ホフディラン@SHIBUYA-AX

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ホフディラン『14年の土曜日』。いきなりこのステージ・タイトルだけを目の当たりにした人は、ホフのファンでもない限りなんのことやらさっぱり意味が分からないと思う。説明します。1996年7月3日にメジャー・デビュー・シングル『スマイル』をリリースしたホフは、デビュー13周年記念日にあたる昨年7月3日、渋谷のC.C.Lemonホールで『13年の金曜日』というショウを行った。ので、それはRO69でもレポートさせていただいた→(http://ro69.jp/live/detail/22406)。昨年はもちろん、13年目で金曜日だったからそういうステージ・タイトルになったのだろう。それはいい。しかし、更に1年のキャリアを積み重ねた記念すべきライブのタイトルが『14年の土曜日』では、あまりにも投げやりなのではないか。

先に昨年のライブレポートを自分で読み直してみてびっくりしたのだが、今回もホフの2人は、デビュー記念日というスペシャル感がまったくと言っていいほど見受けられなかった。時折ふと思い出したかのように、さらっとMCで触れてみたりするだけなのである。こういう背負った感じの企画をまんまと肩透かしさせてしまうところがなんともホフらしいというか、苦言を呈しようにも最後には致し方ない気持ちにさせられてしまうというか。

セットリストについては文末に記載したものを参照されたい。新曲を含めて、割と最近の曲が多かった。記念日なのでデビュー・シングルの収録曲は披露されたが、14年のキャリアを振り返るというよりも「デビューから14年経ったホフの近況報告」みたいなライブなのである。もう意図的にというか、本能とか性格のレベルで「記念日とかそういう背負ったムード」を避けているフシすら感じられる。自分でやっておいて。

ベイビー:「今日は最初からお客さんが最高です! 14周年記念日! 感謝するぜオマエラー! うそです。本当、心から感謝しております」
ユウヒ:「いいじゃん。今日はそういうロックなノリで行けば。でも僕はいつでも謙虚だから、そういうふうに盛り上げたくても、言えないんですよ。東京っぽいでしょ(笑)。でも今日は、ここで盛り上がって欲しいというところで、これ点けますから」

ユウヒのキーボードの隅でピカピカと赤色灯が点灯する。しかしこのせっかくの秘密兵器『盛り上がりランプ』も、演奏の合間に操作するのに手間取ったり、点きっぱなしになってしまったり。ただでさえバンドの、そしてステージ進行の指揮官としてあちらこちらに集中力を注ぎまくっているユウヒである。キーボードで塞がった左手を咄嗟に伸ばして『盛り上がりランプ』のスイッチを入れるのは骨が折れる作業だ。

と、ここまでの話ではどれだけグダグダなライブだったんだ、と思われてしまいそうなのだが、そうではない。グダグダだったのはあくまでも記念日として、であり、『盛り上がりランプ』というオプションについては、だからだ。昨年同様のメンバーで編成されたホーン・セクションと女性コーラスを交えた大所帯バンドのホフは、奥行きと豊かな色彩を感じさせながら極めてタイトなパフォーマンスを展開していた。いや、マジでこのバンドは凄い。“遠距離恋愛は続く”では、ブレイク・パートでゲストとして登場したゆってぃが《わかちこわかちこ》ネタを何度も絡めつつテンポよく演奏を再開させる見事なプレイ。さらにベイビーとユウヒにも《わかちこわかちこ》ネタを披露させるというオマケつきだった。

アニメ『コジコジ』のパチンコ台がデビューすることになり、共にアニメのテーマ曲が使用されている、という前フリからカジヒデキが呼び込まれる(ベイビー曰く「大当たりがホフの“コジコジ銀座”で、小当たりがカジ君の“死ぬほど恋して~Johnny,Johnny~”なので、流れる頻度としてはカジ君の方が多い」)。実際にそのパチンコ『コジコジ』がステージ上に持ち込まれ、カジ君が打って流れた方をバンドでプレイする、という運びに。カジ君はパチンコをやらないらしく、ホフの2人に横からああだこうだと口出しされているのが可哀想である。結果、演奏されるのは“コジコジ銀座”。ゲストとして来たのにパチンコを打たされただけのカジ君、ここでステージ上を縦横無尽に駆け巡りながら“コジコジ銀座”を熱唱。ギタリストの森くんも乱入して大暴れである。森くんと堀内順也のツイン・リード・ギターが凄まじいデッド・ヒートを繰り広げていた。事前に渡されたセットリストでは“カジカジ銀座”となっていたので、下記のセットリストにもそのまま記載した。

また、ホフとカジ君の共作による新曲“弾丸ライナー”は軽やかなギター・カッティングが折り重なってゆく気持ちのいいサマー・チューン。この日会場で先行販売されていたホフの新曲“マナマナ”は《学んで 学んで 学んで 学んで》と印象的なリフレインが踊る曲であった。“マナマナ”のオケはザ・ナックの名曲“マイ・シャローナ”を彷彿とさせていたが、これはもしかすると今年2月に亡くなったナックのボーカリスト=ダグを追悼/トリビュートしたのだろうか。賑々しい曲だけれども、そう考えたらちょっとホロリと来た。ダイナミックなバンド・アンサンブルでアッパーに駆け抜けた本編から一転、アンコールで披露された“SEASON”や“美しい音楽”のオーディエンスをグイグイと引き込むロマンチックな曲群は、ステージのクライマックスとして実に素晴らしいものであった。

ユウヒ:「来年は15周年で、もっと派手にやりたいね」
ベイビー:「ヒット曲を1、2曲だして、武道館で!」
ユウヒ:「東京武道館っていう、小さいところあるよ(笑)。でもせっかくだからさ、野音とかでやりたくない?」
ベイビー:「独り身の女性はまず、夫を連れてきてください。そうすれば埋まります。今、相手がいない人は、婚活の励みになるでしょ?」
ユウヒ:「最前列にホラ、理想的なファミリーが。元々、奥さんがファンだったんだよ。まず夫を引き込んで、遂に息子と娘も連れてきて。なにも最前列じゃなくてもいいんじゃないか? と思うけど(笑)。とにかくどこかでやります!」

もう、ホフのキャリアを祝ってるんだかファンの人生を祝ってるんだかさっぱりわからないが、バンドとファンが一緒に人生を歩んでいることが目に見えて分かるライブなんて、考えてみればそうそうあるもんじゃない。(小池宏和)

セットリスト
1.はじまりの恋
2.東京カレーライフ
3.恋はいつも幻のように
4.遠距離恋愛は続く(w/ ゆってぃ)
5.スピリチュアル
6.長い秘密
7.欲望
8.カジカジ銀座 (w/カジヒデキ)
9.弾丸ライナー (w/カジヒデキ)
10.LOW POWER
11.マナマナ
12.カミさま カミさま ホトケさま
13.SUPER DRY
14.サガラミドリさん
15.HAPPY
16.TO THE WORLD

アンコール
17.ニューピース
18.SEASON
19.美しい音楽

ダブルアンコール
20.スマイル
21.こんな僕ですが
22.ホフディランのテーマ
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