が、何はともあれバッド・カンパニーは、75年3月3日の一夜限りの日本武道館公演以来35年の時を経た2010年の今、福岡:Zepp Fukuoka/名古屋:Zepp Nagoya/大阪:なんばHatch/東京:人見記念講堂(追加公演)・国際フォーラム ホールA×2Daysという一大ジャパン・ツアーを実現させるに至ったのである。日本最終公演のこの日、国際フォーラム ホールA満場のオーディエンスも、それこそバドカン結成&来日リアルタイム世代?とお見受けされる紳士淑女の方々がかなりの割合を占めているし、うおおおお!と5000の客席から沸き上がる歓声や合唱も世代相応の図太い貫禄を帯びている。
開演時刻の19時、アンプ12段積み機材がセッティングされたステージに1人で現れたのは、オープニング・アクトのスティーヴ・ロジャース……というかポールの息子である。どちらかというとフォーク~カントリーのルーツを感じさせるアルペジオ・プレイに一抹のブルースの闇を流し込みつつ、ボイス・エフェクトやストンプボックス(足でキック音を出す機材)を駆使して弾き語りの枠を超えた色鮮やかな音世界を繰り広げていく。“リバー”や“サンシャイン”など7曲・20分ほどで終了。
そして……この日のバッド・カンパニーはどこを切っても最高だった。もちろん、ミックの穴を今回のサポート・ギタリスト=ハワード・リース(元ハート)が100%埋めきれていたとは言い難いところはあるが(曲によってはもう1人サポート・ギターが登場)、感電必至のハード・ロックと枯れ草薫るリズム&ブルースを両手に抱えてロックど真ん中を闊歩するようなこの感覚こそバッド・カンパニーそのものだ。何より、“キャント・ゲット・イナフ”でいきなり5000人を大合唱へ導き、“ハニー・チャイルド”“パック”“バーニン・スカイ”と曲を畳み掛けながら「コニチワ、トキオ! ゲンキデスカ!」「ツアー最後の夜だ、楽しんでいこう!」と満場の観客に呼びかけ、マイク・スタンドを鮮やかにぶん回し、一陣の風のようにブルース・ハープを吹き鳴らし、麗しのピアノ・プレイを見せつけ……といったサービスてんこ盛りのプレイを悠然とこなしていくポール・ロジャース60歳の姿は、老若男女瞬殺感激必至の力強いエネルギーを放っている。ちなみに、この日のセットリストは以下の通り。
01.Can’t Get Enough
02.Honey Child
03.Run With The Pack
04.Burnin’ Sky
05.Oh! Atlanta
06.Seagull
07.Gone, Gone, Gone
08.Mr.Midnight(新曲)
09.Yoakeno Keiji
10.Electric Land
11.Feel Like Makin’ Love
12.Shooting Star
13.Rock and Roll Fantasy
14.Movin' On
EC1-1.Bad Company
EC1-2.Be My Friend
EC2-1.Ready For Love
EC2-2.Stormy Monday
“オー・アトランタ”の歌詞に「トキオ・トゥナ~イト!」というフレーズをアドリブで盛り込んで拍手喝采を巻き起こし、「新曲!」というポールの言葉とともにプレスリーばりのオールド・ロックンロール・ナンバー“ミスター・ミッドナイト”を披露し……とさらにじっくりと熱を帯びていく国際フォーラムのステージ。途中、ポールがアコギ弾き語りを披露する場面が何回かあったのだが、そのうちの1回がなんと“Yoakeno Keiji”! 74年からTBSで放送されていた坂上二郎主演の刑事ドラマの挿入歌である。途中、♪ヨアケーノー、ケーイジー、と日本語で歌い上げると、当時青春世代だったであろうオーディエンスの間に異様なくらいの静かな熱気と感慨が走るのがわかる。“シューティング・スター”での割れんばかりのクラップ&合唱に、「トキオ、エクセレント!」とポールも満足げだ。
“ロックン・ロール・ファンタジー”からビートルズの“涙の乗車券”や“アイ・フィール・ファイン”を経由してまた“ロックン~”に戻った後、”ムーヴィン・オン”で本編終了。8ビートの楽曲はアンコール1曲目のピアノ・ロック“バッド・カンパニー”で姿を消し、いよいよ地味渋リズム・アンド・ブルース度合いを深めていく。特に、ミックなしでポール&サイモンが古巣フリーの“ビー・マイ・フレンド”をやっていると、一瞬目の前にいるのがバドカンだかフリーだかわからなくなる、というマジックもあったりして、諸先輩方は思わずニヤリとしたことだろう。Wアンコールで“レディ・フォー・ラヴ”をやった後、4人やサポート・ギタリストのみならずスティーヴやスタッフまでステージに招いて肩組んで一礼!……という大団円的場面の後、ポールが「もう1曲やろう!」と言って“ストーミー・マンデイ”を披露。別れを惜しむような5000人の「オーオゥ!」「イェーイ!」の大合唱が、ひときわでっかく響き渡った。(高橋智樹)