PUNKSPRING 2010 @ 幕張メッセ9・10・11ホール

PUNKSPRING 2010 @ 幕張メッセ9・10・11ホール - Lostprophets / (C)PUNKSPRING 2010 All Rights Reserved.Lostprophets / (C)PUNKSPRING 2010 All Rights Reserved.
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そもそもR&B/ヒップホップ系フェス『Springroove』ととも「ジャンル別音楽フェス」の先陣を切る形で2006年にスタートした、日本随一のパンク・ロック・フェス=『PUNKSPRING』。今年は残念ながら『Springroove』はなかったものの、『PUNKSPRING』は昨年同様に東京(幕張)/名古屋/大阪の3会場で開催! その「最終日」である日曜日の幕張メッセには、オープニング・アクト3組を含め、3ステージに実に洋邦26組のアーティストが大集結を果たすことになった。

メイン・ホールに2つのステージ=「RED STAGE」「BLUE STAGE」、そして別のホールに第3のステージ=「GREEN STAGE」が設置されているのは昨年同様。会場レイアウトで異なるのは、メイン・ホールと「GREEN STAGE」の間にあった1ホール分の飲食エリアがホールの外の屋根つき部分に用意され(ホール内の屋台はドリンク販売のみ)、メイン・ホールと「GREEN STAGE」が壁1枚を隔てて隣り合う形になったこと。そして、ホール外にあった物販エリアが従来「GREEN STAGE」だった場所に移設されたこと。もはや今年の春では何度目かわからない寒の戻りのせいで、Tシャツ姿で気合いを入れていたキッズも開演前にはさすがに震えを隠せずにいたし、時折雨のぱらつく気候の中、外の飲食エリアではビールよりもあったかい麺類やホットコーヒーに群がる人が多かった。

そして。何よりも「変化」を感じさせたのは、メイン2ステージのヘッドライナー=ロストプロフェッツ/ゼブラヘッドという顔ぶれだ。それぞれヘッドライナーを張るのに十分なビッグ・ネームではあるし、現にどちらのアクトもメッセの広大な空間に割れんばかりの歓声が渦巻く熱狂ぶりだった。が、今の3ステージ開催になった2007年以降の「07年:NOFX/ニュー・ファウンド・グローリー、08年:ランシド/ペニーワイズ、09年:SUM41/NOFX」という過去ラインナップと比べると、今年の2組の顔ぶれは必ずしも「パンク・アイコン」という言葉では言い表しにくい存在だ。一昨年のバズコックス、去年のザ・ダムドに続く「オリジナル・パンク・レジェンド」的な文脈でブッキングされたであろうザ・ストラングラーズを除けば、ほとんどのバンドが「パンク×何か」という化学反応から新たな可能性を生み出している人たちだ。だが「だからパンク・フェスとして物足りない」というものではまったくなかった。むしろ、「パンクから受け取ったものを、それぞれの世代がいかに『次』につなげてきたか、そして2010年代につなげていくか」というところに、今年の『PUNKSPRING』では主眼が置かれていたように思う。もしかしたらそんな意図はまったくなかったのかもしれないが、実際に現場で体感した1人として、僕自身はそう感じた。

メイン・ホールの「BLUE STAGE」に鳴り響く、オープニング・アクト=coldrainのストイックなハイブリッド・ミクスチャー・サウンド! 続いて、同じく「BLUE STAGE」にUKサリー州発の5人組=ユー・ミー・アット・シックスが登場してポップ・パンクからミクスチャーまで自在に繰り出したかと思えば、「RED STAGE」でザ・キング・ブルースが骨太なロンドン・パンクぶりをアピールし、再び「BLUE STAGE」に戻ってザ・ブラックアウトが堂々たるヘビー・スクリーモでもって破壊的なアンサンブルから一同シンガロング!なメロディまで高らかに鳴らし、ギャロウズがUK屈指のタフなハードコア・パンクを聴かせ……といった具合に、「BLUE STAGE」と「RED STAGE」で交互にアクトが行われていく。

「昨日、名古屋でやった後、(ドラマー・恒岡章が)体調不良で。急遽、さっき(福田“TDC”忠章を)呼び出しました!」というMCの主はLOW IQ 01 & THE BEAT BREAKERのいっちゃん。リハなしとはいえ、さすがは「MASTER LOW」編成時のドラマーだけあって、呼吸バッチリ。轟々たる2人バンド・サウンドで、満員のホールを面白いように揺らしていく。続いて、貫禄のプレイを観せたのはザ・ストラングラーズ! “オール・デイ・アンド・オール・オブ・ザ・ナイト”カバーなども交えつつ、パンクのルーツの匂いを濃厚に2010年の「今」に鳴らしていく。「みんなの、ていうか俺らのパンク・ロック・スターが世界中から集まってるわけですよ! これはワールドカップなわけですよ! ここに集まってるみんなも日本代表なわけですよ! 日本代表の底力、見してやろうよ!」とフロアを煽るのはFACTのHiro。核爆発と天変地異が秒刻みで押し寄せるような楽曲でオーディエンスを圧倒していく。メロディックどころかシンフォニック・コア(?)とでも呼びたいアンサンブルを聴かせたのは、実は今回が初来日というリライアントK。マットのハイトーン・ボイスが、熱気渦巻く幕張メッセに冷徹な響きを加えていた。そして、フェイス・トゥ・フェイスがマッチョで硬派なUSパンクの極みのような強靭なバンド・サウンドを叩き出し、ニュー・ファウンド・グローリーが「5つのパート全部がジェット・エンジン」的なパワフルなサウンドでメッセをびりびりと震わせていく。

一方「GREEN STAGE」。オープニング・アクトのstack44/SECRET 7 LINE、そしてLAST ALLIANCE/knotlamp……と、洋楽バンドのサポート・アクトでもばきばきと頭角を現しつつある日本の精鋭たちが次々とイキのいいサウンドを畳み掛けた後は、USオハイオ発のマッチョでキッチュなポップ・パンク=ヒット・ザ・ライツ、女性シンガー=サラの絶唱とハイパーなサイコ・ビリー・サウンドがぶつかり合うUSシーンの異才=ザ・クリープショウ、日の丸ハチマキ巻いた前列5人の大波のようなヘッドバンギングがフロアを揺らしたUSカリフォルニア州のメロディック・ハードコア=セット・ユア・ゴールズ、いきなり“ファイナル・カウントダウン”の大ネタで爆笑を巻き起こしたエレクトロ・メロディック・パンク・トリオ=エレブンティセブン……と洋楽勢がしのぎを削る展開に。

再びメイン・ホールに戻って、9mm Parabellum Bullet登場! 3年前(07年)、パラモアの出演キャンセルに伴って急遽メイン・ステージを踏むことになった時、思いっきり前後の流れから浮いていたのを覚えている。で、メイン・ホールの日本人最後のアクトであり、見方によっては「パンク日本代表」的な意味合いさえ付加されかねないこの出番で、9mmはやはり、いい意味で思いっきり浮いていた。が、3年前の違和感が「9mm自身がパンク/ハードコアであることを警戒していた」ことによる抵抗感であったとすれば、今回は「もはやパンクでもハードコアでもないんだけどなあ。かといってメタルでもないんだけど」という完全変異体としての違和感なのだろう。ただし、浮いてはいても“Cold Edge”や“Black Market Blues”の破壊力は圧巻! この日最大の「異物」としてフロアをがっちり巻き込んでいた。そしてもう1組の「異物」、ダブもレゲエもスカもニューウェーブも喰いまくった唯一無二のミクスチャー・パンク=311が、終盤戦を妖しく熱く盛り上げていく。5人全員が太鼓をセットしてどかどか連打しまくる図は、パンクという枠からもハミ出しまくった狂騒的な快楽をフロアにもたらしていたし、その空気感がまったく別種の「パンクっぽさ」を描き出してもいた。

いよいよ終盤戦! 「GREEN STAGE」では、TOTALFATのスケールでっかいメロディと疾走スラッシュ・ビートに沸き返るフロアを、「このスピーカーより、俺たちみんなが一緒に歌ったほうがでっかい音が出るってことを証明したいと思います!」というShun(Vo・B)の絶叫がさらに天井知らずに煽り倒す! さらに、「日本人、最後、いきます!」という渾身のコールはlocofrank・木下(Vo・B)! 今やジャパニーズ・メロコア/パンクの牽引者にまで成長した彼らは、ゼブラヘッドの真裏というタイムテーブルも物ともせず、「GREEN STAGE」の最後にでっかい歓喜のパンク・ボムを打ち上げてみせた。

そのゼブラヘッドがトリを務めたのは「BLUE STAGE」。ラップ×ポップ・パンクという、今では多くのバンドが手放してしまった必勝方程式をがっちり抱え続け、ひたすら鍛え上げたそのサウンドは、黒光りするほどの剛性とパワーを孕むに至っている。あ、抱え続けていたのは「マ●コ、ダイスキー!」というどうしょうもないMCも然り、である。「ミンナ、スワッテ!」とメイン・ホール全体を座らせ、一気にジャンプ!という超強引な煽りから、怒濤の歓喜爆発大会へ雪崩れ込むあたりの流れは、もはや熱血職人芸だ。そして……21:00、ついに大トリ=ロストプロフェッツの登場! ポップだったりキャッチーだったりしたかつてのロスプロの音像もイメージも、今やすっかりメタリック・ハードコアの強靭な肉体に取って代わられている。“ウェア・ウィー・ビロング”で巻き起こしたメッセ一丸の大ジャンプ、続く“ルーフトップス(ア・リベレイション・ブロードキャスト)”のシリアスなハード・バラードでオーディエンスを大合唱へと導いていったイアンの堂々たる佇まいには、思わず胸が熱くなった。

ロスプロの濃厚な余韻を残して……21:45、すべての音が鳴り止んだ。来年の『PUNKSPRING』は果たしてどんな内容になるのか。今年は開催されなかった『Springroove』の行方とともに、今から気になって仕方がない。(高橋智樹)
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