BUCK-TICK @ 渋谷C.C.Lemonホール

BUCK-TICK @ 渋谷C.C.Lemonホール - pic by 柴田恵理(※この写真は、10/27のライブのものです)pic by 柴田恵理(※この写真は、10/27のライブのものです)
オープニング映像を映し出していた幕が切って落とされた瞬間、あらわれたのは眩いばかりの光の世界! ギラギラとしたシルバーの背景、カラフルな電飾、鮮やかな映像を映し出すビジョン……と、ここはディスコかラスベガスかってぐらい煌びやかな装飾が目に飛び込んでくる。BUCK-TICK、実に18枚目となるアルバム『RAZZLE DAZZLE』リリース・ツアーの序盤戦@渋谷C.C.Lemonホール公演2日目。バンドサウンドを突き詰めていたここ数作の流れから一転、ダンス・ミュージックというテーマを強く打ち出した本作の世界観を反映するように、この日のライブは華やかな演出で幕を開けた。

“RAZZLE DAZZLE”“独壇場Beauty”など、アルバムの中でも特にダンサブルなナンバーが連発された序盤。先に記した装飾のほか、曲の途中には巨大なミラーボールも登場して、徹底したディスコティックな空間が描かれていく。ステージにあらわれた瞬間から圧倒的なオーラを放っている櫻井敦司(Vo)も、積極的にステージ前に乗り出してオーディエンスにアピール。しかし、BUCK-TICKの真骨頂ともいえる耽美でゴシックな演出も随所に散りばめられていて、単なるディスコでは括れない異空間が築き上げられているのが面白い。

「ウェルカム。冷たい雨の中これだけ集まってくれてありがとう」という櫻井の挨拶に続いてプレイされたのは、“羽虫のように”。ステージ装飾もここでガラッと変えられ、より退廃的な世界へと足を踏み入れていく。今回のアルバムはダンス色の強い楽曲が多いため、リズムやビートの力強さに自然と意識が向きがちなところ。しかし、こういったメロディアスなナンバーを聴くと、彼らがデビュー当時から追求しているメロディの美しさにも、改めて気づかされる。それがダンスビートの無機質さとあいまって、肉感的でありながら疾走感ある世界が描き出されていくさまは、まさに今回のアルバムの最大の妙。今井寿(G)特有のダンスが見られた“Django!!! -眩惑のジャンゴ-”も、メカニカルな映像が飛び交った“狂気のデットヒート”も、最高にキャッチーでありながらドロッとした生々しさをたたえていて、思わず胸が踊った。

この日は過去のアルバムの中からも懐かしいナンバーがいくつか披露された。「長いことやっているんで昔の曲もいろいろ変えてやりたくなります」という櫻井の言葉もあったように、新たなアレンジで磨き上げられた楽曲が、オーディエンスをさらなる熱狂の渦へと巻き込んでいく。その勢いを引き継ぐかのように、櫻井に加え今井もボーカルをとる“TANGO Swanka”では、この日最高潮に弾けた櫻井のパフォーマンスが見られ、“夢幻”ではデビュー間もないバンドのような瑞々しいサウンドが力強く前進していく。もちろん、伸びやかな歌声とギター・ソロが宇宙的なスケールで響きわたった“Solaris”などの、ディープな世界観も秀逸。ダブルアンコールまで全21曲。終始、光と闇がせめぎ合うような幻惑的なムードでフロアを酔わせ、めくるめくダンスホールは幕を閉じた。

アルバムをリリースするたびに、作品のコンセプトを徹底的に具現化した完成度の高いショウを見せてくれるBUCK-TICK。それは今回も変わらず、彼らが本作に込めた思い、そして魅せることに対するモチベーションの高さを、改めて感じ取ることのできたライブだった。なにより、メンバー自身がライブを楽しんでいるような、開かれたモードでパフォーマンスをしていたことが、嬉しい。まだツアーが続くところ気が早いかもしれないが、彼らはこうやって、今後もさまざまに切り口や見せ方を変えながら、自らの音楽を押し進めていくことだろう。それを強く感じられずにはいられない、至福の一夜だった。(齋藤美穂)
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