10-FEET@新木場スタジオコースト

10-FEET@新木場スタジオコースト
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10-FEET@新木場スタジオコースト - pics by HayachiNpics by HayachiN
9月14日の京都MUSEに始まり、全国14公演に渡って繰り広げられてきた『10-FEET“hammer ska”TOUR 2010』も、今回レポートをお届けする新木場スタジオコーストをもって一段落。しかし今回のステージがツアー・ファイナルというわけではない。彼らはこの10月20日から、またすぐに新しいライブ・ツアー『“どこ行く年!どないすん年!”TOUR 2010』を開始するのだが、『“hammer ska”TOUR』と『“どこ行く年!どないすん年!”TOUR』の合同ファイナルとなるのが、12月18日及び19日の京都KBSホール2デイズだからである。その他にも多くのイベント出演などを控え、年の瀬までがっちりとライブ漬け予定の10-FEETである。

さて、スタジオコーストの開演時間になると、これまでの『“hammer ska”TOUR』中、最も多くの公演に帯同し、サポートしてきたFUNKISTが姿を現した。7人編成の豊かなバンド・アンサンブルが響く中で、染谷(Vo.)の本番に強いエンターテイナーとしての資質が徐々に全開になっていく。10-FEETファンが大半であるはずのフロアを、タオル回しからスウェイ、一斉ジャンプとぐいぐい盛り上げてゆくのだった。“Sun Baby”には10-FEETのKOUICHIもゲスト・ドラマーとして招き入れられる。そして「ベトナム、中国、南アフリカといろいろな場所でライブをしてきて、これまで出会った中で一番カッコ良かったバンドの曲をやります」と披露されたのは、まさかの10-FEET“hammer ska”。掟破りのツアー・タイトル曲カバーである。それも、高い演奏スキルを存分に発揮されたパフォーマンス。10-FEETファンも大喜びだったが、盛り上がりに余程の自信がなければこれは出来ない。ピースフルなふりをして、なかなか悪戯な一面も兼ね備えたバンドだ。FUNKISTは。

さていよいよ、「OF,BY,FOR THE KIDS!」のフレーズが描かれたバック・ドロップのもと、10-FEETの3人がステージに立った。先に書いてしまうと、演奏もファンの盛り上がりも、そして率直なメッセージも、徹頭徹尾アツいまま走り抜けてしまうライブだった。キャリア初期からの直球メロディック・パンク・ナンバー“AND HUG”で先制パンチを浴びせかけると、そのまま“VIBES BY VIBES”、“STONE COLD BREAK”とアグレッシブな曲群を畳み掛けてオーディエンスを沸かせ続ける。NAOKIのヘヴィなベース・ラインが走り出し、眩いストロボの閃光の中で3ピースの鉄壁ぶりを見せつけた“super stomper”は早くも圧巻の時間となった。

「蝋人形にしてやろうか!」と某・閣下のような台詞で凄むTAKUMA。「もっと欲しいわけですよ! もっと、みんながしゃくれるぐらい盛り上がりたいわけですよ! 今日は盛り上がり過ぎて疲れて、なんかもうつまんない、ってとこまで行くからな!」と笑わせつつも意気込んでいる。ダビーな音の響きをたっぷりと効かせた“U”から、“Freedom”ではFUNKISTのギタリスト2人、宮田とヨシロウを呼び込んでスペシャル・セッションへと突入する。TAKUMAはここぞとばかりにハンド・マイクで跳ねてはオーディエンスを煽り立てる。これではもはや野獣の放し飼いである。

「ギターなしで歌うのが、あんなにキツイとは思わんかったわ。今年で35ヘクトパスカルになります。NAOKIは33ウォンぐらいやね。……見た感じ、みんなもそんなに若くないね。いい歳して恥ずかしくないんですか? 我々は、当分やめる気はありません」。そしてKOUICHI。「えー…こんなに大勢の方が……僕を観に来てくださってありがとうございます……」と、おずおずと語り出すのだが、TAKUMAとNAOKIはその間にドラム・セットの前に並んでしゃがみ込み、スタッフから手渡されたカップ麺をすすり込んでいる。自分の麺を相手に食べさせようとして「あっち!」とか言っている。いよいよKOUICHIのMCタイムのネタ化も本格的になってきた。「リアクションを取り易くして貰おうと思ったんだけど、熱いにもほどがあるわ!」。なんで、勝手にネタをやった挙句に怒っているんだ。

さて、面白いには面白いが微妙に熱気が冷めてしまった場内。TAKUMA、強引にウェーブを巻き起こして凌ごうとする。そしてここで“hammer ska”投下だ。即座に再び沸点へと到達するオーディエンスであった。もしかして、わざわざこの曲の真価を試すようなステージ運びになっているのだろうか。更なる燃料として、FUNKISTのフルート奏者・春日井が呼び込まれる。“ライオン”と“RIVER”の2曲が彼女と一緒にプレイされたのだが、これが素晴らしかった。ロックの爆音とフルートの美しい音色はもともと相性が良いが、加えて選曲やアレンジも実に美しく、見事なパフォーマンスになっていた。

TAKUMAがギターをゆったりとストロークで響かせながら語り出す。「人はそれぞれ違うから、分かり合えないもので。分かり合えないからこその戦争や差別があって。でも、分かり合えないからこその、深い愛情や尊敬の念もあるのだと、信じています」。歌い出されたのは最新シングル収録の“求め合う日々”であった。10-FEETは、そのメッセージを一時の幻想として歌っているのではない。揺るぎない信念として歌っているのだ。改めて、そんなふうに印象づけるMCである。

「残すところ僅かです。……残り62曲! うち60曲は“桃色吐息”! あとの2曲は、NAOKIが『タッチ』の“背番号のないエース”を歌います」などと笑い混じりではあるけれど、TAKUMAはステージ後半になって一層、具体的なメッセージをフロアに投げ掛けていった。「政治家とかスポーツ選手とか芸能人とか、もちろん世間の目も大事だけれども、あまり揚げ足ばかりをとらない世の中になったら、もっとみんな活躍するんじゃないかな、と最近思います」と告げたり、モッシュやダイブで怪我人が出ていないかをずっと気に掛けていたり。もしかすると彼は、「10-FEETの影響力」というものを、ポジティブな面もネガティブな面もひっくるめて、見つめ直そうとしているのではないだろうか。そして出来うる限り「10-FEETの影響力」というものをポジティブな方向だけに向けたいと考えているのではないか。熱いトースティングを叩き付けてゆく“2%”、「大爆発に付き合ってくれるかな?」と告げ、アドリブでオーディエンスを煽り立てる歌詞を歌い上げた“back to the sunset”、そして最後の“goes on”まで、明らかに消耗しているファンも、そこで鳴らされる信念の音に食らいつくようにして今回のライブを駆け抜けたのだった。

アンコールでは、メンバーが3人ともブラウスに紺ベスト、チェックのスカートという女子学生の出で立ちに金髪アフロを乗せている。「生きとし生けるものは皆、例外なく死にます。だから、生きてるうちに楽しもうと思い……ました」。ふざけたビジュアルとシリアスなメッセージとの帳尻を無理矢理合わせようとしているのだけど、今夜のTAKUMAは「伝えるためにこれをやっている」というバランスが透かし見える気がする。そしてステージ上はFUNKISTのメンバーも全員飛び出してお祭り騒ぎと化していった。この日3度目の“hammer ska”、最後の最後には“TRAIN-TRAIN”カバーでの一斉ジャンプ。しかしすべてのパフォーマンスが終了しても、TAKUMAはなかなか、ステージから離れようとしない。マイクレスで、地団駄を踏みながら、フロアに向かって叫び続けていたのであった。(小池宏和)


10-FEET セット・リスト

1:AND HUG
2:VIBES BY VIBES
3:STONE COLD BREAK
4:super stomper
5:U
6:Freedom
7:rainy morning
8:hammer ska
9:ライオン
10:RIVER
11:求め合う日々
12:2%
13:1sec.
14:風
15:back to the sunset
16:goes on

EN-1:CHERRY BLOSSOM
EN-2:hammer ska
EN-3:4REST
EN-4:TRAIN-TRAIN
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