雅-MIYAVI-@リキッドルーム恵比寿

雅-MIYAVI-@リキッドルーム恵比寿
雅-MIYAVI-@リキッドルーム恵比寿 - pics by Yohei Toriipics by Yohei Torii
「ここリキッドルームのキャパシティは約1000人だけど、関係ないっすよ! 世界に向けてロックしますよ!」というビッグマウスなMCも、「WHAT'S MY NAME?」「みやびー!」と何度もオーディエンスに名前を呼ばせる俺様ぶりも、1曲ごとに「どうだい?」とでも言いたげに手を広げてみせるアクションも、コール&レスポンスのたびに「まだ足りないよ」とばかりにちっちっちっと優雅に指を振る仕草も、生半可なミュージシャンがやったら癇に障ること必至のことだらけである。だが、こと雅-MIYAVI-に関しては、そんな1つ1つのパフォーマンスに至るまでもが強靭な「雅-MIYAVI-の世界」の一部となっている。それは取りも直さず、彼が鳴らしている音がいつだって、音で地面が割れそうなくらいの気迫と威力に満ちているからだし、「世界に向けてロックしますよ!」が実際に世界を渡り歩いてきた男の100%ガチ本気のメッセージだからに他ならない。

“WHAT'S MY NAME?”での目にも留まらぬ超高速フィンガリング! 指弾きエレアコから繰り出される“SURVIVE”の轟音コードの恐るべき剛性! BoBoの人力ドラムンベースのような正確無比な“UNBREAKABLE”のビートと完璧なシンコペーションをキメる鋭利なリフ!……といった彼のプレイは観るたびに驚愕させられるし、アガりながら戦慄が走るような、不思議な感覚に陥ってしまう。「ファッキン・クレイジー・ピープル・イン・トキオ! アガってるか!」というコールも、時折BoBoと見せる居合い抜きのようなキメの応酬も、すべてが研ぎ澄まされまくった凄みに満ちている。

「ギター&ベース・アンプで歪ませた指弾きエレアコ+辣腕・BoBoのドラミングだけ」という至ってシンプルかつソリッドなフォーマットでロック/ファンク/ハードコア/ヒップホップなど多彩な音楽を一斉掃射しながら、真剣並みの切れ味とナパーム級の破壊力を描き出す奇才にして異才=雅-MIYAVI-。ヴィジュアル系バンド=Due'le quartzのギタリストからソロに転じ、インディーズ時代から武道館やら東京ドームやらを席巻していたり、ヒューマン・ビートボクサー/タップダンサー/和太鼓/ペインターという異色の編成のプロジェクトを立ち上げたり、06年に「武者修行」のために単身渡米したり、08年には14ヵ国36公演のワールド・ツアーで15万人を動員してみせたり……という説明をいくら積み重ねても、彼のライブを観たことのない人にはなかなかピンとこないと思うし、ついこの間の『EMI ROCKS』でほぼアウェイと思われる2万人のオーディエンスを拍手喝采で満たしてみせた「今」の彼の実像には到底追っつかないだろう。

ヴィジュアル系時代から追っかけてきたファンは、幾多の変遷を遂げた「今」の雅-MIYAVI-のすごさを知っている。で、海外のメディアや音楽ファンは、「雅-MIYAVI-という日本のすごいギタリストがいる」ということを知っている。だが、そのすごさが、「いわゆる日本のロック・ファン」にはほとんど伝わってこなかった。他のどこよりも日本のロック・シーンで愛されるべき男が、実は日本のロック・シーンで最もアウェイだったのである。つい最近までは。だが、その不幸な隔絶をなぎ倒すべく彼は今年、レコード会社移籍と同時に「再デビュー」という形で再びスタートラインに立った。そして、世界を渡り歩いた経験を通して、日本人として/日本のアーティストとしてのアイデンティティを獰猛なまでに剥き出しにした「サムライ・ギタリスト」あるいは「1人総合芸術家」としてもう一度、闘争宣言をぶち上げたのである……という「前号までのあらすじ」的な説明はこれぐらいでいいだろう。要は、雅-MIYAVI-の最新アルバム=『WHAT'S MY NAME?』の東名阪リリース・パーティー最終日=リキッドルーム公演が素晴らしかった、という話だ。

ぶっとくうねるファンク・ナンバー“A-HA”。緻密なフレーズを駆使してプリンスのようなクールなチルアウト・タイムを演出した“MOON”。メランコリック&静謐な風景が、喉も裂けよとばかりのスクリームで赤黒く塗り替わる“GRAVITY”。「楽しんでますか? ……疲れました!」と息を弾ませつつ、アコギに持ち替えてハートフルなメロディを聴かせた“君に願いを”“すてきなみらい”。ループ・マシンを使って幾重にも狂騒の極致のようなフレーズを重ねながら、フロアを爆音ディスコ状態に陥れてみせた“FUTURISTIC LOVE”……目まぐるしく放射される2人の音にはしかし、1つたりとも無駄な音は存在しない。すべてがグルーヴを生み、ビートを刻み、リフやソロ・フレーズを構成し、聴く者の身体にダイレクトに作用してくる。「自分だけのロック・フォーマット」を極限まで突き詰めたからこそ到達した、澱みなき覚悟の音。もう、最高だ。

約2時間のライブの間、ステージ狭しとのし歩き弾き回りながら、5本のヴォーカル・マイク(すべて本人用だ)で上手・下手のオーディエンスを片っ端から煽り、ステージ袖のスピーカーによじ昇り……と全身全霊を傾けたパフォーマンスを通して、世界レベルのギター・テクと闘争心をアピールしてみせた雅-MIYAVI-。アンコールでもう1回演奏した“SURVIVE”で、「何年、何十年かかっても、世界獲るから!」と改めて宣誓していた姿に、思わず胸が熱くなった。女子ファンは相変わらず多いが、フロアに目に見えて男の子が増えてきたのも心強い。来年2月2日には、「日本のロック・シーンを代表する超絶技巧ベーシストが参加」したリカット・シングル『WHAT'S MY NAME? e.p.』も発売されるし、『WHAT'S MY NAME? WORLD TOUR 2011』と銘打った日本7公演+ヨーロッパ12公演のツアーも決定している。雅-MIYAVI-の怒濤の攻勢は、まだ始まったばかりだ。(高橋智樹)

[SET LIST]
01.WHAT'S MY NAME?
02.SURVIVE
03.UNBREAKABLE
04.A-HA
05.CHILLIN CHILLIN
06.I LUV U, I LUV U, I LUV U, AND I HATE U
07.MOON
08.GRAVITY
09.UNIVERSE
10.CONFESSION(新曲)
11.SHELTER
12.君に願いを
13.すてきなみらい
14.TORTURE
15.S.M.F.B.
16.R U READY 2 ROCK?
17.FUTURISTIC LOVE
EC.SURVIVE
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