ほんとは呑んで踊ってるのが好きなんだ」とか言っていたんだけど、ケイゾーのチューニングがなかなか終わらなくて、しまいには「まだかよ! もうしゃべりたくない! しゃべるのも嫌いなんだよ!」とキレていた。
ライブ中、Naoyaは何度もフロアに乱入した。何度もステージ両端のスピーカーによじのぼった。アンコールで「酒呑んでる奴! なんだよ、パーティーなのに酒呑んでないのかよ! 俺に酒をくれー、酒をー!」とわめいた。で、客が手渡したワインだか日本酒だかのビンをラッパ呑みし、最後には「あがってこい! みんなあがってこい!」とあおって、客を何人もステージに上げて踊らせた。
歌は、曲によってきこえたり、きこえなかったり。ベース、弾いたり弾かなかったり。今日に限ったことじゃないが、サビとか歌わず、ギター&キーボードのKokubuに任せることもしばしば。つまり、全体に、シンガーとかミュージシャンとかバンドマンというよりも、扇動者でありアジテーター。

ステージの上も下もない感じ。ステージの上のミュージシャンを、観客は下から崇め見る、という構造はイヤだ、みんな同列で一緒なんだ、とする思想。だから、ライブではなく、パーティーなんだという捉え方。で、そういうものの総合体として、音楽が、世の中に何かを起こしていくエネルギーになる、という考え方。
というNaoyaのこの感じ、僕は知っている。80年代末期に「90年代の主役はオーディエンスなんだ」と言ったTHE STONE ROSESの頃、そういう思想は始まった(そういえばライブの後半で、PILLSはTHE STONE ROSESの“I WANNA BE ADORED”のイントロを鳴らしていた)。ロックとダンス・ミュージックの垣根が崩れてロック・ファンがクラブになだれこむようになった90年代中盤~後半の頃にも、それはあった。それ以降にも、脈々とある。
つまり、僕くらいの世代の音楽ファンで、THE STONE ROSESの初来日を観ていたり、「RAINBOW2000」に行ったことがあったりする、そういう嗜好性の人間だと、「ああ、このタイプね」というものなわけです。
こういう「クラブの酔っぱらいが思想を持っちゃった」「で、そのままステージに立つようになっちゃった」的な、和製ボビー・ギレスピーみたいなロック・キャラクターって、つまり、とても既視観があるわけです、我々おっさんからすると。

なのに。「ああ、こういうパターンかあ」という客観的な見方が、全然できなかった。
「うわ! なんか始まってる」「なんかやらかそうとしてる、こいつら」と、ドキドキした。なんでかはわからない。こいつらが本気だからだ。とかいう結論にすると収まりがいいけど、別に僕がドキドキしないミュージシャンだって、本人たち的には本気だろうし。
だから、理由はわからないけど、とにかく、「そうか。じゃあ俺はどうしよう」という気分になった。ライブが終わって、家に帰って、レコード棚を検分し直して、いるもんといらないもんと分別しなきゃ、と思わされる感じというか。
ライブを観て、そういう気持ちになったの、私的には久々でした。それがなんか、とてもうれしかった。(兵庫慎司)
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