「ひょっとしたら、これが人生のピーク?」と宮原(Dr)も心配しちゃうくらい見事な大入りとなった。その満場のフロアから立ちのぼる一種異様な“ざわざわ感"に、開演前から否応なくテンションは上昇。毎回セットリストを変えて挑んだというこのツアー、今夜はいったいどんな景色を見せてくれるのだろう?
定刻より10分押しの午後6時10分。大きな歓声を浴びて、いつも通りのカジュアルなアウトドア・スタイルで登場した4人は、互いのヴァイブスを確かめあうようにひとしきり音を重ね合わせ、“ヤギー”こと柳下のギターが先導して“Luster”へ。宮原の軽やかなスネア・ロールと又吉(B)のぶっといアップライト・ベースがZeppに心地よい波動を生み出し、そしてそれは徐々に、しかし着実に力強さを増して、ちょっとびっくりするくらいの音圧で観る者に迫っていく。続けざまに“It's my house”に雪崩れ込めば、アッパーなビートが場内の熱を一気に高め、大サビではフロアのそこここにハンズ・アップが!
芹澤(Key)は必ずしもベストなコンディションではなかったそうだが(数日前に風邪をひいてしまったらしく。この日は気合いのニンニク注射!笑)、宮原&ヤギーとの3声のコーラスもバッチリだ。「“THE GUIDE”ツアーへようこそ! 自分たち的には遂にこの日が来ちまったなって感じですが、存分に楽しんで帰ってください!」(宮原)と挨拶も手短かに、“Tomorrow”→“Draft”と畳み掛けるスペアザ。何しろこの夜はヤギーのギター・プレイの饒舌さが際立っていて、“Surdo”では胸に迫るセンチメントを、一転、“Go Home”では弾けるようなハピネスを描き出し、足をがっちり踏ん張って(ガニ股も厭わずに・笑)アグレッシブに弾きまくるその姿には才気走ったものが感じられた。
しばしの休息を挟んでの2ndセットは(ちなみにスペアザのワンマンは、いつも前半/後半に分かれた2ブロック制なのです)、ワイルドで骨太な『THE GUIDE』のロック感から一転、いきなりキラー・チューン“AIMS”投下でフロアを狂喜乱舞!
メンバーを取り囲むようにぐるりと半円状にセットされた照明が鮮やかな明滅で狂騒を煽り、続く“PB”でも爆発的と言えるくらいの大フィーバーが現出(2階席、揺れてたデ!汗)。さらに、トドメの“Laurentech”!
一気にTKOを仕掛けるような集中豪打でトビキリの開放感と高揚感を持ち込んでみせた。天井知らずに打ち上がるフロアを見渡して、「いやぁ、初めてZeppでワンマンしたんですけど、これだけ大勢の人が俺たちの作った曲で楽しんでくれているのを観ると、スゲェ嬉しいです」と感慨深げに宮原。「俺たちは、人を笑顔にするために音楽やってんだって思って。いい仕事してんなって思いました(笑)」と続け、オーディエンスから大きな喝采を浴びていた。これだけ人気者になった今もその実感の乏しいメンバーだけれど(「全然確信にならない。いつも次のバイトが頭をかすめてます(笑)」と筆者との雑談で芹澤)、拡大する一方の状況を目の当たりにし、それが認証となって自信と自覚を深めているのだろう。最後には「これからも怠けることなく精進してまいりますので、よろしくお願いします!」(宮原)と決意を届けて、“THE GUIDE”で本編を締めくくったスペアザであった。
アンコールでは「感動してるよ、俺は今!」と又吉が万感の想いを語り、「ツアー中、『THE GUIDE』について考えてたんですよ」とヤギーもひと言――「俺たちは何かに誘われてここに来て、お客さんも何かに誘われてここに来てるっていう……その“何か”ってなんだろう?って」(「グーグル・マップ!」と大ボケの宮原!笑)。「……俺たちも、お客さんも、“音の向こう側にある景色”みたいなものを見に来てるんじゃないかって。今日はすごくいい景色が見れました、ありがとうございました!」とバッチリ締めて、ラストの“BEN”で再びクライマックスへ!
一切の邪気のない、温かくも強固な一体感に結ばれたフロアは、格別の景色としてメンバーの目に刻まれたに違いない。
あくまで自然体のまま、わんぱくで、たくましく成長中のSPECIAL OTHERS。12月4日の追加公演@YOKOHAMA BAYHALL、そして12月31日の「COUNTDOWN JAPAN 10/11」(最大規模のEARTH STAGEに登場!)も見逃せない!(奥村明裕)